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農林水産・食関連

農業のIoTとは? 活用メリットや事例、注目される背景

農業分野では、人手不足や気候変動などさまざまな課題が深刻化しています。この記事では、課題を解決に導く農業のIoT化について、求められる背景や、得られるメリットについて解説します。また、導入コストをはじめとするIoT化の課題についての理解も重要です。実際の導入事例も参考にした上で、農業のIoT化に関する理解を深めましょう。

農業のIoTとは? 活用メリットや事例、注目される背景

農業のIoT化とは

IoT(Internet of Things、モノのインターネット)技術の普及により、インターネットとあらゆるモノが接続されるようになりました。カメラやセンサー機器、自動車などさまざまなモノがネットワークに接続され、遠隔操作やモノ同士の通信、収集したデータの分析などが可能となっています。

人材不足が慢性化している農業は、IoT活用の期待が高まっている分野のひとつです。農林水産省では「スマート農業」と呼ばれる「ロボット技術やAI、IoT・ICTなど先端技術を活用して生産の省力化・高品質化を実現する新たな農業」の推進を掲げています。今後は農業分野におけるIoTをはじめとする先端技術の活用のさらなる進化が期待されています。

参照元:農林水産省 スマート農業
関連記事:IoTでできることを身近な例と共に解説! 社会課題の解決事例からAI連携まで
関連記事:スマート農業とは? 普及が加速する現状や今後の課題、導入事例も紹介

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農業のIoT化が求められる背景

日本の農業は多くの課題を抱えています。人材不足や高齢化、気候変動による収穫量減少などは従来の技術では解決が難しいため、IoTなどの新しいシステム導入が必要です。

農業の人材不足と高齢化

農林水産省が2022年に公表した「令和3年度食料・農業・農村白書」によると、基幹的農業従事者(自営農業に従事している者)は年々減少しています。2005年時点では224万1,000人でしたが、2015年では175万7,000人、2020年では136万3,000人と、15年前と比べて39%も減少しました。

人手不足に加えて高齢化も進んでおり、2020年における基幹的農業従事者の70%は65歳以上です。その一方で、49歳以下の割合は11%にとどまっており、今後はさらに高齢化が深刻化することが予測されています。

参照元:農林水産省「令和3年度食料・農業・農村白書 (1)基幹的農業従事者」

新規就農の参入障壁の高さ

新規就農の難しさも、人手不足が続く原因のひとつです。未経験者が新たに農業を始める場合、農地や住居に加えてトラクターなどの高価な機械一式を用意しなければなりません。育てる作物によってはビニールハウスなどの施設も必要です。多額の初期費用を確実に回収できるとは限らないため、断念するケースも少なくありません。

また、農作業は力仕事や手作業が多いため、多大な手間や労力がかかります。機械化すれば作業効率は良くなりますが、機械を利用するための知識や資格、技術が必要です。もし作業効率化に成功したとしても、農作物を育てるためのノウハウが足りません。育て方や自然災害への対応など、適切な判断をするには長年の経験が必要です。

ノウハウの構築方法が分からず、教えてくれる人が周囲にいない可能性もあります。ノウハウを得る手段があったとしても、習得するまでの期間に一定の収入を得られない場合は農業の継続を諦めなければなりません。
このように、新規就農参入にはさまざまなハードルを越えなければならないため、これらの課題を改善できない限り根本的な解決は困難です。

気候変動による収穫量の減少

令和5年に農林水産省が公表した「『みどりの食料システム戦略』について~スマート農業のゼロカーボンへの貢献~」によると、日本の年平均気温は年々上昇しており、2020年には1898年の統計開始以降最も高い値を記録しました。

温暖化だけでなく、自然災害の激甚化などの気候変動も問題視されており、降雨量増加による被害は特に深刻です。農業は気候変動の影響を受けやすい分野であり、収穫量の減少だけでなく高温による品質低下や着色不良、生育障害などの影響も生じています。雪解け水を農業に利用している場合は、積雪量の変化により利用できる水量が足りなくなる懸念があります。度重なる自然災害による被害が拡大しつづければ、いずれ日本の農業自体の存続が危ぶまれます。予期せぬ自然災害に対応するには、被害を最小限にとどめるための技術導入が必要です。

参照元:農林水産省 北海道農政事務所 「『みどりの食料システム戦略』について~スマート農業のゼロカーボンへの貢献~」

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農業でIoTを活用するメリット

作物の状態・灌漑管理の自動化による省力化

農業にIoTを導入することにより、作物の生育状況の確認や灌漑設備の遠隔操作・自動化が可能です。AIやカメラ、センサーを活用することで遠隔から作物の状態が確認できるため、見回りを頻繁にする必要がなくなります。

IoTで得られたデータの収集・分析によって作物の生育状況が容易に把握できます。圃場やビニールハウスに各種センサーを取り付けることで、温度や気圧、照度などが自動的に管理され、システムとの連携で肥料や水量を適量に保つことも可能です。

ドローンで撮影した作物の画像を解析することによって、病害虫の発生予測や早期発見なども可能です。何らかの異常を事前に検知することで迅速に対応できるため、被害を未然に防げるほか、被害が発生した場合でも損害レベルを最小限にとどめられます。

ビッグデータ活用でノウハウの蓄積・習得が可能

各種IoT機器を通して、あらゆるデータを継続して取得できるようになります。それにより、農作物の生育状況や農薬散布・収穫のタイミングなどを高精度で分析できるため、新規就農参入者でも適切に判断できるようになります。

集積した膨大なビッグデータは、農作業の最適化にも活用することが可能です。病害虫や気候変動などは、収集したデータが増えるほど予測しやすくなり、高品質の農作物生産につなげられます。農薬の適量を把握することでコスト低減につながり、環境にも良い影響を与えます。減農薬をセールスポイントにできるかもしれません。

このように、ビッグデータの活用によって有用なノウハウが得られるため、新規就農の参入障壁を取り除く効果が期待できます。データを基に計画を立てて実行し、結果を分析してさらなる効率化を図れます。PDCAサイクルを効果的に回せるようになることで、常に一定の収益を得ることが期待できます。初心者でも安心して農業に取り組めるようになれば、離農者が増えにくくなるかもしれません。また、蓄積したデータは後継者育成にも活用できます。

自動化による労働負担の軽減

IoTの活用によって生育から出荷までの作業が自動化・省力化されれば、労働負担・時間を大幅に軽減することが可能です。従来は手作業で行わなければならなかった草むしりや水やりなどの作業を自動化できる農業機器を導入することで、身体的負担の軽減や作業効率の向上が期待できます。これにより、高齢者や農作業に慣れていない人でも継続的に農作業に従事できる環境が得られます。IoT機器は24時間休まずあらゆるデータを収集しつづけるため、異常発生も見落とすことなく検知できます。これにより、広大な農地の管理を少人数でも行えるようになるかもしれません。

従来の農業現場では、記録したデータを紙媒体で管理していたため、詳細な記録を残さないケースも多く見られました。IoTの導入によって各種データの自動記録や一元管理が可能です。記録する手間や時間も省けるほか、人的ミスも防げます。

農業のIoTが抱える課題

導入コスト

農業のIoT化には、少なくないコストがかかります。まず、システムを構築するにはIoT機器を複数購入しなければなりません。農地の広さによっては多くの機器が必要になるため、さらにコストがかかります。それに加えて、通信費や維持費などの運用コストも継続的に発生します。特に小規模農家にとっては、初期費用を回収するまでに時間がかかり、毎月のランニングコストも発生するため、負担は少なくありません。導入前に費用対効果を明確にし、損失が出ないようにしましょう。

まず、購入する機器が導入できるかを事前に確認しておく必要があります。多くの企業がIoT機器を販売しており、規格や仕様もさまざまです。そのため、機器同士に互換性がなかったり、設置環境に適していなかったりすることも考えられます。高額なコストをかけて購入した後になって使えない事が判明した、といった事態を防ぐため、事前に調べておきましょう。

農業IoTを管理できる人材の不足

IoT化を進めるには機器を使いこなせる人材が必要ですが、現在、農業従事者の大半が高齢者です。IoT機器やシステムには先端技術が使われており、中には操作が難しいものもあります。農作物や生育環境に応じて機器の設定や調整をしなければならず、機器のトラブルが発生した際にも対応する必要があります。機器に不慣れな高齢者にとって、IoT導入の心理的障壁は低くありません。

スマート農業の担い手を育成するには時間がかかります。人材確保や、簡便に操作できる機器の開発が急務です。

新たなインフラの整備

IoTの導入には電気や水道、通信環境といった各種インフラを新たに整備しなければなりません。それには専門業者に依頼する必要があり、工事費などのコストがかかります。ドローンやセンサー、ロボットトラクターなどの機器には無線システムを導入する必要がありますが、無線の利用にあたっては無線局免許の取得が必須です。

農地によっては、通信環境が悪い地域もあります。場合によっては単独の農家だけでインフラ整備をするよりも、周辺の農家と協力して進めると良いかもしれません。複数の農家がIoT化することで大規模化が可能になり、協力体制を構築することでトラブルなども解消しやすくなります。

農業IoTの導入事例

センサーで収集したデータをAIで解析して生育管理

IT企業によるIoT・AIの技術活用による植物工業事業への参入事例を紹介します。日本各地で空き家が増加している問題が発生していますが、これらを植物工場に再利用することで空き家問題の改善を図るほか、地域コミュニティの活性化を目指します。
空き家での農業生産ではスペースが限られているという課題がありますが、この取り組みでは通常の畑よりも大幅に生産量を向上させる栽培技術の確立に成功しました。これにより、狭いスペースでも大量の農作物を生産することが可能です。

IoTのセンサーからリアルタイムで取得した画像や天候などの各種データをAIで解析します。これにより、最適な生育管理や、ドローンを活用した農作物管理の自動化が可能になりました。さらに、2023年7月からは特定品種の栽培による実証実験を開始する予定です。主な検証内容は、IoT・AIを活用した栽培技術の効果や収益性です。これらの取り組みによって、食料不足や人材不足といった農業にまつわる問題と、空き家問題の解決を目指します。

農薬散布用ドローンによって防除作業の負担を軽減

次に、センシング技術とAIによる病害虫の自動検知・自動診断システムの開発事例を紹介します。この取り組みでは、農業用ドローンと病害虫診断アプリに搭載されている病害虫診断AIを組みあわせたIPM(Integrated Pest Management、総合的病害虫・雑草管理)システムの開発を進めています。

目標は、ハイレベルの総合的病害虫・雑草管理機能を搭載したドローンによって、誰もが安心できる就農環境を構築することです。病害虫や雑草の判断は経験豊富な農業従事者でも困難な作業ですが、ドローンの見回りセンシングにより農作物の異変を撮影し、画像をアプリに搭載されたAIが診断・特定することで自動化を図ります。
AIによる最適な防除方法の自動判定により、被害拡大の防止や異常個所の見逃し削減が可能です。効率的な圃場管理や病害虫雑草のリスク低減によって、生産性の向上や収穫量の安定が見込めます。

関連記事:農業用ドローンとは? 主な活用例や導入メリット、補助金を解説

まとめ

IoT機器から収集したデータを活用して省力化や品質改善を図る、農業のIoT化が進んでいます。これらの取り組みによって、農業の人材不足や気候変動などのさまざまな課題に対応することが可能です。労働負担の軽減に加えて、作物の状態や灌漑設備などの管理の自動化、ビッグデータ活用によるノウハウ習得などが実現します。実際の現場では収集したデータ解析による生育管理や、IPMシステム構築などで活用されています。このように多くのメリットがある一方で、導入にあたってはコスト負担やインフラ整備などの課題がある点に注意しましょう。

現在のところ農業のIoT化を進める農業従事者は少数ですが、IoTは今後も発展が見込まれる技術分野であり、人力だけでは解決が難しい農業の課題解決に有効です。費用対効果を考えながら導入を進めましょう。

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