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物流の未来は? 現状や国の取り組み、ロジスティクス4.0がもたらすこと

物流業界では、新たな「ロジスティクス4.0」への取り組みが近年加速しています。この記事では、そもそもロジスティクス4.0とは何かといった概念、取り組みで可能になること、現在業界が抱えている課題について解説します。また取り組みを成功させるために欠かせないポイントについても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

物流の未来は? 現状や国の取り組み、ロジスティクス4.0がもたらすこと

物流の未来・ロジスティクス4.0とは

昨今、物流業界は新しい時代にむけて取り組みが加速しています。社会全体が超高齢化を迎え、少子化による人手不足も叫ばれる中、デジタル化の推進は避けられない状況です。

そうした状況下で重視されているのが、原材料の調達から商品の製造、販売、そして配達までの流れを管理・効率化するための「ロジスティクス」という概念です。この概念には1.0~4.0までの形態があり、それらは物流業界の歴史と結び付いています。

物流業界の歴史は、19世紀ごろにさかのぼります。まず、鉄道を利用した内陸輸送が主流の「ロジスティクス(Logistics)1.0」と呼ばれる初期の形態がありました。続いて「ロジスティクス2.0」では、フォークリフトなどを使用し、荷役作業が効率化されました。

現在の物流は「ロジスティクス3.0」と呼ばれる段階です。煩雑になりがちな倉庫の管理業務をコンピュータで自動的にシステム制御するなど、デジタル化が進んでいます。そして次世代の物流「ロジスティクス4.0」では、AIやIoT、ビッグデータなどを活用することで、生産性の頭打ちなどさらなる課題の解決を図れると考えられています。

次からは、未来の物流形態であるロジスティクス4.0でどのようなことが可能になるのか、2つのポイントについて掘り下げ解説します。

関連記事:物流業界におけるAI活用事例と導入のメリット・デメリット

自動化で実現する「省人化」

これまで倉庫作業は人力で行うのが一般的でした。しかし、次世代の物流シーンではまず「自動化(オートメーション化)」が進みます。

通常、倉庫作業といえば、商品の検品、在庫管理、入出荷業務、出荷ラベルの添付、自動運転による配送作業など、多岐にわたる作業が挙げられます。

これらを自動化できれば、無人あるいは省人化できるため、人が判断したり操作したりしなければならないプロセスを大幅に削減可能です。つまり、オペレーションの主体が人から機械やシステムに置き換わります。ひいては、人的なリソース不足といった課題を解決できるようになると考えられます。

機械化による業務の「標準化」

もうひとつのポイントは、業務を機械化することでロジスティクス分野における「情報の標準化」が可能になることです。

これまで、たとえば商品の需要予測や最適な配送ルートを算出する際には、ベテラン従業員による経験や勘に頼ることが少なくありませんでした。しかしさまざまな情報が属人化した場合、その人物が万一休職や退職をしてしまうと、業務が突然一気に滞ってしまいます。

企業は、安定した事業を継続させなければなりません。つまり業務に必要な情報をできるだけ属人化させないように対策を打つ必要があります。

その点、ロジスティクス4.0では、AI(人工知能)技術やビッグデータなどを用いることで、人の手によらず業務プロセスにおける最適解を自動的かつ簡単に出せるのがメリットです。

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物流業界が抱える現状の課題

物流業界が進化していくためには、今どのような課題を抱えているのかを洗い出すことも大切です。

ここでは代表的なものとして、5つの注目すべきポイントを紹介します。

関連記事:物流業界の現状と課題とは?

人手不足

「令和5年版高齢社会白書」(内閣府)によれば、令和4年10月1日現在、総人口に占める65歳以上の人口割合(高齢化率)は、29.0%に達しました。

一方、15歳から64歳までのいわゆる生産年齢人口は全体の59.4%であり、年々減少の一途をたどっています。未来の予測を見てみてもこの傾向は変わらず、この先も働き手となる人口の減少は歯止めがきかないと考えられています。

参照元:内閣府|令和5年版高齢社会白書(全体版)

物流業界も例にもれず、少子高齢化の影響を受けているのは確かです。

ネットショッピングなどにより物流への需要は今後ますます増えていくと予測されます。しかし、新しくドライバーになってもらえる人を育てられず、高齢の配送ドライバーがやがて引退していけば、消費者からの需要増加に対応できるドライバーを育成、確保できません。

ひいては将来的に一段と人手不足が深刻化すると想定されます。

EC普及による多頻度小ロット化

CtoCの取引では、一度に大量の配送を担うのが一般的な傾向です。一方、ECサイトやフリマサイトなどが一般的に普及してきたことで、近年は急激に個人取引(BtoCやCtoC)が増加しました。

個人取引には小ロットかつ配送の頻度が多いといった特徴があり、こまめに配送を請け負わなければなりません。こうした場面でも配送ドライバー不足による負担増が課題になりがちです。

物流コストの上昇

先に述べた配送の多頻度小ロット化は、おのずと配送の回数を増やすことになります。配送料には燃料費や人件費がふくまれており、配送の回数が増えれば物流コストも上がります。そこに燃料費の高騰が加われば、大幅な利益の減少も招きかねません。配送料の増額や商品価格への転嫁にも限度があるためです。

また、配送回数がかさむとそれだけ走行距離も増え、トラックの排ガスも多くなるなど、環境への負荷は確実に増大してしまいます。

過酷な労働環境

ECが普及しネットショッピングが一般的になった現代、配送はとくにスピード化が求められるようになりました。

注文後の当日や翌日配送指定が増え、配送スケジュールには余裕がありません。ドライバーは期日に間に合うよう配達しなければならず、また受取人の不在に伴う再配達などの負担も増えています。

このような労働環境は決して良好とはいえず、人手不足にさらなる拍車をかけています。

2024年問題への対応

政府が主導している働き方改革の一環で、直近に差し迫っているのがいわゆる「2024年問題」です。

時間外労働に上限規制が設けられることから、結果的に労働時間が減り、配送できる商品の数も少なくなると考えられます。これは消費者にとっての不便につながるだけでなく、運送業者にとっては利益の減少をもたらす深刻な問題です。

関連記事:2024年問題とは? 運送・物流業界に生じるデメリットと解決策

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物流の未来にむけた国の取り組み

国土交通省では課題解決の方向性を「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」で示しています。ここでは4つのポイントから主な取り組みを紹介します。

参考記事:国土交通省| 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)

1. サプライチェーン全体の最適化

最初に取り上げられているのが、メーカー、卸、倉庫、運送、消費者といった一連のモノの動き、つまりサプライチェーンに関する項目です。物流分野において分散しているそれぞれの動きを「物流・商流データ基盤」で共有し、無駄を排除することが趣旨です。

ここで示されている取り組みのポイントは5つあります。

        • 「物流のデジタル化」
          ICTを活用した遠隔での点呼、通行経路のWeb確認による特殊車両通行手続の迅速化などが挙げられています。また、サイバーポートの推進によって港湾物流手続を電子化し、生産性向上に貢献することも計画されています。
        • 「自動化・機械化」
          倉庫などにロボットを導入したり、物流トラックの隊列走行・自動運転を実現したりすることで、効率化を図れます。
        • 「物流の標準化」
          とくに加工食品分野で、モノやデータ、業務プロセスを標準化します。また、周辺の業種分野に対する標準化の展開も挙げられています。
        • 「物流・商流データ基盤の構築」
          生産データや店舗在庫データ、積載率データ、購買データ、トラック動態データといった「物流・商流データ」をサイバー空間で一元化された基盤として構築し、その社会実装を進めるという構想です。
          また、物流分野の新しいモビリティサービスとして「MaaS」が注目されています。これは複数ある商用車メーカーのトラック車両データを包括的な仕組みで連携させ、共通する課題へ取り組むことを可能とするサービスです。
        • 「物流DX人材の育成」
          物流やサプライチェーンマネジメントを強力に推進するための人材育成です。求められるスキルの明確化や、必要な知識を学ぶ機会の提供が挙げられています。

これらのサプライチェーン最適化にむけた取り組みにより、無駄な生産、在庫などを削減し、無駄な発送を減らすことにつなげられます。

2. モーダルシフト推進による脱炭素の物流構築

現状、とくに長距離の貨物輸送といえばトラックなど自動車を使った方法が主流です。ただ、ガソリン車は排ガスの問題があるほか、一度に積載できる量も限られています。そこで、世界的な地球環境保護の観点からは、カーボンニュートラルへの取り組みが重要とされています。

こうした経緯から注目されているのが、環境負荷がより少なく、多くのものを輸送できる船舶や鉄道への転換を意味する「モーダルシフト」です。大量輸送が可能になれば、人手不足や燃料問題といった課題の解決につなげられます。加えて、カーボンニュートラルポートの形成、あるいは航空分野の脱炭素、倉庫の低炭素化にも貢献できるといったメリットもあります。

3. 災害に強い物流システムの構築

災害大国とも呼ばれる日本では、とくに大規模災害時にも機能する物流の強靭化が求められています。そこで近年注目されているのが、AIを活用して港湾作業の迅速化・最適化などを実現する「ヒトを支援するAIターミナル」です。また、スマート 貨物ターミナルや自動運転・隊列走行を見据えた道路の整備なども、取り組むべき課題とされています。

これらによって、感染症や大規模災害が発生した際にも問題なく機能する、強靭で持続可能な物流ネットワークの維持が可能です。

4. 物流DXの推進による輸送の効率化

現在、物流業界においてもデジタル化による根本的な構造変革として、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業は少なくありません。

たとえば、顧客に商品が到達する直前の最終接点、つまり「ラストワンマイル」を最適化することで、とくに過疎地域や離島への配送を効率化させる仕組みなどです。新幹線などを活用した貨客混載や、道の駅を拠点とした自動運転サービスも注目されています。

とりわけドローンを使った配送は、過疎地域における輸送の安定化につながるとして、今後もさらに取り組みが進められるでしょう。

関連記事:ドローン配送が日本の物流課題を解決! 現在の取り組み・事例を紹介

物流の未来とロジスティクス4.0がもたらすこと

ここまで紹介したように、物流分野を変革すべく、国としてもさまざまな取り組みを行っています。とくに、AIやIoT、ビッグデータなどを活用したロジスティクス4.0への取り組みは、急速に進んでいます。輸送の効率化と生産性の向上に伴い、消費者の利便性も上がるのは大きなメリットです。

一方で、産業のDX推進やロジスティクス4.0には、次のような懸念点も指摘されています。

まず、物流が標準化したり省人化が進んだりすることで、誰が担っても同じ、どの会社を選んでも同じといったように、差別化しにくくなることがひとつです。

次に、従来行われてきた「梱包」や「運搬」といった、いわゆる基本的なルーティーン作業の「装置産業化」です。ここでいう装置産業とは、製品やサービスの生産工程の大部分が、大型の施設・設備によって生産されている産業を指します。

これまでのビジネスモデルでは、人的リソースが不可欠な「労働集約型」が主流でした。しかし、装置産業化した分野については、そうしたモデルを早急に転換させなければ、市場で生き残ることは困難です。もちろん、大量生産に優れているのはメリットで、コストの引き下げも可能です。ただ、より高い効果を得るためには、IoTなどを活用できる設備投資が欠かせません。

また、装置産業化した分野で他社との差別化を図るにあたっては、「プロセスイノベーション」や「サービタイゼーション」などのポイントが挙げられます。プロセスイノベーションとは、製品やサービスそのものではなく、その製造や流通といったプロセスに革新を起こすことです。物流業界においては、たとえばサプライチェーン領域でのシフト作成や入庫、仕分け、出庫といった工程のアプリによる管理が挙げられます。

サービタイゼーションとは、顧客に焦点を当て、製品やサービス、サポートなどをパッケージ化・バンドル化して提供することです。これは「消費者は優れた体験価値を提供するサービスには喜んでお金を払う」といった考え方にもとづいています。物流業界においては、たとえば発送や入荷に際して顧客に合わせた配慮を行うなどが挙げられます。

今後ますます少子高齢化が進む社会において物流業界で生き残るためには、時流に乗り遅れずにデジタル化やDXを推進することが不可欠です。さらに他社との差別化ポイントを見いだし、ビジネスモデルを思いきって転換させることが求められています。

参照元:IT Leaders|すべての企業、特に製造業や装置産業が向かうべき”サービタイゼーション”の最前線 
参照元:マシニスト出版|EuroBLECH 2012レポート

まとめ

物流業界では、迎えつつあるロジスティックス4.0の時代において、さまざまな課題を抱えています。とくに少子高齢化による人材不足は喫緊の課題であり、2024年問題とも相まって早急な対策が必要です。

また、AIやIoTといった最新技術を活用したDXの取り組みには、他社との差別化を図る工夫も大切です。

この機に、さまざまな角度からビジネスモデルの転換をご検討ください。

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