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農業用ドローンとは? 主な活用例や導入メリット、補助金を解説

近年、さまざまな業界でドローンがビジネスに活用され始めました。農業も例外ではなく、農業用ドローンを活用した業務効率化や作業負荷軽減に取り組むケースが増えています。本記事では、農業用ドローンの概要や導入するメリット、活用事例などについて解説します。

農業用ドローンとは? 主な活用例や導入メリット、補助金を解説

農業用ドローンとは

農業用ドローンとは、農業への活用を目的に開発された無人飛行機を指します。一般的なドローンは、搭載したカメラを用いた上空からの撮影や、高所の検査などに使用されるケースがほとんどですが、農業用の機体には肥料や農薬の散布など、農作業に特化した機能を実装している点が特徴です。

肥料や農薬を散布できる機体は、大型のタンクを搭載しています。また、カメラを搭載した機種であれば、上空から農地や作物の状況を撮影、モニタリングできます。見た目も一般的なドローンと異なり、全体的に大型なものが多く、風の影響を抑える設計を施したプロペラを採用している機体が多いのも特徴です。

近年、農業用ドローンの活用は広がりを見せています。
令和4年10月に農林水産省が公表した「令和4年度 農業分野におけるドローンの活用状況」によれば、散布用ドローンの販売動向は、平成30年の1,214台が令和元年には1,922台に、令和2年には5,561台と大幅に増えています。

背景としては、農業に携わる人材の慢性的な不足が挙げられます。人手不足のなかで効率よく作業を進めなくてはならないため、業務効率化につながるドローンを導入するケースが増えました。

参考:「令和4年度 農業分野におけるドローンの活用状況」

農業用ドローンを使用するにあたり、自動車やバイクのような免許が不要な機体が多いのも広がりを見せている理由のひとつです。ただし、国土交通省から許可が必要です。
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農業用ドローンの主な活用パターン・具体例

農業用ドローンは、農業におけるさまざまなシーンで活用されています。農作物のモニタリングのほか、肥料や農薬の散布、病害虫の早期発見、播種や受粉、モノの運搬などでの活用がメインです。

農作物の状況を監視する

カメラやセンサーを搭載した機体であれば、センシング技術を用いてさまざまな情報を可視化できます。農作物がきちんと育っているか、問題がないかといった情報を把握でき、蓄積した情報から将来的な収量予測も可能です。

広くない農地であれば、直接農作物をチェックできますが、広大な面積の農地となれば現実的ではありません。一方、ドローンを活用すれば、上空からセンサーを用いて農作物の状況をチェックできるため効率的です。少ない人員で農業に携わっている農家にとっても、農業用ドローンは大きな武器になると考えられます。

また、近年ではドローンで収集したデータを解析し、最適な収穫時期を判断してくれるサービスも登場しています。

肥料や農薬を散布する

農業用ドローンの多くは、搭載してある大型のタンクに肥料や農薬を積載し、上空から散布できます。ドローンを用いた農薬、肥料の散布は上空から行えるため効率がよく、広大な農地であってもスピーディーな作業が可能です。

農作物を育てるのに、肥料や農薬は欠かせません。ただ、従来のような作業者が直接散布を行う方法では、作業者が肥料や農薬が入った重たいタンクを持ち、圃場のすみずみまで移動しなければなりませんでした。農業用ドローンを使えば、遠隔で肥料や農薬を散布できるため、こういった作業者の負担を減らすのはもちろん、時間的コストも削減できます。

さらに、センサーを搭載した機体であれば、センシング技術を用いてデータを収集し、作物の育ちが悪いエリアにのみ集中的に肥料や農薬を散布する、といったことも行えます。データを活用した効率的な品質向上が期待できるのは大きなメリットです。

病害虫の早期発見を行う

農業において排除すべき敵のひとつが病害虫です。病害虫が発生してしまうと、農作物の品質が低下するのはもちろん、収穫量が少なくなるリスクもあります。発生した病害虫が繁殖を続ければ、甚大な被害に遭うおそれもあるため、早期発見は不可欠です。

ただ、病害虫を早期発見するのはそう簡単なことではありません。農作物を育てる圃場の広さにもよるものの、広大な面積であれば毎日人力で巡回するのは困難です。病害虫の発生をチェックしながら巡回するだけでも相当な手間が発生するため、あまり現実的ではありません。

そこで、農業用ドローンの出番です。ドローンは上空から圃場の様子を見渡せるため、病害虫の早期発見に役立ちます。巡回頻度も減らせるため、よりコアな作業にマンパワーを割けるようになるのもメリットです。

また、農業用ドローンを活用すれば、病害虫の予測や早期発見の精度向上も可能です。搭載したカメラやセンサーで情報を収集、蓄積すれば、分析をして予測と早期発見の精度をさらに高められます。分析から病害虫発生のパターンを掴めば、スムーズに対処できるようになり、結果的に品質と収穫量の向上が見込めます。

播種や受粉を行う

播種にも農業用ドローンが活用されている事例があります。空中を飛行するドローンを用いて安定した播種を行うのは難しい、と言われていましたが、現在では播種に使用する装置の改良も進み、安定性や確実性が大きく向上しました。

農業用ドローンを用いた水田への播種は、すでに事例が存在します。それまで幾度となくテストを繰り返し、2021年に発芽した種子をドローンで水田に散布することに成功しました。何と、10aあたりの作業時間は約90秒とのことです。

播種や受粉の事例は少ないものの、今後さらに装置の改良などが進めば、当たり前のようにドローンで播種が行われるようになるかもしれません。そうなれば、広大な圃場であっても少ない人員で効率よく種まきを行え、生産性も高まります。

モノを運搬する

農業用ドローンで農作物や農業資材を運搬できないかと期待が集まっています。現在はまだ試験段階であり、実用化はされていないものの、実現すれば農家だけでなく消費者にもさまざまなメリットを及ぼします。

ドローンで農作物を運搬できれば、輸送時間の大幅な短縮が可能です。通常、収穫された農作物は自動車で運搬されますが、ドローンであれば空を飛行できます。空には信号も渋滞もないため、短時間で目的地へ農作物を運べるのが魅力です。ドローンで運搬が可能になれば、省人化を実現できるほか、販売所などへ迅速に運搬できるため、消費者の手にわたるまでの時間も短縮できます。

農業用ドローンを用いた運搬は、すでに実証実験が行われています。北海道の当別町では、農家から道の駅まで、ドローンを用いて農作物を運搬できるかどうか試験が行われました。背景には、農業従事者の高齢化や人手不足があります。ドローンで運搬を試みたのは、約15kgの農作物で、道の駅までの距離は約1kmでした。

実験では見事に成功しています。ドローンは約15kgの荷物を積載した状態で、約1kmの距離を問題なく飛行したとのことです。今後実用化が進めば、物流に革命が起きるかもしれません。
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農業用ドローンを導入するメリット

施肥・防除の時間短縮

農業用ドローンの導入で得られる大きなメリットは、業務効率化です。農業用ドローンを用いれば、上空から肥料や農薬を散布できるため効率的です。作業者が圃場を歩きながら農薬などの散布をする必要がなくなり、作業時間の短縮にもつながります。

農薬の散布や病害虫のチェックなどを、複数人で行っているケースは珍しくありません。農業用ドローンであれば、操縦者のみで作業できるため、省人化にも有効です。しかも、作業に従事する人員が少なくなっても作業効率や生産性が低下する心配もありません。

これらの作業時間を短縮できれば、ほかの農作業へ時間を有効に使えます。また、効率よく作業を行える環境が整えば、人材不足の解消にもつながるかもしれません。農業界は慢性的な人手不足だとよく言われますが、効率的に農作業を行える職場であることをアピールすれば、採用力の強化につながる可能性もあります。

農薬・肥料の使用量の削減

農作物を育てるのに、肥料や農薬はなくてはならない存在です。ただ、使用量が増えるほどコストがかさみ、利益の減少につながるケースも少なくありません。

農業用ドローンの導入によって、肥料や農薬の使用量削減を実現できます。ドローンであれば、上空からピンポイントで狙った場所への散布が可能であるためです。作業者の勘で広範囲に散布するようなことがなくなり、コストダウンにつながります。

実際、農業用ドローンを導入して農薬の使用量削減に成功したケースもあります。上空から圃場の様子を撮影し、データをAIが判定したうえで必要な箇所だけにピンポイントで農薬を散布することで、従来に比べ99%の農薬量削減に成功したとのことです。

高齢者でも作業負荷をかけずに農作業が可能

作業負荷の軽減につながるのも、農業用ドローン導入で得られるメリットです。農作業では、立ち座りが多いほか、重量のある農業資材や農作物を人力で運ぶといったことも多く、作業者に多大な負担をかけることも珍しくありません。日常的に体へ大きな負荷をかけていると、怪我や病気などのリスクが高まる懸念もあります。

このようなリスクの回避にも、農業用ドローンの導入が有効です。特に、体力の低下が懸念される高齢者は、農業用ドローンの導入によって少ない負荷で作業を行えるようになります。

農業用ドローンの活用により、高齢者の作業負荷を軽減する取り組みには大きな意味があります。なぜなら、日本の農業を支えているのは高齢層だからです。令和3年に農林水産省が公表した「農業を担う人材の育成・確保に向けて」によると、日本における基幹的農業従事者は65歳以上が69.6%と、全体の7割近くを占めています。

農業用ドローンを導入すれば、体力の少ない高齢者でも農薬散布や病害虫のチェックといった作業の負荷を軽減できます。真夏の炎天下に長時間作業を続けることによる健康被害などのリスクを抑えられるのも利点です。

農業を担う人材の育成・確保に向けて|農林水産省

データを活用できる

センサーやカメラが搭載された機体であれば、さまざまなデータを収集できます。収集、蓄積したデータを分析すれば、正確な現状把握や収穫量の予測なども実現でき、さらなる生産性の向上が見込めます。

人力では取得が難しいデータを収集、管理できるのもメリットです。たとえば、夜間や悪天候時などは、人力でデータを取得するのが困難です。一方、ドローンであればこのような状況でもデータを収集でき、集めた情報を管理して今後に活かせます。

農業用ドローンを導入するときの注意点

農業用ドローンの導入によって、さまざまなメリットを得られる反面、いくつか覚えておくべき注意点があります。農業用ドローンを操縦するには許可が必要であり、導入にはコストもかかります。このような注意点を理解したうえで、メリットと比較しつつ導入すべきかどうかを検討しましょう。

許可が必要になる

農業用ドローンの導入や操縦をするのに、免許は必要ありません。ただ、飛行させる空域や方法、目的によっては事前に国土交通省から許可をとらなくてはなりません。

許可が必要なケースは、空港の周辺や人口集中地区の上空などを飛行させる場合や、夜間に操縦する、物件の投下を伴う、といったケースです。

農業用ドローンの場合、肥料や農薬の散布を目的に導入するケースが多く、それらが「物件の投下」にあたるため、実質的に許可は必須です。許可を取る際は、ドローンをどこでどう飛行させるか、誰が操縦するかなどを申請します。

また、ドローンの重量が100g以上ある場合は、飛行許可申請する前に国土交通省へ機体登録することも義務付けられています。機体登録は所定の窓口へ書類を提出する、もしくはオンラインで手続き可能です。

これらの手続きは、ドローン事業者に代行してもらうことも可能です。農業用ドローンを扱う代理店が飛行申請の手続きを代行してくれるかどうか、また別途費用が発生するかどうかを確認しましょう。

コストがかかる

農業用ドローンを導入する際の注意点として、コストの発生が挙げられます。農業用ドローン導入で発生するコストには、機体の購入費用やメンテナンス費用、登録など各種手続きに要する費用などがあります。

農業用ドローンは、農業に特化した機能をもたせているケースが多く、機体サイズが大きなものも少なくありません。大型タンクやセンサー、カメラなどを搭載した機体が多く、どうしても費用は高くなる傾向があります。

購入する機体によって費用は大きく変わるものの、目安としては200~300万円です。乗用車の新車を購入するくらいの費用がかかるほか、維持費として毎年20万円ほどが発生します。もちろん機体が故障した際には修理費用もかかります。

このように、農業用ドローンの導入には少なくないコストが発生するため、費用対効果を考慮したうえで検討しなくてはなりません。導入によってどれくらい作業効率がアップするのか、費用に見合った成果が期待できるのかをじっくりと考えたうえで、導入すべきかどうかを判断しましょう。

積載量が少ない

農業用ドローンの多くは、一般的なドローンに比べて大型です。ただ、大型とは言ってもドローンであるため、積載できる肥料や農薬の量はそれほど多くありません。肥料や農薬の散布目的で導入を検討しているのなら、積載量は大きな判断材料です。

農業用ドローンには最大積載量が定められており、それを超えて農薬などを積載してはいけません。操縦に悪影響を及ぼし、最悪の場合機体が墜落してしまうリスクもあるためです。

積載量が少ない機体を選ぶと、散布する際に何度も農薬を積載しなくてはならず手間がかかります。では、積載量が多い機体を選ぶべきなのかというと、一概にそうとも言えません。積載量が多い機体であれば、たしかに大量の農薬を積載できますが、電力消費が大きくなるほか、機体が重くなるため操縦性にも影響を及ぼします。

農業用ドローン購入前に、どの程度の量を積載できるのかしっかり確認を行いましょう。基本的に、10L前後の容量であれば十分であるケースがほとんどです。必要以上に積載量が多い機体を選んでも、余計なコストがかかるおそれがあるため注意しましょう。

農業用ドローンを選ぶときのポイント

農業用ドローンは、薬剤の散布量から選ぶのが基本です。農業用ドローンには、農薬などを積載できるタンクが搭載されており、それぞれ積載量も決まっています。散布したい量から逆算し、もっとも適した機体を選びましょう。

圃場の広さから選ぶのもひとつの手です。圃場の広さによって必要となる肥料や農薬の量が決まるため、そこから計算して機体を選びます。たとえば、3~10haの広さであれば7L前後、15haなら9L程度のタンクを搭載した機体がベストと考えられます。

ドローン導入時には、メーカーも慎重に選びましょう。ドローンを扱っているメーカーは多々あるものの、それぞれに特徴があります。メーカーを選ぶ際には、近くの代理店や取扱店が扱っているメーカーを選びましょう。ドローンは定期的な点検やメンテナンスも行わなければならないため、近くに扱っている店舗がないメーカーを選ぶのはおすすめできません。

可能であれば、導入前に操作性も確認しておきましょう。導入したものの、操縦が難しい、使いこなせない、となるとコストを無駄にしてしまいます。農業用ドローンのデモ会などが開催されることもあるので、直接足を運んで操作性をチェックするのはおすすめです。

農業用ドローンで使える補助金

農業用ドローンの機体は高価なものが多いため、導入に二の足を踏んでしまう人も少なくないと考えられます。できるだけコストを抑えて導入したいのであれば、国や自治体の補助金を利用してみましょう。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業庁が中心となって提供している補助金制度です。法人だけでなく、条件を満たせば個人事業主でも補助金を支援してもらえるため、活用を検討してみましょう。

制度を利用すれば、ドローンの機体購入費用を援助してもらえます。といっても、購入費用の全額を補助してもらえるわけではなく、購入費用の1/2、もしくは2/3を支援してもらえます。

小規模事業者持続化補助金

こちらは小規模事業者を対象とした補助金制度です。ドローンだけでなく、別の農業機械の購入、HPやチラシの制作費など補助の対象が幅広い点が特徴です。ドローンの購入費用として制度を利用する場合には、最大200万円までの支援を受けられます。

申請に関する決まりごとや注意点が、詳細に定められているため注意が必要です。まずは公式のガイドブックに目を通し、公募要領の内容もきちんとチェックしたうえで検討してみましょう。

強い農業・担い手づくり総合支援交付金

農林水産省が主導している補助金制度で、強い農業者の育成や地域農業の発展を目的としています。産地基幹施設等支援タイプ、先進的農業経営確立支援タイプ、地域担い手育成支援タイプの3つがあり、産地基幹施設等支援タイプを除く2つのタイプがドローン購入に活用できます。

先進的農業経営確立支援タイプの上限額は、個人が1,000万円、法人が1,500万円と高額です。一方、地域担い手育成支援タイプは上限300万円となっています。

まとめ

農業用ドローンを導入すれば、農作業の業務効率化につながり、農業従事者の負担軽減にもつながります。高額な機体が多いですが、補助金制度をうまく活用すればコストを抑えた導入が可能です。本記事の内容を参考に、農業用ドローンの導入を検討してみてください。
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