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防災DXとは? 求められる理由や課題、取り組み事例を紹介

日本は毎年のように大きな台風が襲来し、地震も多い災害大国です。そのため、大きな災害が起こっても情報伝達や復旧がスムーズに行えるための備えが重要です。

ネットワークやデジタル技術を活用した防災DXは、災害時の混乱や対応の遅れなどが原因で起こるいくつかの問題を解決できる可能性があります。本記事では防災DXの概要やメリットに加え、今後に向けての課題や各自治体の具体的な取り組み事例などについてもくわしく紹介します。

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防災DXとは

防災DXとは、地震や台風などの大規模災害の対応に、AIなどのデジタル技術を用いる取り組みのことです。現在、ビジネス分野では多くの企業でDX化が進み、生産性の向上や効率化を実現しています。防災分野でもデジタル技術を取り入れることで、情報の伝達や復旧時の手続きなどにおいて、多くのメリットがあると考えられています。

関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 意味や事例を紹介

防災デジタルプラットフォームとは

「防災デジタルプラットフォーム(仮称)」とは、災害時に国と自治体が情報を共有する新たなシステムのことです。2024年の運用開始を目指し、内閣府がデジタル庁の協力を得て作成を進めています。

現状では災害が起こった時、政府は「総合防災情報システム」から情報を収集し、「基盤的防災情報流通ネットワーク」を活用して自治体と共有しています。しかし、2つのシステムを併用するのは利便性の面でさまざまなデメリットがあります。さらに「基盤的防災情報流通ネットワーク」のサーバーはひとつしかないため、耐久性にも懸念がありました。

「防災デジタルプラットフォーム」は2つのシステムを一元化した耐久性の高いシステムです。これにより災害時のよりスムーズな情報収集・共有が期待できます。
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防災DX推進が求められる理由

日本は災害が多く、たびたび地震や洪水で多大な被害が発生します。特に2011年の東日本大震災では東日本の多くの企業が被害を受け業務に支障が出たため、防災のあり方を見直したところも多いでしょう。

企業においては災害時、従業員や顧客の安全を守ると同時に、事業をできるだけ中断せず継続する必要があります。そのためには、いざという時のために日頃から対策を怠らないことが重要です。

災害時、自社に被害はなくても取引先や関連企業にダメージがあれば、事業継続に影響を及ぼす可能性もあります。そうした場合も想定し、デジタル技術によって最小限の体制でも事業継続や迅速な復旧ができる仕組みづくりが求められています。
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防災DXで期待される具体的な効果

緊急時の情報がスムーズに伝わるようになる

災害時はインフラがうまく機能せず、避難情報や被害状況といった重要な情報の伝達が困難になる可能性があります。それにより避難が遅れたり、危険な場所に近づいたりすれば、更なる被害拡大を招いてしまいます。

デジタル防災が普及すれば、被害状況や緊急情報の伝達がネットワークを通じてスムーズに行えるため、被害の拡大を防ぎやすくなります。また危険な場所を知らせるだけでなく、必要な場所に支援物資を送ることも可能です。

被災者を支援しやすくなる

防災のデジタル化は、被災者支援にも貢献します。避難所に入っている人の名前や人数をアナログで管理している頃は、ミスも多く集計にも時間がかかっていました。

一方、マイナンバーや免許証を使ってデジタルで収容者の情報を管理すれば、受付業務を効率化でき、安否確認や収容人数の集計もスムーズに行えます。受付業務が迅速に行えることにより、受け入れ時の混雑は緩和され、空いた人員で被災者支援を充実させることも可能になります。

復旧の迅速化につながる

災害が起こるとさまざまなインフラが破壊され、通信や交通、水道や電気が使えなくなることもあります。被災者が早く元の生活に戻れるよう、早期の復旧作業が必要になりますが、災害時は自治体の職員も諸々の対応に追われるため、復旧作業に回せる人員が不足しがちです。

防災DXを導入すれば、人手不足をデジタル技術で補えるため、復旧作業の迅速化が期待できます。例えば通信手段がない環境で復旧作業を行う場合、PWAを活用してオフラインでも指示確認が行える方法が実用化されています。

また罹災証明書についても、一元化されたシステムでスケジュールやデータ管理を行ったり、家屋被害判定アプリなどを活用したりすることで、発行までにかかる時間を大幅に短縮できます。

防災DX推進にあたっての課題

一方、防災DXは現時点でまだ発展途上で、今後運用する上ではさまざまな課題もあります。

災害情報システムの標準化が十分ではない

現在、自治体単位では災害情報システムの集約が順次進められているものの、国のシステムとの連携やシステム全体の標準化はまだ十分ではありません。システム全体の標準化が行われていないと、大規模な災害が起こった際、国と自治体間で的確に情報共有ができず、避難や救助に遅れが生じかねません。

災害時に国と自治体で連携し、迅速な対応を行うためにも、災害情報システム全体の標準化は急務です。

技術を各地に浸透させるのが難しい

日本は都市部に人口や機能が集中しており、自治体によって財政面に格差があります。防災DXの導入にはシステム開発などで多大な資金が必要なため、財政難に苦しむ過疎地などでは導入の優先度は低くなってしまいます。

また、災害が起こりやすい地域とそうでない地域で、災害に対する意識の差もあります。毎年のように台風に見舞われる地域では防災に対する意識も高いため、防災DXの導入にも積極的に取り組むでしょう。一方、災害と縁の少ない地域では、高いコストをかけた防災DXの推進に及び腰になってしまうかもしれません。

加えて日本には離島も多い国です。こうした小さな島まで防災情報システムを浸透させるには、解決すべき課題がまだ多くあります。

DX人材の確保が難しい

また防災DXを推進するには、システムの開発や運用を担うDX人材が必要になりますが、現状では十分な人手が確保されていません。

国土交通省九州地方整備局では、全国に先駆け災害査定を行うDX人材育成のための研修を行いました。このように、今後は各自治体でも、防災DXに必要な知識と技術を持った人材の育成が必要になるでしょう。

防災DXの自治体における取り組み事例

自治体によっては、すでにデジタル技術を活用した災害対策に積極的に取り組んでいるところもあります。

オートコールソリューションを活用した避難誘導

埼玉県上里町は、町内に複数の大きな河川が流れており、水害リスクを抱えている自治体です。令和元年の台風の際は、河川氾濫の危険性が高まる中、防風で防災行政無線がかき消されて住民に情報が十分に届かないなど、アナログでの災害対策の課題が浮き彫りになりました。

その教訓を踏まえ、上里町ではDXを取り入れた災害対策に取り組んでいます。主な対策はオートコールソリューションによる避難誘導指示などの一斉架電、IoTセンサーによる避難状況の把握、チャットツールによるリアルタイムな情報の管理・配信の3つです。

こうしたデジタルツールの導入により、災害の際の迅速で効率的な対応が可能になりました。

参照:オートコールソリューション等を活用した災害発生時の避難誘導

3D都市モデルを活用して災害リスクを可視化

熊本県玉名市では、災害の情報を3D都市モデルに重ねる合わせることで、災害リスクを時系列で立体的に分かりやすく伝える取り組みを進めています。

従来、防災に用いられてきたハザードマップでは、災害の際の被害状況を具体的に想像しづらいのが難点でした。しかし3D都市モデルを用いればは浸水シミュレーションも行えるため、住民は災害リスクを直感的に想像しやすくなり、防災意識が高まります。また具体的な避難計画も立てやすくなります。

ほかにも玉名市では避難シミュレーションVR制作など、より的確な避難誘導と住民の防災意識向上のための事業を実施しています。

参照:地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】

防災DXに使えるソリューションの例
行政や民間でさまざまな防災DXの導入が進んでも、相互で連携が取れていなければいざという時に使いづらく、せっかくツールがあっても有効に活用されないかもしれません。

デジタル庁は現在、防災や災害時に活用できるアプリやシステムのサービスをまとめた「防災DXサービスマップ」を公開しています。マップ内では平時、切迫時、応急対応、復旧・復興の4つの段階に分けてサービスを掲載しており、現場で必要なサービスの情報を迅速に取得できます。

ここからは、「防災DXサービスマップ」に掲載されている、防災に有効なソリューションをいくつか紹介しましょう。

参照:防災DXサービスマップ

ため池や地盤の遠隔リアルタイム監視

防災DXサービスマップには、洪水や地盤沈下、土砂災害などの予防を目的に、ため池や地盤の状況を遠隔監視できるサービスが複数掲載されています。

ため池遠隔監視システムでは、水位や雨量、画像などのデータをリアルタイムでクラウドに公開することで、自治体やため池の管理者などが迅速に危険を察知できます。

また衛星SARやGPS/GNSS、航空レーザーを用いて、地盤の変位を観測するサービスもあります。この技術は災害状況の把握や土砂災害のリスク予測、復旧計画の立案などに役立ちます。

災害情報の共有・伝達

災害時はいかに迅速に情報を収集できるかも重要です。複数の事業所を管理していたり、事業所が遠隔地にあったりすると、被害状況の把握が遅れ対応が後手に回る可能性もあります。

そんな場合に活用したいのが、民間企業による災害情報の共有システムです。このサービスでは気象データや河川カメラの画像など、あらゆる災害に関する情報を収集し、分析や予測を行うことにより、被害状況や災害リスクを可視化できます。それらの情報を関係者間で共有することで、被害拡大の予防につなげられます。

レスキューロボットやドローンの活用

ロボットやドローンは、災害救援活動の支援にも役立っています。レスキューロボットの最初の目的は人命探索でしたが、2011年の東日本大震災以降は、ロボットを遠隔地から操作しさまざまな作業を行う、災害対応ロボットシステムの研究や開発が進んでいます。

遠隔地から操作できる利点は、人間が入ると危険な場所での作業や観測も可能になることです。それは二次被害の予防につながるだけでなく、救助活動や復旧作業の可能性も広げてくれます。

ドローンはすでに、災害時の被害状況の把握や情報収集に活用されています。また、被災地に取り残された人を上空から発見したり、支援物資を運んだりといった使い方も可能です。低コストで小回りがきくドローンは、広範囲に飛行できるため、日頃から災害リスクがある場所を監視することも可能です。そうすることで災害予測や早期警告につなげられます。

まとめ

災害時は被害状況を正確に把握し、情報伝達をスムーズに行うことにより、被害の拡大を防げる可能性があります。ネットワークやシステム、ロボットやドローンを活用した防災DXの導入は、現場で対応に当たる担当者の負担を減らし、二次災害の予防や迅速な避難誘導、インフラの復旧などにも貢献します。

災害大国の日本では、どこにいても大きな地震や台風に見舞われる可能性があります。災害が起こった時に混乱や被害拡大を防ぐためには、早急な各自治体での防災DXの実現と、国全体でのシステムの標準化が重要です。
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