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公共部門向け生成系AIユースケース集
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AI活用事例7選! できること/できないことや ビジネス活用のメリットも

AI技術が発展し、生成系AIなどが登場する昨今、AIをビジネスに活用する動きが盛んになっています。本記事では、AIや生成系AIの概要や活用メリット、ビジネスでAIを活用した事例を紹介します。自社の業務でAI活用を検討している方など、導入のイメージをつかむためにも、ぜひご覧ください。

AI活用事例7選! できること/できないことや ビジネス活用のメリットも

AIとは?

AI(人工知能)とは、人間の知能を人工的に模した技術であり、学習や創作、画像認識、計算などを扱うコンピューターサイエンスの分野を指します。機械学習モデルを利用しており、トレーニングを行うことでプログラムの範囲外のタスクでも自動処理できるようになります。

昔のAIは今ほど実用的ではなく、長い年数を経て技術が発展した結果、人間がこなしてきた複雑なタスクや学習・アウトプットが可能な技術レベルに達しました。AIが得意な分野は、計算・分析以外に自然言語処理、記憶、画像認識など多岐にわたります。また、Society5.0の実現を支える重要な要素にもなっており、医療の画像診断、お掃除ロボット、防災システム、ビジネスの需要予測など、さまざまな分野と用途で活用が進んでいます。

生成系AIとは?

生成系AIは、会話、画像、動画、音楽などの新規コンテンツ、アイデアを作成できるAIのことです。ほかの人工知能と同じように機械学習モデルで動作します。

近年では、AIを開発する際はゼロから作成せず、膨大なデータセットで事前にトレーニングされた基盤モデル(FM)を活用します。基盤モデルは、機械学習アプリケーション開発の土台として機能します。生成系AIにも基盤モデルが利用されており、ゼロからよりも低コストで機械学習モデルの開発が可能です。これは何十年にもわたるAI研究の成果であり、機械学習の最新技術でもあります。

生成系AIが産業に与えるインパクトは大きく、新しいビジネスバリューの獲得が期待されている技術でもあります。活用例としては、個人にパーソナライズした顧客サービスの提供や、ビジネスプロセス最適化と生産性の向上、コンテンツ生成にかかるコストの削減、チャットボットによる情報提供の効率化、創薬研究の加速、異常検知などのオペレーション負担の軽減などがあり、幅広い分野での活用が進んでいます。

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ビジネスにおけるAI活用事例8選

各分野でのAIの活用事例を一覧できるようにまとめました。自社の業務や事業でAIを活用する際の参考にしてください。

医療・ヘルスケア×AI

特にAIの活用が注目されているのが、医療・ヘルスケア分野です。その背景として、2025年に後期高齢者が急増することから、医療・ヘルスケア分野での労働力不足や地域格差が顕著になることがあります。

AIの画像診断や予測機能、問い合わせ対応の自動化などで、これらの問題の解決が図られています。しかし、そのために必要な患者のデータや症例データ、カルテといった大量のデータを扱う必要性も今まで以上に増しているのが実情です。

この分野での活用事例を挙げると、NHS BSA社がヘルスケアコンタクトセンターの一部をAIで自動化し、担当者への電話を4割以上削減した例があります。ほかにも、画像認識AIによるがんの早期発見や、オンライン診断での病名予測、生活習慣病リスクの予測、個人のライフスタイルに適した健康アドバイスをするAIアプリなど、さまざまな用途での活用が進んでいます。

診断支援や医学研究など、その他の医療分野での活用事例については、以下の関連記事も併せてご覧ください。

関連記事:医療分野におけるAIの現状と課題| 導入のメリットや事例もあわせて解説

介護×AI

介護分野でも高齢化による介護者の増加と、それに伴う職員の人手不足が目立っており、解決策としてAI活用が注目されています。

コニカミノルタ株式会社では、イメージング技術、IoT、AI技術を融合させた画像 IoT プラットフォーム「FORXAI」を活用し、介護者の動きの分析に活かしています。非接触・遠隔モニタリングによって「見えないモノを見える化」する技術が備わっており、介護者の転倒などの事故を防止することが可能です。

また、同社が提供するHitomeQ ケアサポートは、行動分析AIの活用により介護スタッフの負担軽減に効果的です。見守り、ナースコール、行動分析を統合したサービスで、映像とデータによる評価が可能なため、介護品質の向上に役立ちます。業務効率が上がることで、人材不足の解消や教育と採用の最適化にも寄与します。

介護業界のAI活用事例についてもっと知りたい方は、下記記事も参考にしてください。

関連記事:介護業界でのAI活用|メリット・デメリット・導入での課題・事例を紹介

金融×AI

金融業はデジタルデータ化が進んでいる業界のため、AI活用に向いています。近年、インターネットの普及と金融の自由化により、顧客接点が対面からデジタルへとシフトしました。それに伴い、蓄積された大量の取引データの活用とサービス向上が求められています。AI活用も進んでおり、現段階では不正決済対策、マネーロンダリング対策や不正利用の異常検知、コンプライアンス、チャットボットなどさまざまな形で導入されています。

金融サービスを営むAella Credit社では、新興市場で個人に即時融資を行う際に重要となる、身元確認と検証の課題を抱えていました。新興市場には何十億人ものユーザーがおり、個人の円滑な識別は同社にとって大きな問題でした。その解決手段となったのが、基盤モデル(FM)を使用したAmazon Rekognitionです。画像分析や動画分析技術によって高精度な顔認証・本人確認ができるようになり、課題の解決に至りました。KYCにも有効で、重複するプロファイルやデータセットの検出にも役立っています。

自動車販売×AI

自動車業界では製造工程や自動運転技術、ドライバーの安全運転や事故防止の実現などにAIが活用されています。それ以外では、自動車の販売プロセスにも利用されています。

自動車の購入・販売・所有・利用をより簡単にすることを目指す、Cox Automotive社の事例では、製品「M LOGIC」にAIエンジンを搭載し、自動車販売のAIイノベーションをもたらしました。M LOGICは、AIによる予測でビジネスの意思決定を迅速かつ最適化するソリューションです。これにより、販売ディーラーのニーズに一致した自動車の発見と通知、最適な価格設定と車両選択が可能になります。

CRMシステムにもAIを活用しており、ディーラーが顧客の好みを深く理解するのをAIがサポートし、顧客体験価値の向上につなげています。また、スキャンしたドキュメントからデータを抽出するAI(Amazon Textract)も導入しており、手続きに必要なデータを自動取得することで、意思決定の迅速化と顧客の負担軽減を実現しました。

農業×AI

高齢化や新規参入のハードルの高さによる後継者不足、気候変動による不安定な収穫などに悩まされる農業分野でも、AIが注目されています。

農業にAIを活用した例として挙げられるのが、牛の行動をモニタリングするシステム「U-motion」を構築した、デザミス株式会社の事例です。このシステムには、13万頭の牛に取りつけたセンサーからリアルタイムにデータを集約し、AIが牛の発情や疾病兆候を検知して、牧場主にアラート通知する仕組みがあります。

AIの導入によって、属人化した飼育管理のあり方を変革し、牛の行動や発情・健康状態の判断も容易にできるようになりました。結果、牧場主や農家、獣医師の省力化にもつながっています。リリース後から2021 年までに国内600 以上の牧場に採用されており、今後は海外にもビジネスを拡大していく見通しです。

農業分野でAIを活用する事例について詳しく知りたい場合は、以下の関連記事もぜひご覧ください。

関連記事:農業にAIを導入するメリットとは? 活用の具体例や注意点

観光×AI

訪日外国人数が復活したことを背景に観光市場が拡大し、同時に訪日外国人向けのAI活用の可能性も広がっています。観光庁の調査によると、訪日外国人が滞在中に頼る情報源は主にインターネットですが、日本人の知人や親族、観光案内所など、対面で情報を入手する外国人もいます。これは、日本人とのコミュニケーションを通じた情報収集に価値を感じる外国人が一定数いることを示していますが、言語の壁が高く、ニーズは十分に満たされていないものと考えられます。

参照元:観光庁|訪日外国人の消費動向 P21~22

そこで注目されているのが、多言語翻訳が可能なAIです。例えば、自動翻訳や音声翻訳、宿泊施設や観光地を案内するAIアプリがあります。AIによってコミュニケーションのハードルを下げることで、観光情報を入手しやすくなり、訪日外国人の満足度向上が図れます。

また、北海道のニセコの事例では、多言語翻訳AIチャットボットを活用し、外国人向けに分かりやすい観光案内の情報発信をしています。AIの導入は、外国人を含む観光客の満足度向上やスマートリゾート化の推進、観光案内の人手不足解消に役立っています。

飲食×AI

人手不足が目立つ飲食業界でも、生産性向上の手段としてAIが活用されています。電話予約の応対や売れ筋商品・来客数の予測、顧客の好みやその日の天候、気温などに合わせたメニューの提案などが一例です。そのほかには、AIカメラで客層や忙しい時間帯などのデータを分析することで、スタッフの配置や仕入れ量の最適化、客層に合わせたメニューの考案などに活かせます。

また、AIを使ってパーソナライゼーションを大規模に実現しているのがDomino's Pizza Enterprisesの事例です。同社はAIの機械学習で顧客体験を向上させられる「Amazon Personalize」を利用して、顧客一人ひとりにパーソナライズした取引やオファーなどを提供し、コミュニケーションを取っています。

情報が溢れ、さまざまな選択肢が選べる現代では、個にフォーカスしたサービス提供が求められており、AIによるパーソナライズは顧客体験の改善と向上に役立ちます。

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AIにできること

深層学習(ニューラルネットワーク)で実現できるAI関連の主要テクノロジーを紹介します。自然言語処理や画像・音声認識、生成系AIによるコンテンツ生成などの技術は、AIを深層学習でトレーニングすることで開発可能です。

自然言語処理

自然言語処理(NLP)とは、人間が日常的に使う言葉をコンピュータが解釈・理解し、処理できるようにするための技術です。計算言語学、機械学習、深層学習の複合体で構成されており、それらを組み合わせることで人間と同じように言語を処理できる仕組みになっています。

この機械学習技術によって、AIは文章を読んで言葉の意味を理解し、質問に答えたり、感情や意図を分析したりできます。

<主なユースケース>

  • 膨大なドキュメントの処理・分析とアーカイブ
  • デジタルデータの横断検索
  • 顧客から寄せられたメッセージや音声の感情分析、ネガティブポジティブ分析
  • AIチャットボットでの人間らしい顧客応対や質問回答
  • 電話での自動音声対応、スマートスピーカーでの音声認識
  • 文章の要約や機械翻訳
  • テキストマイニング

上記のように、自然言語処理技術は文章や言葉を分析する用途で主に活用されています。

画像認識

AIの画像認識(コンピュータービジョン)は、コンピュータが画像や動画を見て、物体や特徴、文字を認識する技術です。大量の画像データを使い、深層学習で自動的に特徴やパターンを抽出することで、AIが人間のように視覚的な情報を理解できるようになります。

例えば、犬の耳や目などの特徴を十分に学習できていれば、新しい画像を見ても犬と認識可能です。十分に学習させれば、人の目では気づかないことも、AIがより早く正確に認識し処理できます。

<主なユースケース>

  • ホームセキュリティや防犯
  • 画像分類
  • レジでの商品の種類と値段の識別
  • 類似した商品の検索
  • 自動運転での対向車や通行人、標識の識別
  • 医療の画像診断
  • カメラの顔検出
  • 顔認証システム
  • 製造業での異常検知や外観検査
  • 画像内の文字の翻訳

主に、視覚情報から情報を取得して、自動でAIに判断や処理をさせたいケースで活用されています。

生成系AIによる創造

生成系AIは、入力されたテキスト(プロンプト)から人が作るような文章・音声・画像、動画、プログラムコードなどの新しいコンテンツやアイデアを創造できます。

生成系AIが登場したインパクトは大きく、世界のGDPが7%増加する可能性と、10年間で1.5%の生産性向上が見込めるとされています。また、生成系AIを適用できる事業分野は幅広く、マーケティング、顧客サービス、財務、営業、製造、小売、メディア制作、ヘルスケアなどでの活用が期待されています。

参照元:生成系AIとは何ですか?

<主なユースケース>

  • テキスト生成(メールの本文、歌詞、論文、文章要約)
  • 感情表現するアバターAI
  • 自動校正
  • 会話形検索
  • イメージ動画の生成
  • 音声合成(音声アシスタント、ナビゲーション、ナレーション)
  • 創作(音楽、ゲーム、アニメーション、アート、詩、3Dモデル生成)
  • 製造業の部品などの設計
  • 創薬研究
  • チャットボットなどでの自動顧客応対
  • パーソナライズしたコンテンツ、回答の提供
  • 製造設計の最適化
  • 仮想試着

クリエイティブ分野ではAIの成果物をそのまま活用する以外に、その成果物から思いもよらないアイデアを得て、人間の創造性を高めるような使い方もされています。

音声認識

音声認識は、深層学習モデルで人の声を分析して単語などを識別し、AIがその意味を判断する技術です。音を分析する際は、音声の振動を拾い、デジタルに変換してから行います。分析結果はテキストデータに変換したり、取得した音声にどのような感情が含まれるか示したりできます。また、人の声以外にも音楽や機械の音、生き物の声などの種類を識別可能です。

<主なユースケース>

  • 動画や録音のテキスト書き起こし
  • コールセンター業務のアシストや有益な情報の抽出
  • 電話による問い合わせ対応の自動化
  • スマートスピーカーの音声認識
  • スマートフォンの音声アシスタント機能
  • 会議議事録の作成
  • 多言語の通訳・翻訳
  • 音声文字入力や音声での機器操作

音声認識で人とやり取りすることもあるため、自然言語処理と併用されるケースも多く見られます。

AIの苦手なこと

データ処理などの得意分野では人間を上回るパフォーマンスを発揮するAIですが、苦手なことももちろんあります。

AIが苦手なことは4つ挙げられ、まずひとつがノイズの多い情報の処理です。構造化されていないデータが苦手とも言い換えられます。構造化データとは、AIが理解しやすいように整理された表形式のデータのことです。対して、メール文や画像などの非構造化データは、AIが分析しにくい情報です。また、データの品質が悪い場合も、アウトプットされる結果の精度が低下するため、AI活用においては適切なデータを用意することが重要になります。

2つ目は、前例が少ない分野の対応です。AIは前例や蓄積した過去のデータで判断するため、前例が少ない場合は適切な判断が難しくなります。未知の分野や新しい分野にAIを投入しても、思うように効果を発揮しません。個人データが少ない状態でのパーソナライズも苦手です。

3つ目は、人間の感情を推し測ることです。AIは、テキストや音声から定義されたデータに基づいて感情を分析できますが、理解や察することはできません。そのため、人間の機微の読み取り、共感、空気を読むこと、相手が持つ潜在的な課題・悩み・ニーズの把握、人間のような柔軟な発想、洞察力が必要な場面での活用は不向きです。

4つ目は、ゼロから新しいアイデアを生み出すことです。AIの創造力は学習した既存のデータやパターンに基づいており、学習データがない状態からは何も生成できません。また、自発的に目的を持つ汎用型AIの実用化もまだ先です。

なお、AIの苦手分野についてはさらなる技術革新が期待されており、将来的には解決する可能性があります。例えば、Document AIといった非構造化データを分析できるツールが近年登場しており、AIでも難なく処理できるようになる可能性が考えられます。

一方で、心のケアや接客などのホスピタリティ、ゼロからアイデアを生み出すクリエイティビティといった学習データを用意できない分野については、人間で対応することを検討しましょう。

ビジネスに活用するメリット

大規模なデータ分析の実現

AIはビッグデータの分析と、分析結果に基づく予測が得意です。機械学習と深層学習ネットワークを用いることで、人間よりも正確かつ迅速に大規模なデータ分析ができます。

ビジネスにおいては、顧客情報や売上情報などの収集データをAIで分析することで、商品の需要予測やビジネスの価値予測が可能になります。AIから得た高精度の分析結果に基づいて、経営戦略やマーケティングの展開をすることも可能です。

また、数字に限らず、大量のドキュメントがある場合もAIが活躍します。生成系AIに要約させることで、要点だけ効率的に把握して判断できます。

業務の効率化

人間の場合、働き続けると疲労が蓄積してパフォーマンスが低下しますが、AIは24時間365日稼働でき、業務効率化につなげられます。単純な反復タスクでもエラーなく正確に実行可能です。そのため、ルーチンワークなど退屈で重要度の低い作業をAIに任せることで、人間がクリエイティブな仕事やコア業務に集中しやすくなる効果が見込めます。

例を挙げると、生成系AIによる会話型検索の活用で、正確な情報を迅速に見つけやすくなります。これにより、社内や顧客からの問い合わせ業務の効率化が可能です。また、生成系AIにドキュメントの内容を要約させれば、従業員の生産性向上が期待できます。レポート生成の自動化も可能なため、時短と必要な情報を効率的に抽出することが可能です。システム開発分野では、生成系AIにコードを生成させて開発プロセスを効率化する使い方もできます。

人手不足の解消

業務をAIに代行させることで、個人のスキルや経験に関係なく、正確な業務遂行と作業品質の均一化が可能になります。人の仕事をAIが代替することで作業量が大幅に削減されるため、少ない人手でも業務を回せるようになり、労働力不足が解消されて生産性向上につながります。

飲食・小売・介護などの人手不足が深刻な業界では、特にAIが問題解決の手段として期待されています。

判断の迅速化

経営判断が必要なシーンでもAIが活躍します。従来の経営判断は業績の結果待ちが主流で、結果から経営判断をするスタイルが長く続いていました。近年では、AIの導入で大規模なデータ分析とリアルタイムでの予測が容易になり、将来予測型の経営判断が可能になっています。CEOは、AIの予測と目標のギャップをもとに、即座に経営施策を打つことが可能です。

企業経営にAIを活かすには、経営者がAIを含むテクノロジーや基礎的なプログラミングの知識に通じていることが何より重要です。AIやIT技術の原理や活用方法を知らなくては、経営判断に活かしようがありません。また、新しいテクノロジーへの精通は、先見性を育むのにも役立ちます。従来のビジネスの再定義や新しいビジネス価値の創出など、ビジネスチャンスの獲得につながっていきます。

企業経営、ビジネス全体でAIを有効活用するには、漠然と使用せずロードマップや経営改題を明確にして意識的に利用することも大切です。

ビジネスに活用する場合の注意点と対処法

データの質と量を確保する

AI活用で重要なポイントとして、データの質と量の確保があります。AIの精度に関わるため、学習データを準備する際はデータの不要部分や表記ゆれ、フォーマットの統一を行うデータクレンジングや前処理が不可欠です。

また、機械学習でAIが十分に学習するには、学習用データの要素として新規性があり、正確かつパターンが多様である必要があります。学習データの質が悪くて量も少ないと、誤りや曖昧さ、偏りがあるデータに基づいてAIがアウトプットを行うため、精度が落ちて正確な予測や分析結果が得られません。

もし、自社で機械学習モデルに必要なデータが十分に用意できない場合は、オープンデータの活用がおすすめです。オープンデータとは、国や自治体、企業などが二次利用可能なものとしてウェブ上などに公開しているデータを指します。主に研究や政策立案で活用されていますが、AIの機械学習をする際にデータの質と量の確保が課題になることが多いため、その解決策としてオープンデータが注目されています。

オープンデータは著作権フリー(利用条件の有無は要確認)であり、機械が判別可能なフォーマットで提供されているのが特徴です。自社のデータが不十分な場合は、利用を検討してみてください。

関連記事:オープンデータの活用事例10選! 言葉の意味や活用の注意点を解説

適切な技術を選択する

ビジネスに活用する際は、事業や解決したい問題に最適なAIの機械学習モデルを選択することが大切です。主なモデルの種類は以下のとおりです。

  • 機械学習(教師データあり/なし)
  • 強化学習
  • ディープラーニング(深層学習)

機械学習は、教師データあり/なしに分かれており、さらに回帰モデル、分類モデル、クラスタリング、主成分分析に細分化出来ます。各モデルには得意分野があり、適する用途が異なります。

回帰モデルと分類モデルは、教師データありのモデルです。回帰モデルは売上や金融、気象予測といった将来的な数値の予測に最適です。分類モデルは、入力データを事前に決まったカテゴリに分類したい場合に適しており、画像診断や異常値の検出、スパムフィルターなどに利用されています。

クラスタリングと主成分分析は、教師データなしのモデルです。クラスタリングは、データを類似度でグループ分けしたい場合に適しており、顧客の好みの分析やセグメンテーションなどに活用されます。また、膨大なデータを大まかに評価して整理したい場合は、主成分分析が便利です。アンケート結果や商品評価の分析、画像補正技術に使われています。

強化学習はAIが試行錯誤する学習手法です。囲碁などのゲーム攻略や、自動運転やロボットの制御に活用されています。

ディープラーニングは、AIが与えられたデータを自力で分析し、特徴を自動で発見して学習する手法です。自然言語処理、画像認識、音声認識などを利用したい場合に適します。

プロフェッショナルと連携する

AIをビジネスに活かしたい場合、AI関連の技術や統計学、プログラミング、活かしたいビジネスのドメイン知識などを備えた専門家の助けが必要です。AI専門家にはデータサイエンティスト、AIエンジニア、AIプランナーなどがあります。また、AI活用に関わるチームメンバーのコミュニケーションも重要です。AI技術者と現場をつないで動く人材がいると、メンバー同士の調整が捗ります。

これらの人材を社内育成する手もありますが、短時間での育成は難しく、手間とコストがかかって大変です。加えて、AIに対応できる人材となるには高度な知識が求められるため、数が少ない傾向にあります。海外人材も視野に入れて採用活動をするか、AIに詳しい外部のパートナー企業と協力し課題に対処していくことが大切です。

倫理とプライバシーに考慮する

AIの活用により、扱うデータの量と質が変化するため、それに応じた管理システムの準備やセキュリティ対策が必要になります。クラウドを利用する場合は、オンラインでデータをやり取りするため、情報漏えいやハッキングなどの対策が欠かせません。AI自体の脆弱性を突いて学習データを改ざんし、誤作動させるサイバー攻撃への対処も求められます。

セキュリティ以外では、倫理的な問題への対処が必要です。AIの処理は学習データに基づくため、バイアスのかかったデータがAIの成果物に影響を与え、差別的な結果を招く可能性があります。実際の事例として、優秀な人材の採用にAIを活用した結果、特定の人種や偏った性別で採用してしまったケースがあります。こうした問題を回避するには、バイアスを除いた高品質なデータを用意し、AIの公平性を保つことが大切です。

また、AIによるデータ収集にはプライバシーへの懸念があり、適切な対策が欠かせません。収集データは個人情報や事実に反する情報を含んでいる場合があり、消費者からの信頼を損なわないためにも、プライバシーの保護が重要です。

スケーラビリティと持続可能性を確保する

AIの進化やビジネスでの活用が進む昨今、AIの大規模な言語モデルの進化が影響して、AIの実行に必要な計算量が増大しています。今後AIモデルを活用していくには、将来の成長と変化に対応しやすい環境の構築が必要です。

こうした課題に対応できるAI技術として、スケーラブルAIが開発されています。これは、AIの性能をあまり落とさずに、適用先システムのスペックに合わせて演算量を削減できるAIモデルのことです。演算量と性能の可視化と、異なるシステム下でも共通のAIエンジンを導入できる特徴があります。これにより効率的な開発と管理、AIの適用先に必要な演算性能の見積もりがしやすくなるのがメリットです。

費用対効果の見合うシステムを選択する

AIをビジネスに取り入れる際、初期投資やランニングコストには気をつける必要があります。初期投資には学習データの準備やAI人材の育成などが含まれており、短期間で結果が得られない可能性があります。AIの活用に伴って、業務プロセスの見直しやシステムの入れ替えなどが必要になるケースもあり、一時的なコストの増大も発生します。長期的なランニングコストも発生しやすいため、事前に適切な見通しを立てることが重要です。

また、AI開発においては、技術的負債にも注意が必要です。急いで開発を進めることで発生する技術的な問題や遅延が、のちに想定外の大きなコストを発生させる可能性があります。このように、AI活用には多くのコストがかかるため、費用対効果に見合うシステムの導入が求められます。

学習と改善を継続する

AIには、新しいことを学ぶと過去に学習したことを忘れる、破滅的忘却という現象があります。これを防ぐには継続学習が有効です。

AIは初めから上手く処理を実行できないため、継続的な学習期間とデータをアップデートすることが重要です。継続的な学習によりAIのアルゴリズムが調整され、精度が少しずつ高まっていきます。複雑な処理ほど必要な学習期間も長くなる傾向があるため、実用化までには時間がかかることを頭に入れておきましょう。

また、AIが機械学習をすると、内部処理がブラックボックス化することがあります。こうなると問題発生の原因やアウトプットの根拠が不明になるため、AIの信頼性が問われる場合があります。予防策として、データの品質管理や機械学習モデルの定期的なレビューが重要です。

クラウドコンピューティングを活用する

AIを活用するには、膨大なデータを安全に扱えるような環境を整備する必要があり、そこで検討したいのがクラウドコンピューティングです。以下では、AI活用にクラウドコンピューティングを利用するメリットを解説します。

スケーラビリティが高い

スケーラビリティとは、システムの柔軟な拡張性を指し、メモリやデータ容量、端末数などのリソースを必要に応じて拡張または縮小できる能力を指します。

クラウドはオンプレミスと異なり、仮想のコンピューターリソースであるデータストレージ、処理能力、ネットワークなどを迅速かつ簡単に拡張できます。これにより、AI活用時に扱うデータ規模に合わせて、仮想のコンピューターリソースを柔軟に増減することが可能です。

アクセシビリティが高い

アクセシビリティは、サービスや情報を利用できる人や状況の幅広さを指します。障害者や高齢者、異なる言語を話す人、利用に制限のある状況の人など、さまざまな人が利用しやすいかどうかを示す言葉でもあります。

クラウドは、インターネット環境があれば、リモートで社内システムや作業環境にアクセス可能です。そのため、オンプレミスよりもアクセシビリティに優れます。リモート下でのチーム作業や、分散したデータソースの統合にも便利です。AI活用では膨大なデータを扱える環境のほかに、AI専門家や現場の従業員との密な連携も求められるため、アクセシビリティの高い環境は重要です。

コストが下がる

クラウドコンピューティングはコスト面でも大きなメリットを有します。オンプレミス環境の場合、サーバー構築に多額の初期費用がかかり、導入までの労力や人件費も考慮しなくてはなりません。対して、クラウドは自社でサーバーを構築する必要がなく、初期費用も5~10万円前後と安価で済ませられます。サービスによっては一切かからないこともあります。

また、オンプレミスでは一定金額の保守費用やライセンス費用がかかりますが、クラウドは従量課金制のサービスが多く、月額料金が利用状況に合わせて変動するため、無駄なランニングコストが生じません。

管理コストも同様です。オンプレミスは自社で人材の確保や設備メンテナンスを行う関係上、管理コストがかさみやすいですが、クラウドではベンダーがシステムの保守運用を担当するため、ユーザーは管理運用のコストを削減できます。そのため、初期費用、ランニングコスト、管理コストを抑えたいならクラウド環境が最適です。

まとめ

AIとは、学習や画像認識などを扱うコンピューターサイエンス分野のことです。近年は生成系AIが登場して、ビジネスの現場にさまざまな変革を起こしています。AIは多くの業界で活用されており、業務効率化や人手不足の解消、コミュニケーションや顧客体験の向上などに役立っています。

一方で、AIに処理を実行させたり、収集データを利用したりする際は、プライバシーの侵害や倫理的な問題などに注意しなくてはなりません。

また、現代のビジネス環境でAIの投資対効果を最大化するには、従来のビジネスや社会的な課題に適用し、新たな価値を生み出すことが重要です。

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