デジタル社会実現ラボはアマゾン ウェブサービス ジャパン合同会社の協賛を受けて、同社の広告として掲載しています。

公共部門向け生成系AIユースケース集
医療・介護

介護業界の課題を解決するにはIoTが重要! メリットや事例を解説!

介護業界が抱えるさまざまな課題は、年々深刻化しています。課題解決の方法として、IoT に注目が集まるようになりました。

この記事では、介護業界で IoT を導入するメリットとデメリット、IoT 活用事例や導入ポイントについて解説します。介護業界における IoT の利用状況や展望について理解し、参考にしてください。

介護業界の課題を解決するにはIoTが重要! メリットや事例を解説!

IoTとは

IoTの発展は近年目覚ましく、医療や工業など多様な分野で導入され大きな成果を上げています。

IoT(Internet of Things)は、モノのインターネットという意味の言葉です。IoTによって、パソコンやスマートフォンだけでなく、車やカメラ、建物や家電製品などさまざまなモノがインターネットに接続できるようになりました。機器からのデータ収集・分析や異常検知、遠隔操作などが可能になり、企業における利便性向上や業務効率化につながります。

超高速かつ大容量、低遅延の第5世代移動通信システム(5G)と連携させれば、さらに大きな成果が見込めます。

関連記事:IoTでできることを身近な例と共に解説! 社会課題の解決事例からAI連携まで

公共部門向け生成系AIユースケース集
ビジネス立案に役立つ!最新テクノロジー大全

介護業界の課題

少子高齢化によって、日本の介護業界は多くの課題を抱えています。介護業界の持続可能性を担保するためにはこれらの課題の解決が必須です。ここでは3つの課題に絞って解説していきます。

人材不足

介護業界が抱える課題のひとつが、人材不足です。少子高齢化が進む中で多くの業界が人手不足に悩んでいますが、特に介護業界は人材確保に苦慮しています。

令和4年版厚生労働白書によれば、介護関係職種の有効求人倍率は全職業に比べて高い水準で推移しており、令和3年は全職業計の1.03に対し、介護関係職種は3.64でした。また公益財団法人 介護労働安定センターが実施した令和3年度介護労働実態調査によると、介護サービスに従事する従業員の不足感(大いに不足+不足+やや不足)は63.0%と、多くの事業所が人材不足に陥っています。

挙げられる原因としては採用の困難さや、高い離職率などです。労働条件の悪さや他社との人材獲得競争の激化など、介護業界には課題が山積しています。少ない職員で多くの業務をこなさなければならないため、一人にかかる負担は大きくなり提供するサービスの質は下がります。労働条件が悪ければ人材が定着せず、さらに深刻な人手不足に陥りかねません。このような悪循環が生じているため、介護業界は慢性的な人材不足です。

参照元:厚生労働省「令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-」

参照元:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査結果報告書」

介護難民の増加

介護業界の人材不足による悪影響を受けるのは、介護サービスを必要とするのに受けられない「介護難民」です。希望する介護施設に入所できなければ、在宅もしくは入所できる地域への引っ越しという選択を迫られます。特に特別養護老人ホームなどの公的な介護施設は希望者が多いため、入所が困難です。

厚生労働省が公表した「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」によると、要介護3以上の入所申込者(申し込んだけれど入所できていない)は25.3万人におよびます。

人材不足が解消されない限り、介護難民は今後も増加し続けるはずです。

参照元:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)」

財源の圧迫

少子高齢化に伴い、医療費・介護費などの社会保障費は増加します。しかし日本の生産年齢人口(15~64歳)は減少し続けているため、財源確保は困難です。

内閣府の「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によれば令和7年(2025年)には団塊の世代が75歳を迎え、65歳以上の人口が3,677万人に達する見込みです。高齢者を支えるため、医療や介護、雇用などの分野で負担が増大する「2025年問題」に対応しなければなりません。

そのため、介護業界では人材確保と生産性向上への取り組みが急務です。

参照元:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」

関連記事:介護業界の今後|2025年・2040年問題に向けた課題と対策

資料ダウンロードTOP
キーパーソンインタビューTOP

介護業界でIoTを導入するメリット

少子高齢化による人手不足が大きな課題である介護業界ではIoTの導入が有効です。ここでは、介護業界でIoTを導入するメリットをいくつか紹介します。

業務効率化で働き方改革に対応できる

人材不足の中で職員の負担を軽減するには、業務を効率化しなければなりません。

記録や書類作成に役立つ機器を導入すれば、時間や労力の削減、人的ミスの減少につながります。後述する介護センサーなどの見守りシステムを活用すれば、夜間の見回りも減らせます。IoTによって労働時間短縮やパフォーマンス向上が可能です。

少ない人材でも負担が少ない働き方が可能になるため、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の時季指定などを定める働き方改革にも無理なく対応できます。

情報共有がスムーズにできる

職員間で情報が共有できないと、業務に支障が生じます。IoTを活用すれば、すべての職員が電子化された情報をスムーズに確認・共有可能になります。リアルタイムで更新される情報を共有できれば情報の行き違いもなくなり、施設利用者のケアも効率的かつ適切に行えます。

さらに、介護施設内だけでなく病院などの医療機関との情報共有も簡略化されます。郵送やファックスでの送信が必要な紙の書類と異なり、同じシステムやプラットフォームを利用する施設・機関とは迅速なデータ共有が可能です。情報共有により施設や機関とスムーズに連携でき、生産性向上につながります。

介護サービスの質が上がる

IoT活用によって業務が効率化されることで、介護サービスの質の向上が期待できます。負担が軽減された職員の心身に余裕が生まれれば、利用者への丁寧なケアが可能です。利用者の異変にも気づきやすくなり、緊急時の対応もしやすくなります。

またIoT機器によって収集・蓄積されたデータを分析すれば、さらに効率的な業務やケアを行えるようになります。他分野とのデータ連携や応用なども有用であり、IoTには介護サービスの質向上につながる多くの可能性があります。

介護業界でIoTを導入する際の課題

ここまで、介護業界にIoTを導入するメリットを紹介してきましたが、いくつか注意点もあります。以下のポイントを把握して効果的なIoTの導入と課題解決につなげましょう。

導入コストがかかる

さまざまなメリットがあるIoTですが、すべての現場に導入できるとは限りません。導入が進まない理由として、コストがかかることが挙げられます。IoTの導入には、IoT機器の購入やインターネット環境の整備が不可欠です。財源の確保が困難な現場では、さらに導入のハードルは上がります。

コストがかかるのは、導入時だけではありません。日々の機器メンテナンスや通信費などに加え、故障時には修理代もかかります。コストをふまえたうえで、十分なメリットを得られるかを考えましょう。

IoTに対応できる人材を教育する必要がある

IoT導入における問題は、コスト面だけではありません。IoTに対応できる人材の育成が必要です。機器の使い方が分からず、苦手意識を持つ職員もいるかもしれません。すべての職員がインターネットや機器を使いこなせるように、指導や教育を行いましょう。勉強会を開催する、マニュアルを作成するなどの取り組みが重要です。

さらに、IoT導入によってデータ化された個人情報は厳重に管理しましょう。情報漏えいのリスク低減のためには職員の危機管理意識を高め、データの取り扱い方について教育する必要があります。

ただし上述の取り組みによって、職員に一定のストレスや負担がかかる点も押さえておきましょう。IoT導入前に職員の意見を聞く、導入後には職員のレベルにあわせた十分なサポートを実施するなど、できるだけ負担を軽減するための工夫が必要です。

介護業界でのIoT活用事例

介護業界では既に、さまざまな場面でIoTが活用されています。ここでは介護業界でのIoT活用例を 5 つ紹介します。これから導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

介護センサー

施設利用者の状態把握や安全確保には、介護センサーが役立ちます。介護センサーのひとつが、介護施設や病院の利用者が転倒・転落するのを防ぐ離床センサーです。利用者が自力で救助を呼べない場合でも、以下に示す離床センサーがあれば異常検知が可能です。

  • マットセンサー:利用者の足元に設置し、荷重がかかると検知される
  • ベッドセンサー:ベッドマットレスの上に設置し、起き上がりなどで荷重がされなくなると検知される
  • タッチセンサー:ベッドの柵に設置し、接触することで検知される
  • クリップセンサー:利用者の衣服などにつけたクリップが外れたときに検知される

赤外線や超音波で人の出入りを検知するセンサーや、利用者のバイタルチェックができるセンサーもあります。
介護センサーの導入によって夜間の見回り業務による負担が軽減されます。異常があればすぐに職員に対応してもらえるため、利用者にとってもメリットが大きい取り組みです。

服薬支援システム

介護施設では、薬の服用管理が必要です。利用者ごとに服薬支援をしなければならないため手間や労力がかかるうえ、飲ませ忘れや服薬時間のミスを完全に防ぐのは困難です。ダブルチェックを行えばリスク低減は可能ですが、人手不足の場合は大きな負担です。

服薬支援システムを導入すれば、人的なミスの発生リスクを大幅に低減できます。服用時間を知らせたり、服用時間以外は機器から薬を取り出せなくなったりする機能が搭載されたIoT機器もあります。服薬記録の自動保存や各種データとの照合が可能になれば、効率的な服薬が可能です。IoT活用によって職員の負担を減らしつつ、施設利用者の健康と安全を確保できます。

コミュニケーションシステム

介護施設の職員がすべての利用者に対して均等に会話をするのは難しく、利用者はコミュニケーション不足に陥りがちです。

IoT技術を利用し、コミュニケーションシステムが実装されたロボットなどの導入によってさまざまなプラスの効果が期待できます。センサーやカメラ、AIなどを内蔵したロボットは、定型文ではない自然な会話や利用者の見守りが可能です。

周囲を和ませるような動きや会話ができるロボットは現場を明るくし、新鮮さや喜びも与えてくれるため利用者の心身によい影響を及ぼします。ロボットとの活発なコミュニケーションが、認知症の予防や健康寿命の延伸につながるかもしれません。

関連記事:介護業界でのAI活用|メリット・デメリット・導入での課題・事例を紹介

排泄支援システム

うまく排泄できないことにより、介護する側だけでなく利用者の心身にも負担がかかります。IoT技術により、利用者の排泄支援も可能です。

ベッドや腹部などにセンサーをつけることで、排泄の検知ができます。蓄積したデータをもとに排泄予測やおむつ交換の時間を提案してくれるIoT機器もあります。検知をもとにおむつ交換を行えば、空振りもなくなるため不要な手間がかかりません。夜間のおむつ交換を適切なタイミングで行うことで、職員の負担も大幅に軽減されます。また、検知によってトイレ誘導もできるため自立支援にもつながります。

介護業務支援システム

介護施設では、大量の事務業務も大きな負担です。ケアプランやカルテなどの介護記録を電子化すれば、紙の書類を作成する必要はありません。

IoT機器から収集されたデータは紛失リスクもなく、情報の確認や共有もスムーズです。介護業務支援システムにはさまざまな機能が搭載されており、コール履歴を自動で取り込み記録してくれるものや利用者ごとに必要なデータをまとめてくれるものがあります。利用者の記録だけでなく、システムによっては在庫管理も可能です。備品や消耗品を管理し、残量を把握して自動発注してくれます。

介護業務支援システムによって人的ミスも減り、業務効率化が実現するはずです。

介護業界でIoTを導入する際のポイント

ここまで、介護業界でのIoT導入例や導入のメリット、課題を見てきました。ここでは効果的にIoTを導入するためのポイントを紹介します。

介護現場の問題を洗い出す

無計画にIoTを導入しても、期待する効果はあげられません。まずは介護現場の課題を明確にする必要があります。現在の業務や体制にはどのような問題があるのかを洗い出しましょう。上層部だけでなく、各職員に困っていることについての聞き取りを行うのが有効です。課題をリスト化する際には、課題の原因も明記しましょう。

IoT活用によって解決したい課題やその原因が分かったら、導入したいIoT機器を検討する段階に移ります。課題が複数ある場合でもIoT機器を一度に導入して解決を図るのではなく、まずは必要最小限の機器を導入するのが賢明です。優先度が高い課題を解決できる機器やシステムを導入し、運用しましょう。運用して良かった点や悪かった点を検討し、改善すべき点をふまえて次の計画を立てます。他社の事例などを参考にして、改善し続けることが重要です。

さらに、費用対効果についても検討しましょう。IoT導入・運用に多額のコストがかかったとしても、成功すれば多くのメリットを得られます。どれほどの期間でどのくらいの利益を得られるのか、試算してみましょう。

国の補助金制度を利用する

IoT導入には多大な費用がかかります。状況に応じて、以下に示す国の補助金制度利用を検討しましょう。

  • ICT導入支援事業
目的:ICT(情報通信技術)を活用した介護サービス事業所の業務効率化による職員の負担軽減

補助対象:介護ソフト、情報端末、通信環境機器や運営経費など
補助上限額:事業所規模(職員数)による
補助割合:一定の要件を満たせば3/4を下限、それ以外は1/2を下限に都道府県の裁量により設定

  • 介護ロボット導入支援事業

目的:介護ロボット活用による介護サービス事業所の生産性やケアの質向上、職員の負担軽減
補助対象:移乗・移動支援、排泄支援、入浴支援、見守り支援などの介護ロボット、見守りセンサーの導入に伴う通信環境(Wi-Fi環境、インカム、センサーの情報をシステム連携させるネットワーク構築)整備費用
補助上限額:介護ロボットの種類による。通信環境整備は上限750万円
補助割合:一定の要件を満たせば3/4を下限、それ以外は1/2を下限に都道府県の裁量により設定

参照元:厚生労働省「ICT導入支援事業の概要」

参照元:厚生労働省「地域医療介護総合確保基金を利用した介護ロボットの導入支援」

参照元:厚生労働省「令和5年度予算案の概要(老健局)の参考資料」

介護業界でのIoTの普及状況

厚生労働省は、介護業界におけるICTやIoTの利活用を推進しています。上述したICT導入支援事業を進める自治体は年々増加し、令和3年時点ですべての都道府県で実施されています。

さらに令和3年の介護報酬改定において、業務継続計画(BCP)の策定が義務付けられました。BCPとは自然災害や感染症などの不測の事態が発生した場合に、事業を継続させるために必要な体制や計画のことです。介護業界においても、災害発生や感染症流行の際でも事業を継続するか、速やかに復旧する体制を構築しなければなりません。上述の介護報酬改定では3年間の経過措置が設けられていますが、令和6年からの義務化に向けて早急な対応が必要です。

職員や資源に限りがある中で介護サービスを継続的に提供するには、IoT活用によるシステム連携や情報共有が重要であることを押さえましょう。

参照元:厚生労働省「ICT導入支援事業の実施状況(令和元年度~令和3年度)」

参照元:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」

介護業界の将来のIoT展望

2025年問題への対応が急がれる中で、IoT利活用に向けた動きはより活発化するはずです。

厚生労働省が平成31年に公表した「未来イノベーションWGからのメッセージ」によれば、2016年時点で6.6万人だった100歳以上の高齢者は、2040年頃に30万人を超える見通しです。そのため国は、2040年に向けて雇用・年金制度改革や健康寿命延伸プラン、医療・福祉サービス改革プランに取り組んでいます。

介護業界においてICTやIoTを推進することで人材確保や生産性向上が実現し、社会保障の構築につなげられます。

参照元:厚生労働省「未来イノベーションWGからのメッセージ」

まとめ

IoTは、さまざまなモノとインターネットをつないで利便性を向上するシステムです。
介護業界は、人材不足や介護難民の増加などの問題に悩まされてきました。IoTを導入すれば、少ない人員でも業務効率化や情報共有、介護サービスの質向上が可能です。一方で導入コストや人材教育が必要な点に注意しましょう。

介護業界でIoTは、介護センサーや服薬支援・排泄支援システムなどに活用されています。現場の問題を明確にした上で、コスト面に不安があれば国の補助金制度などを利用しながら導入を進めていきましょう。

関連記事:介護DXとは? メリットと課題・対策、導入事例を紹介

  • fb-button
  • line-button
  • linkedin-button

無料メルマガ

公共部門向け生成系AIユースケース集
ビジネス立案に役立つ!最新テクノロジー大全

無料メルマガ登録

TOP