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医療業界でブロックチェーンが解決できる課題とは? 海外・国内の活用事例も紹介

医療業界はさまざまな問題を抱えていますが、その解決策として近年注目されているのが「ブロックチェーン」という技術です。医療業界におけるブロックチェーンの活用は、海外を中心に進展してきましたが、近年では日本でも導入事例が増えています。この記事では、ブロックチェーンが医療業界のどのような課題を解決できるのか、具体的な事例も交えて解説します。

医療業界でブロックチェーンが解決できる課題とは? 海外・国内の活用事例も紹介

ブロックチェーンとは? 個々のデータを鎖状につなげて管理する方法

ブロックチェーンとは、データを「ブロック」と呼ばれるまとまりごとに格納し、それらを時系列に即して連鎖的(チェーン状)につなげて保存・管理する技術です。ブロックチェーンは当初、ビットコインをはじめとする仮想通貨の取引情報を管理するための基盤技術として利用されていましたが、現在ではさまざまな業界で活用が進んでいます。以下では、このブロックチェーン技術の特徴や現状、医療業界との関係を解説します。

ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンは不正や改ざんが極めて困難という特徴を有しています。ここでは主な3つの特徴を解説します。

セキュリティー性能が高い

一度記録されたデータの改ざんは極めて困難です。各ブロックには、そのブロックの取引情報だけでなく、前のブロックのハッシュ値が格納されます。ハッシュ値とは、データの内容を示す一種の識別番号です。データの内容が少しでも変わるとハッシュ値も変わるという仕組みです。

これにより、ひとつのデータを改ざんすると、次のブロックのハッシュ値が変わり、そのまた次のハッシュ値も変わり…と、連鎖的に改ざんの影響が出ます。改ざんを隠すには、すべてのブロックのハッシュ値を同時に不正操作する必要がありますが、それは事実上不可能です。そのため、ブロックチェーンのデータセキュリティーは非常に優れています。

システムダウンしにくい

ブロックチェーンは同一データが複数のノード(端末)に分散して保存され、ネットワークを介して同期される分散型のシステムです。これにより、特定のノードがダウンしたとしても、他のノードが正常に機能していればシステム全体が停止することはありません。この分散型システムという仕組みは、ひとつのデータサーバーに情報を集約する中央集権型のシステムと比べ、サイバー攻撃の標的を絞らせにくくするという利点も持っています。

透明性が高い

ブロックチェーンは新しいトランザクション(取引記録)が確認されると新たなブロックが追加されます。ブロックチェーンに格納されたトランザクションは、その取引に参加した全員で共有・検証できるため、透明性があります。そのため、銀行などの第三者を介在させず取引の信頼性を高められます。

ブロックチェーンの現状

ブロックチェーンは「Web3.0」、すなわち次世代のインターネットの基盤技術になりえると注目されています。Web3.0とは、データを自由に交換し、共有できる「分散型インターネット」のことを指しており、これにより巨大なプラットフォーマーへ中央集権的に集約され、ときには不透明に使われていたデータを、ユーザー自身で管理できるようになります。

日本においても、ブロックチェーンやWeb3.0への関心は高まっています。2022年7月には、経済産業省が大臣官房に「Web3.0政策推進室」を設置しました。これにより、政府レベルでもWeb3.0の推進と、ブロックチェーンを含むデジタル技術の活用による新たな社会価値創出に向けた取り組みが進められています。

参照元:経済産業省「Web3.0」

ただし、ブロックチェーン技術にも課題がないわけではありません。たとえば、ブロックチェーンはデータをブロック単位で格納しつつ、すべてのノードで検証するという構造上、大規模なデータを処理するのに不向きです。また、ブロックチェーン技術やその関連サービスはまだ歴史が浅いので、法整備に不十分な部分がある点も不安要素です。Web3.0が実現されるには、ブロックチェーン技術のこうした課題が克服されることが重要です。

ブロックチェーンは医療業界に最適

いくつかの課題はあるにせよ、ブロックチェーンは医療業界にとって有用な技術です。

患者の病歴や薬歴などを正確に把握することは、患者の病状を理解し、適切な治療を行ううえで非常に重要です。時系列的にデータを管理するブロックチェーンを利用すれば、これらの情報を簡単に追跡できるようになります。

また、データセキュリティーが非常に堅牢であることも医療業にとっては非常に重要です。医療データは、患者の重要な個人情報なので、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。ブロックチェーン技術におけるデータセキュリティーの高さは、この要件を満たすのに十分です。さらに、分散型システムというブロックチェーンの特性により、患者が自分自身の医療データにアクセスしやすくなることも大きな利点です。

このように、ブロックチェーンは医療業界において、データの追跡性と安全性、そして患者に対する透明性を確保するために最適な技術です。

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医療ヘルスケアに今ブロックチェーンが求められる理由

ここでは現在の医療業界が抱えている課題という面から、ブロックチェーンが求められる理由を解説します。

関連記事:日本の医療における課題とは? 解決に役立つDXと取り組み事例

デジタル化の遅れが目立っている

日本の医療業界は諸外国と比べて、デジタル化が遅れがちです。たとえば、データの電子化はデジタル化推進のための第一歩ですが、厚生労働省の調査によると、200床未満の病院や一般診療所ではカルテの電子化が50%にも満たない状況です。これは、医療情報の管理と共有における効率性や安全性が損なわれるリスクを示しており、医療ミスやトラブルを防ぎ、医療の質を向上させる上で大きな障壁です。

電子カルテの導入が遅れている背景のひとつには、電子カルテには改ざんのリスクがあることや、他の医療機関とのデータ連携が難しいことなどが挙げられます。しかし先述のとおり、ブロックチェーンはデータの安全性や共有のしやすさに長けているため、このような不安を克服して、医療業界のデジタル化を促進する一助となりえます。

参照元:厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」 

人手不足が深刻化している

「令和4年度版厚生労働白書」によれば、2040年には医療・福祉就業者として1,070万人が必要とされています。しかし、人員状況が現状のまま推移した場合、その時点で確保できる人手は974万人に過ぎないという推計が出ています。

この人手不足問題は、医療従事者の過重労働を招き、最終的に医療サービスの品質低下や存続の危機につながる恐れがあります。しかしブロックチェーンを活用すれば、データ管理や情報共有の自動化・効率化を実現し、人手不足による負荷を軽減できます。

出典: 厚生労働省「令和4年度版 厚生労働白書」

セキュリティーを強化する必要がある

医療業界は、患者の生体情報をはじめとする、非常に重要で機密性の高い情報を取り扱っています。2023年3月に改正された医療法施行規則では、医療機関に対してサイバーセキュリティーの確保に向けた措置を講じる規則が新たに設けられました。具体的には医療情報システムの安全管理を担う専任責任者の配置やBCPの策定、アクセス管理機能の強化などです。

医療業界に限らず社会全体でデジタル化が進み、サイバー攻撃の手口も巧妙化している中で、データセキュリティーの強化は喫緊の課題です。ブロックチェーン技術の活用は、データの改ざん防止や信頼性向上など、医療情報のセキュリティー強化に対する有効な手段になると期待されています。

財政と医療費のバランスを保つ必要がある

近年、医療費の高騰が国民健康保険の財政負担を増大させています。厚生労働省の「令和3年度 医療費の動向」によると、2021年度の全体の医療費は44.2兆円で、前年度比4.6 %増となりました。少子高齢化の進行に伴い、この医療費の増大はますます進むと考えられており、社会保障制度の持続可能性が脅かされています。

こうした状況下で注目を浴びているのが医療データの活用による健康増進や予防医療の推進です。国民一人ひとりが自分の健康状況をデータに基づいて把握することで、病気にかかりにくい体づくりを効率的に行ったり、病気が深刻化する前に早期発見したりできます。ブロックチェーンの分散型システムという特性を活かし、医療データへのアクセスを高めることはこうした健康増進に寄与し、結果として財政と医療費のバランス改善にも役立ちます。

参照元:厚生労働省「令和3年度 医療費の動向」 

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ブロックチェーンによる解決が期待される医療の課題

ブロックチェーンを活用することで、医療業界にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下では、ブロックチェーンによって解決されうる課題について解説します。

医薬品の偽造問題

ブロックチェーン技術の透明性とトレーサビリティは、偽造医薬品問題の解決に寄与すると期待されています。世界保健機関(WHO)のデータによれば、途上国では約10%の医薬品が偽造品であり、患者の健康を大きく脅かしています。

そこで役立つのがブロックチェーンの追跡性と安全性の高さです。医薬品が製薬工場を出て患者の手に渡るまでの全過程をブロックチェーンで記録し追跡することで、途中で偽薬が混入される危険を減らせます。患者は自分の薬がどのような経路を辿って目の前にあるのかを簡単に確認できるので、もし偽薬が届いても、患者側でその真偽を確認できます。

参照元:WHO「1 in 10 medical products in developing countries is substandard or falsified」

臨床試験の信頼性

ブロックチェーンは臨床試験の過程を可視化し、その信頼性を向上させる可能性を持っています。臨床試験を行う際は、被験者となる患者の追跡調査が不可欠ですが、その際には患者のプライバシー保護がネックになってしまいます。

その点、ブロックチェーン技術を使えば、患者のプライバシーを強固に保護しながら、必要なデータを安全に共有できます。これは、たとえ参加者数がごく限られた臨床試験であっても同様です。また、適切なデータを迅速に提供することで、医薬品開発の時間を短縮し、治療法の開発を加速することが可能になると予想されています。

患者情報共有の効率化

前項とも関係しますが、ブロックチェーン技術は、組織の境界を越えた患者情報の共有をより迅速かつ簡単に行えます。ブロックチェーン技術を活用し、各自治体や医療機関を横断する形で、患者の医療データを時系列的に参照できるプラットフォームを作ることで、たとえ患者が治療途中で転院をしても、初診時からすぐに必要な情報を得て適切に診療できるようになります。

さらに、ブロックチェーンは、医療情報を提供することと引き換えに患者が報酬を受け取る新しいモデルが実現するかもしれません。これは、プライバシーの保護とデータ活用のバランスを適切に保ち、ユーザーが自分自身の個人情報を自律的に管理するための新しい方法になりえます。

請求・支払処理の問題

現在の医療業界では、医療費や保険金の請求・支払いなどに伴う経理作業に多大な時間とコストが必要です。その結果、たとえば患者が保険金を受け取れるまでに一定のタイムラグが生じてしまい、不便な思いをさせてしまうことも起こります。

しかしブロックチェーンの機能のひとつで、契約事項を設定条件に従って自動的に履行する「スマートコントラクト」という仕組みを利用すれば、保険の申し込みや請求手続きを自動化して事務負担や人的ミスを減らし、患者が保険金を受け取れるまでの時間を短縮できます。これにより、従業員の業務負担軽減と顧客満足度向上の両方を実現可能です。

海外の医療業界におけるブロックチェーンの活用事例

ここからは、医療業界におけるブロックチェーンの活用方法をイメージしやすいように、海外での活用事例を紹介します。これらの事例を通じて、医療分野でブロックチェーンが実際にどのように活用されているのかを理解できます。

A社 患者の健康情報をシームレスかつ安全に共有

ロンドンに拠点を置くA社はブロックチェーン技術を使って、病院、薬局、保険会社、そして患者本人の間で患者の健康情報を安全に共有するためのプラットフォームを開発しました。

このシステムでは、患者の健康情報はブロックチェーンに格納され、その情報の所有権は患者本人に帰属します。医師などがブロックチェーン上の情報を編集する際には、患者本人が秘密鍵を使って許可する必要があります。また、患者本人は健康情報を編集できないので、患者が自分の健康情報を改ざんする心配も不要です。これにより、情報の安全性や真正性を保ちつつ、関係者間で健康情報の効率的な共有が可能になりました。

B社 患者の電子カルテを共有・改ざんの確認

中国の大手IT企業が展開する電子カルテの管理・共有システムは、電子カルテを自治体の保健所と医療機関の間で効率的にやりとりするために開発されました。

保健所は健康診断で専門的な治療が必要な患者を発見すると、その電子カルテをブロックチェーンに送信します。医療機関はその情報をハッシュ値を使って改ざんがないか確認したうえで、治療に役立てます。このシステムはクラウドアプリケーションとして提供されているため、ユーザーは特に新しい設備などを導入する必要もなく、簡単に導入可能です。これにより、システムを導入した自治体では、「保健所-医療機関での情報共有を効率化することに成功しました。

C社 患者の情報の管理・共有

アメリカのベンチャー企業C社は、現地の医療センターや大学と協力してブロックチェーンを用いた医療データ管理システムを開発しました。このシステムは、医療機関で実施した検査データや処方箋データなどをブロックチェーン上に送信し、患者が自分の医療情報を包括的に管理するためのものです。

ブロックチェーン上の情報へのアクセス権は患者自身が有します。医療関係者は、患者からの許可を得ることで情報にアクセスできるので、他の医療機関の許可を取ることなく必要な医療情報の共有や再利用が可能です。これにより、患者情報のプライバシー保護と医療サービスの効率化を両立できます。

D社 偽造医薬品の流通防止

ブロックチェーン技術を用いて偽造医薬品の流通防止に取り組んだブロックチェーン企業D社のシステムは、D社が中心となり、大手製薬会社や医薬品サプライチェーンなどとの協力の下で開発されました。

同システムでは、医薬品の製造から販売に至るまでのすべての情報がブロックチェーン上に記録されます。これにより、誰がいつどの薬に関与したか、その医薬品がどこからどこへと移動したかといった情報を、全参加者がリアルタイムで追跡できます。これにより、偽造医薬品の流通を防ぎ、問題があった場合でもその医薬品を迅速に特定し、対処できます。

国内の医療業界におけるブロックチェーンの活用事例

海外ほど進んではいませんが、日本でもブロックチェーン技術を医療業界で活用する動きが徐々に出始めています。

E社 臨床研究モニタリングの実証

医療系アプリケーションの開発などを通してデジタルヘルスケアを推進しているE社は、ブロックチェーン技術を活用して臨床研究データを管理するシステムを開発しました。

新薬の開発など、医療業界における研究には巨額の資本が動くため、その研究データには改ざんのリスクが付き物です。そこで同社はブロックチェーンの改ざん防止機能を利用し、臨床データの信頼性を確保できるシステムを開発しました。同社のシステムでは、法令を遵守するためのデータチェックにかかる負担の大幅な軽減が可能です。

F社 重症患者の情報をリアルタイムで共有

医療現場向けの情報管理システムを提供するF社は、重症患者の情報をリアルタイムに管理・共有するためのシステムを開発しました。重症患者を救うためには、患者情報を適切に共有し、リアルタイムにその容体を管理することが重要です。しかし、人出不足の中でそれを実現するには、医療従事者に大きな負担がかかります。

ブロックチェーン技術を用いたF社のシステムでは、リアルタイムに患者をモニタリングできると共に、そのデータを安全かつ効率的に共有可能です。このシステムを使えば、医療従事者は過去に遡って患者情報を確認することも容易なので、より効率的かつ正確に治療に必要な判断を下せます。

G社 患者が主体となって健康状態・診断結果を管理

ブロックチェーンとAI技術を用いて医療情報プラットフォームやアプリケーション開発をしているG社は、一般企業の社員向けに健康管理アプリケーションを開発しました。

このアプリケーションには自分の健康診断の結果を記録したり、歩行距離などの運動記録を管理したりできます。さらに、他の社員と歩数などを競い合うことも可能です。これにより、社員は自分の健康状態を適切に管理し、効果的に健康増進に取り組めます。

関連記事:医療分野におけるAIの現状と課題| 導入のメリットや事例もあわせて解説

まとめ

ブロックチェーン技術を使えば、患者自身が安全かつ便利に自身の医療情報を管理・活用できます。ブロックチェーン技術は医療業界における情報の管理・共有において大きな可能性を秘めており、今後ますます活用が広がっていくことが期待されます。

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