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交通・物流

物流業界におけるAI活用事例と導入のメリット・デメリット

近年、さまざまな業界でAIのニーズが高まっており、物流業界でも積極的に利用されるようになりました。この記事では、物流業界におけるAIを活用するメリット・デメリットや、導入事例について解説します。AIの特徴や物流業界で必要とされる理由を理解したうえで、AI導入による具体的な課題解決や物流の最適化について検討しましょう。

物流業界におけるAI活用事例と導入のメリット・デメリット

物流業界でAIの活用が注目される理由

社会情勢の変化や多様化するサービスの影響を受け、物流のニーズは急増しています。しかし、現場では多くの問題が深刻化しています。まず挙げられるのが、過酷な労働環境です。荷物の上げ下ろしや運搬などの仕事は重労働であることに加え、長時間労働も慢性化しています。

少子高齢化による人手不足が常態化している現状において、長時間労働なのに低賃金であるドライバーの確保は困難です。再配達業務も多いため業務効率は悪く、さらに人材が集まりにくくなっています。また、燃料となる原油価格は国際情勢により常に変動します。ですが、燃料が高騰した場合でも、運送料金の値上げは難しい状況です。

このように山積する課題を解決する方法として、AIに注目が集まっています。

関連記事:物流業界の現状と課題とは?

参照元:国土交通省|物流を取り巻く動向と物流施策の現状について

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物流業界で期待されるAIの活用方法

物流業界において、AIは多くの用途で利用可能です。たとえば、物流システムの構築やAIロボットによる作業負担軽減などが挙げられます。

AIを組み込んだ物流システムの利用

AIによって輸送や保管、流通加工などの物流工程をシステム化すれば、業務効率化が実現します。

AIを組み込んだ物流システムを構築することで、多くの作業を自動化できます。全工程を一元管理し、高精度な物流予測や配送ルートの最適化などが可能です。AIに蓄積したデータは、システムの改善や経営マネジメントに応用できます。

少人数でも業務効率を向上させられるため、長時間労働も必要ありません。

AIロボットの活用

AIロボットを活用すれば、倉庫における運搬業務の負担を軽減可能です。AIロボットとの協働により、高齢の従業員でも無理なく作業を進められます。さらに、在庫管理が自動化されることで人的ミスもなくなります。不要な在庫を抱えることも、在庫が不足して業務に支障をきたすこともありません。

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AIを物流業界で活用するメリット

AIは物流予測や人員配置、作業効率や事故防止など、あらゆる場面で活躍します。ここでは、AIを物流業界で活用する主なメリットを解説します。

物流予測を高精度化できる

人が作業する場合、高精度の物流予測は困難です。しかしAIを活用すれば、データ解析による高度な物流予測が可能です。企業が保持する集荷発送や売上などのあらゆるデータを分析し、AIの機械学習によって物流を予測すれば、信頼性が高い情報を入手できます。蓄積した大量のデータを解析すれば、精度をさらに向上させられます。

高精度な物流予測が実現することで、必要な物資の確保や機器の手配、ドライバーへの適切な指示が可能となり、業務効率化やドライバーの負担軽減につなげられます。

配送計画を最適化できる

働き方改革により、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が2024年から適用されることになりました。そのため、適切な配送計画を立てて業務効率化を図らなければなりません。しかし、どの配送ルートをどの順番で回るかについて、倉庫数や従業員など多数の要素を考慮して適切な計画を立てるのは困難です。

AIによって配送計画を最適化すれば、短時間で効率的な配送ルート予測が可能です。さらに、交通量データから渋滞予測も可能であり、繁忙期にもスムーズな配送が実現します。効率的な配送によって業務時間を短縮できるため、働き方改革にも対応可能です。

人員配置を最適化できる

AI活用により正確な物流予測ができるため、人員配置の最適化も可能になります。必要な労働力を可視化し、AIにより無人化する拠点と人員を充当する拠点と使い分けたり、拠点ごとに適切な人員を充当したりといったことが可能になるため、労働力の過不足は生じません。これにより、繁忙期でも労働力不足に陥ることなく業務を進められます。

最適な人員の配置により、業務時間の短縮と生産性向上を両立できます。

検品作業の効率を上げられる

入庫・出荷における検品を手作業で行う場合に注意すべきなのが、人的ミスです。ダブルチェックなどによるリスク低減も可能ですが、人件費がかかります。AIを搭載した画像認証システムを導入すれば、検品作業の自動化が可能です。ミスなく高速で大量の検品を行えるようになるため、省人化と生産性向上が実現します。

ドライバーの事故防止につながる

ドライバーに過度な負担がかかることで懸念されるのが、居眠り運転です。長時間労働をしていてもドライバー自身が運転して荷物を届ける必要があるため、事故発生のリスクは常にあります。

AIを搭載したドライブレコーダーを導入すれば、内蔵されたカメラによって居眠りの兆候を検知できます。異常を検知したらドライバーへの呼びかけを行ってくれるため、事故リスクの低減が可能です。

荷物の仕分けを自動化できる

倉庫に入庫した荷物は、仕分けをしなければなりません。手作業で仕分けを行う場合は、商品情報の読み取りやシステムへの入力を正確に行う必要があります。

AIを活用することで、検品作業だけでなく荷物の仕分けも自動化が可能です。AIの画像認証システムを利用すれば、商品の型番や数量を自動識別して、入庫から仕分けまで短時間で行えます。人的ミスもなくなり、大幅な省人化が可能になります。

労働不足をAIロボットで補える

上述の通り、AMR(自律走行搬送ロボット)などのAIロボットを導入すれば、倉庫で行う作業の効率化が可能です。AMRは、人と協働して搬送作業を行います。現場の環境に合わせた搬送ルートの変更ができるため、利用しやすい点が特徴です。AIロボットにより労働不足を補い、共同作業や分業をスムーズに行えます。

過疎地域への物流を可能にする

過疎地域や山間部では高齢化が進んでおり、物資の入手が難しい、いわゆる「買い物弱者」が増えています。しかし、人手不足の中で定期的に過疎地域へ配送を行うことは容易ではありません。このような状況を受け、近年ではAIドローンを活用した物流システム構築の取り組みが行われるようになりました。

2022年に総務省が公表した「情報流通行政局地域通信振興課地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」によると、一部地域では都市部から山間部への配送が行われています。ただし、現状では実証実験の段階であり、継続的な調査や検証が必要です。

参照元:情報流通行政局地域通信振興課地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】

関連記事:ドローン物流とは? 導入のメリットや事例、課題を解説

物流業界にAIを導入する際のデメリット

このように多くのメリットがあるAIですが、導入に際してはいくつか注意点もあります。導入コストの試算を行ったうえで、導入するシステムに応じたルール変更をしましょう。

ルール変更・マニュアル作成などが必要になる

AIを導入する場合、これまでの業務内容や形態、ルールを大きく変更しなければなりません。特に、機器の扱いに不慣れな従業員は、システムを使いこなすのに時間がかかります。使い方が分からずミスが発生した場合、多方面に影響が及んでしまいます。

すべての従業員がスムーズに業務を行うには、ルールやシステムの変更点について、社内に広く周知することが重要です。システムの使い方についてまとめた、分かりやすいマニュアルを作成しましょう。

なお、マニュアル整備には時間がかかり、整備後に新たな問題が発生することも想定されます。現場の声を聞き入れ、適宜変更を加えることも重要です。そのため、ルール変更やマニュアル作成は、スケジュールに余裕を持って取り組みましょう。

導入コストがかかる

便利で有用なAIやシステムには、最先端の技術が使われています。そのため、一般的に多額の導入コストを要します。企業の規模やシステムによっては、さらに高額になるかもしれません。とはいえ、AIによって多くの問題を解決できるならば、導入時のコストは遠からず回収できます。

費用対効果をシミュレーションしたうえで、導入すべきAIを選びましょう。AI選定時には費用や精度に加え、導入によって自社の課題をどのように解決可能かどうか、どれほど業務を最適化してくれるのかなどに着目するとよいでしょう。

物流業界のAI活用事例

物流業界では上述のメリットを活かし、さまざまな場面でAIを利用しています。以下では、【運送】【倉庫】【検品・仕分け】の分野ごとに活用事例を解説します。

【運送】AIによる配送ルートの算出

ある配車システム開発会社が開発したAI配車システムは、走行車両からデータを収集した高精度な経路検索によって、ドライバーをサポートします。配送業務に集中できるほか、道路の混雑状況や運転負担も考慮した配車計画・ルートを作成できます。UIは直観的に操作可能であるため、簡便な配車業務フローの構築が可能です。

すでに大手の運送業者が導入しており、走行時間の短縮やコスト削減、人手不足の解消などの成果を上げています。

【運送】業務量予測による人員の最適配置

ある運輸業者では、AIを活用した貨物量予測システムを導入しました。過去の集荷データを分析し、AIが各配送センターに届く貨物量や時間帯を予測します。従来は、担当者の経験をもとに貨物量の変動を予測する必要がありました。

このシステムによって高精度の貨物量予測が可能になるため、従業員や配送トラックの最適な配置ができるようになります。繁忙期でも安定した配送が可能になり、効率的な配車計画や勤務シフトの作成が可能になりました。

【運送】AIによる卸売市場内の交通整備を最適化

青果物の物流量は増加し続けており、卸売市場では渋滞が生じていました。場内卸売市場は経験者のノウハウや工夫によって運用されていましたが、商品の停滞やフォークリフトの動線混雑などの問題を改善する必要があります。

状況改善に向け、青果物の卸売業会社がAIソリューションを提供する企業と共同で取り組んだのが、AIによる交通整備でした。商品やフォークリフトの動線画像をAIカメラで撮影し、AI動態分析を行うことで、配置とフォークリフト誘導の最適化に成功しました。最適化によって、多くの青果を短時間かつ低コストで提供できるようになります。

【倉庫】自動走行ロボットによる人員不足の解消

ある企業では、倉庫に自動走行ロボットを導入することで、人手不足を解消しました。自動走行ロボットが棚ごと商品を持ち上げ、作業員がいるエリアまで運搬してくれます。商品探しや棚入れのために、作業員が広大な倉庫内を移動する必要はありません。

このロボットにより、棚入れと棚出し作業にかかる時間を短縮できるため、速やかな出荷が可能です。さらに棚入れの際、スキャナーやカメラ画像によって商品特定や保管記録も自動で行われるため、少人数でも生産性向上につなげられます。

【倉庫】画像識別による業務効率化システム

画像識別システムにより、倉庫業務の効率化が可能です。通常、検品の際には、商品を識別する品番などの製品コードを取得しなければなりません。しかし、コードがない商品の場合は情報取得に時間がかかります。

ある企業が独自調査したところ、物流倉庫業を営む企業の大半は、コードあり/なしの商品が混在したまま入庫から出荷までの管理を行っていることが分かりました。しかし、これでは人的ミスのリスクが増えるだけでなく、多大な労力や時間がかかるため非効率的です。

AIによる画像識別システムを利用すれば、スマホのカメラで撮影した画像からAIが商品を識別して、品番に変換してくれます。手作業での確認が不要になり、作業時間も大幅に短縮できます。

【倉庫】フォークリフトの安全性を向上

物流業界で活用されているフォークリフトには、接触や転倒事故などのリスクが常に存在します。ある企業は他企業と共同のもと、AIによりフォークリフトの安全性を向上するAI判定システムを開発しました。

ドライブレコーダーに記録された映像データをもとに、AIが乗務員の危険操作を抽出・判定します。現時点では未実装ですが、将来的にはリアルタイムで乗務員へのフィードバックを行えるようになるかもしれません。

【検品・仕分け】画像認識による自動検品システム

ある企業は、回収したレンタル通信機器を再利用するため、クリーニングや動作試験などを行っています。しかし、機器の付属品にはバーコードなどが付与されておらず、目視で物品コードを特定・入力する必要があります。また、人的ミス防止のため検品作業は2名体制で行っていたこともあり、生産性や属人性の面で課題を抱えていました。

AI画像認識による自動検品システムを導入したことで、機器と付属品の撮影画像から物品コードを取得できるようになりました。これにより、ベテランの作業者でなくとも検品が可能となり、作業の属人化が解消されて生産性が向上し、検品ミス0%を達成しています。

【検品・仕分け】画像解析による荷物サイズの自動計算

AIソリューションを提供するある企業は、荷物サイズを自動計算するアプリを開発しました。これは、スマホで荷物を撮影することで、自動で荷物情報の読み取りやサイズ計測を可能にするものです。定型物の計測誤差もわずかと高精度で、人の手による計測とほぼ変わりません。このアプリによって荷物を瞬時に自動計測できるため、業務効率化に役立ちます。

【検品・仕分け】AIによって自動封函機の異常を検知

ある物流会社では、自動封函機を導入して商品の封函作業を自動化していました。しかし、封函に失敗するトラブルが稀に発生するほか、従業員による封函状態の確認が行われていたものの、外観から異常を判断できずに発送してしまう場合もありました。

そこでAIアプリを導入したところ、異常を検知すると自動封函機が停止されるようになったため、不適切な封函を防げるようになりました。封函状態確認の作業負荷が軽減され、業務効率化や品質向上の実現といった成果を上げています。

国土交通省も取り組む物流でのAI活用

物流でのAI活用に取り組んでいるのは、物流業界だけではありません。国土交通省は「ヒトを支援するAIターミナル」の実現を目指しています。AIターミナルとは、AIやIoTを活用して、世界最高水準の生産性と望ましい労働環境を可能にするターミナルです。

現在、国内のコンテナターミナルでは、荷役時間の長期化やゲート前の渋滞といった問題が生じています。これらの問題解決に向けて国交省が進めているのは、AIによるターミナルオペレーションの最適化や荷役システムの高度化、情報技術活用による海上コンテナ物流の実証事業です。具体的な取り組みとしては、外来トレーラーの自動走行の実証などが行われており、ドライバーの労働環境改善や荷役効率の向上が期待されています。

国交省が促進する取り組みの詳細については、以下の関連記事をご覧ください。

参照元:国土交通省|ヒトを支援するAIターミナル

参照元:国土交通省|コンテナターミナルにおける外来トレーラーの自働化に関する現場実証結果 ~コンテナ輸送力の維持とドライバーの労働環境改善~

まとめ

AIを物流業界で活用すれば、物流予測の精度向上や人員配置の最適化、労働不足の解消など多くのメリットを得られます。一方で、導入コストやマニュアル作成が必要な点は押さえておきましょう。

現在、物流業界においてAIは、配送ルート算出やフォークリフトの安全性向上などに利用されています。従来の方法による解決が難しい課題に悩まれている方は、AIを活用して解決を図ってみてはいかがでしょうか。

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