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ホテルにおけるDXとは? 成功のポイントや活用事例について解説

現代のビジネス環境では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現が成功の鍵になっています。それはホテルなどの宿泊業でも例外ではありません。

本記事では、ホテルがどのようにデジタルを活用し、サービスや提供価値を向上させているのか、その活用ポイントを解説します。

ホテルにおけるDXとは? 成功のポイントや活用事例について解説

ホテル・旅館などの宿泊業におけるDXとは?

そもそもDXとは、経済産業省が「デジタルガバナンス・コード2.0」で行っている定義によれば以下のことを意味します。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

引用元:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0

関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 意味や事例を紹介

簡潔にまとめると、DXとはデジタル技術の活用を通して業務やサービスを変革し、企業価値を向上させる取り組みです。宿泊業におけるDXも、この基本路線は変わりません。

たとえば、ホテルの空室状況の確認や予約をインターネット上で行えることは、いまや一般的になりつつあります。これまでは電話や旅行会社などを通して予約しないといけなかったものを、24時間いつでも簡単に行えるようにすることは、ホテル予約の仕組みそのものを変革し、顧客体験を向上させる立派なDXのひとつです。

とはいえ、競合他社も当然のように行っていることへ後追いで取り組んでも、競争上の優位性を獲得するには至りません。そのためDXでは、AIやIoTなど最新のデジタル技術を活用して、新たな価値創出を実現することが鍵になります。

他産業と比べて、宿泊業のDXはまだ十分に進んでいないのが現状です。特に地方の宿泊業を担うのは中小企業が主であり、従来の手作業に頼っている場合が多くあります。しかし、全体としてDXが遅れがちだからこそ、デジタル活用にいち早く取り組むことで、競合との差別化や競争優位性の獲得といった効果が見込めるはずです。

たとえば、コロナ禍の沈静化により、インバウンド需要が回復しつつある現在では、日本に訪問してくる外国人旅行者の数も増加傾向にあります。ところが、ただでさえ人手不足な宿泊業界において、多言語対応できるスタッフを用意するのは簡単なことではありません。そこで多言語対応可能なAIチャットボットを導入すれば、この問題を克服し、自社サービスをより多くの外国人旅行者へ訴求することが可能になります。このように、DXへの対応は今後のインバウンド需要に対応するためにも重要です。

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ホテル・旅館などの宿泊業でDXが必要な背景

DXが宿泊業で必要とされる理由は、先述のインバウンド需要の回復に対する対応が必要なことだけに限りません。以下では、宿泊業でDXが必要とされる主な背景を解説します。

1. 人手不足への対応

新型コロナウイルスの影響により、国内外の旅行需要は大幅に落ち込み、非正規雇用者を中心に宿泊業からは多くの人材が流出することになりました。2023年5月に日本政府は新型コロナウイルスの感染症分類を5類に移行させましたが、だからといって一度流出した人材がすぐに戻ってくるわけではありません。

そのため、コロナ禍が沈静化し、旅行需要が回復しつつありながらも、多くのホテルは人手不足が原因で対応が難しい状況に陥っています。実際、帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によれば、正社員が人手不足になっている宿泊業者は75.5%、非正規社員が人手不足になっている宿泊業者は78%という結果でした。他産業と比べても、宿泊業は飲食業と並び、特に人手不足が顕著な業界となっています。

参照元:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査(2023 年 4 月)

この人手不足問題を解消するためには、雇用を強化するだけでなく、デジタル技術の導入によって業務を効率化することが重要です。今後日本では少子高齢化によって労働人口そのものが減っていくことが確実視されているので、業務効率化によって現状より少ない人手で業務を回せるようにすることは、長期的な戦略としても視野に入れる必要があります。

2.アフターコロナ(パラダイムシフト)への対応

新型コロナウイルスの影響は、宿泊業における利用者の価値観やニーズにも大きな変化をもたらしました。具体的には、感染リスクを下げるために、人との触れ合いを通して丁寧なおもてなしを受けるよりも、非接触型サービスや無人化した状況を優先したいという人が増えています。

そのため、チェックイン・チェックアウト、食事の提供、客室の清掃など、従来は人間の対面が必要だった部分をデジタル化し、感染リスクを下げる努力が求められます。これらの変化したニーズへの対応にあたっては、デジタル技術の導入とサービスの再設計が必要です。

3. 労働環境の改善・離職リスクへの対応

宿泊業は以前より他業種に比べて労働環境が過酷であり、離職率が高いことが問題となっています。というのも、宿泊業界は24時間365日のサービス提供が求められるため、勤務時間が不規則で休日も少なくなりがちだからです。特に旅行シーズンは業務量が増え、長時間労働が増えます。先述の通り、コロナ禍の影響で人手不足が増す中、現状の労働者にはさらに過重な負担が生じていると予想されます。

いくら新しく人員を雇用しても、就労環境が悪ければ離職率が高くなり、その場しのぎの対応にしかなりません。DXによって業務を抜本的に変革・改善し、労働環境の改善と離職率の低減を実現することは、持続可能なホテル・旅館経営を行うためにも重要です。

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ホテルのDXを成功させる5つのポイント

単にデジタル技術を導入するだけではDXにはなりません。デジタル技術の活用を手段として、業務やサービスを変革し、企業価値を高めることこそがDXの本懐です。このようにしてDXを本質的に成功させるためには、次に紹介する5つのポイントが重要となります。

1. 顧客体験・サービス品質の向上

宿泊業のDXでは、デジタル活用を顧客体験やサービス品質の向上へと結びつけることが大切です。

そのためには第一に、顧客情報を収集・分析し、施策へフィードバックすることが必要です。たとえば、利用者の属性(年齢、性別、ファミリー客かカップル客かなど)を分析することで、顧客理解を深めて各利用者に個別最適化されたサービスを提供し、顧客満足度を上げることが可能となります。

具体的には、「ファミリー客が多いなら子ども向けのサービスを充実させる」「外国人の宿泊客が多いなら翻訳ソフトなどの多言語対応ツールを導入する」などです。多言語対応はインバウンド需要に対応する上でも重要になります。詳しくは後述しますが、AR技術などのデジタル技術によって、ホテルへ「泊まる」以外に「遊ぶ」という価値を付与するのもおすすめです。これはプールやテーマパークなどのレジャー施設と一体化したホテルが一定の人気を得ていることを考えると、その有効性がわかります。

2. 業務効率化による人手不足の解消

人手に依存する業務をデジタル化することにより、業務効率化を実現し、人手不足問題を軽減することも重要です。人手不足状況が深刻化すれば、サービス品質が低下し、顧客満足度にも悪影響を与えかねません。このリスクは特に繁忙期に強まります。

たとえばデジタルツールを活用することで、混雑状況の管理など人力では対応が難しい問題も解消できます。具体的には、IoT技術で温泉などの施設の混雑状況をモニタリングし、その情報を利用者がスマホなどでリアルタイムに確認できるようにするなどです。利用者は自分にとって都合のいいタイミングで施設を使えるようになるので、人手をかけずに顧客満足度を向上できます。こうした取り組みはすでに、温泉宿などで実践されています。

このように、デジタル技術の活用は、従来の業務方法を見直し、人手不足によるサービス低下を防ぐための手段として有効です。

3. 労働環境の改善・安全性の向上

DXによって従業員の業務負担を減らし、労働環境を改善することが可能です。たとえば、フロント業務を受付ロボットにより自動化すれば、従業員の接客業務の負担を軽減できます。清掃ロボットなどの導入も同様に効果的です。こうした自動化対応は、利用者と従業員双方の感染症リスクを減らすことにもつながります。

また、DXには、設備の保守点検などで人為的ミスから生じるリスクを軽減させるという側面もあります。AIカメラやIoT技術による遠隔保守システムの導入は、人的ミスによる事故を防ぎ、宿泊施設の安全性を確保する手段としておすすめです。

4. 人件費の削減

上記の自動化・省人化対応には、人件費の削減につながる効果があることも見逃せません。宿泊業は、他の業種に比べて人件費が高い傾向があります。しかし、自動掃除ロボットの導入や無人チェックインシステムなどを導入すれば、業務に必要な人手が減るため、人件費を削減することが可能です。

少子高齢化により、人材確保が将来的にますます難しくなっていくことを考慮すると、これまで人件費に投じてきた予算をデジタル化へ移行していくことは長期的な戦略として一考の価値があります。

5. 利便性の向上

DXによって、利用者の利便性を向上させることも重要です。これは顧客満足度を向上させ、売り上げ増加を目指す上でも欠かせない観点になります。

たとえば、予約管理システムを導入することで、利用者はPCやスマートフォンなどからスムーズに宿泊予約ができるようになります。面倒な手間をかけずに即座に予約を行えることは、顧客の流入促進と機会損失の防止において非常に効果的です。

また、予約管理システムとキャンペーンDMの連動も、流入増加や集客に寄与します。たとえば、特定の顧客が予約を行った際に、自動的にその顧客への特別オファーやキャンペーン情報が送信されるといった使い方が考えられます。これにより、顧客エンゲージメントが高まり、リピーターの確保や新規顧客の獲得が期待可能です。

さらに、予約時にリピーターかどうかがすぐにわかる仕組みの構築も役立ちます。スタッフはリピーターに対してパーソナライズされたサービスを提供しやすくなります。また、リピーターの予約情報を分析することで、その嗜好や利用パターンを深く理解し、より精度の高いマーケティング活動へつなげることが可能です。

ホテル・宿泊業におけるDXの事例

DXを具体的な戦略に落とし込む際には、他社の取り組み事例が参考になります。そこで以下では、宿泊業におけるDX事例を紹介します。

事例1. 画像認証システムによる顧客満足度の向上

一部の宿泊業者は、AIとIoTによる画像認証システムを活用したDXを行っています。具体的には、旅館の駐車場に設置されたカメラが来客者の車のナンバープレートを認識し、過去の顧客データと即座に照合するというシステムの採用です。そして、その顧客がリピーターであれば、その情報は社内SNSを通じてスタッフ全員へ瞬時に共有されます。

このシステムによって、スタッフはその顧客の名前を正確に把握してお出迎えをしたり、過去の履歴に基づいたサービスを提供したりできます。そうすれば顧客満足度を効果的に向上させ、リピーター化を促進することも可能です。

事例2. VR導入によるリアルな体験の提供

あるホテルチェーンでは、VR (仮想現実)技術を導入し、顧客と従業員の体験を大幅に向上させています。たとえば、一部のホテルでは、訪問前の顧客に対して、VRを通じてホテルの内部を仮想体験できるサービスを提供しています。これは、顧客が自分の宿泊する場所についてより深く理解し、確信を持って予約できるようにするためのサービスです。

一方、従業員の研修に対してVRを活用している事例もあります。VRを通じてフロントデスクやルームサービス、ハウスキーピングといった業務を学ぶという活用法です。これにより、研修用に客室を確保しなくても、従業員へ実際の就業場所での経験に近いリアルな研修を受けさせることが可能になります。

事例3. ロボットによる人件費削減や新たな顧客体験の提供

ロボットを活用してホテル業務をほぼ自動化したホテルもあります。これは人件費を削減するとともに、新たな顧客体験を提供することで集客へつなげるという一挙両得を狙った戦略です。

たとえば、チェックインは案内ロボットのガイダンスにしたがって、顧客自身がタブレット操作をすることで行います。清掃やクリーニングなどもロボットに行わせることが可能です。ロボットによる接客は、「人間味がない」などの理由で忌避する人もいる一方で、斬新さや未来的な刺激を感じて楽しむ人もいます。そのため、自社のコンセプトやテイストも考えた上で検討するのが重要です。

事例4. チャットボットで多言語化と24時間対応を実現

あるホテルでは、AIチャットボットを導入して多言語対応や24時間対応を行い、従業員の負担軽減を実現しています。チャットボットとは、ユーザーの質問などに自動で回答してくれるソフトウェアです。特にAI(人工知能)が搭載されたAIチャットボットは、人間に近い自然で柔軟な受け答えができます。

AIチャットボットは24時間稼働し、顧客からの質問へ即時に回答を提供することが可能です。これにより、フロントスタッフは深夜や早朝に顧客対応をする必要性が薄れるので、大きく業務負担を軽減できます。利用者からしても、人間のスタッフよりもAIチャットボットのほうが気を使わなくて済むため、自分の都合にあわせていつでも利用できるというメリットがあります。

事例5. AR(拡張現実)導入によるエンターテイメントの強化

AR(拡張現実)とは、スマートフォンなどのディスプレイを通して現実の風景や情報にデジタルの情報を重ねあわせて表示する技術です。ホテル業界では、このARを利用したサービスが世界中で増えてきています。

たとえばあるホテルでは、AR技術を利用した「謎解き宿泊プラン」を提供しています。これはARを用いて謎解きの舞台へ変化させたホテル内を、利用者が謎解きしながら巡るというものです。また、他のホテルでは自分のアバターを使ってホテル内の各所で遊べるようにしています。イベントのために内装を大きく変えるのは費用面でも労力面でもハードルの高いことですが、AR技術を用いれば、簡単に魅力的な舞台を整えられます。このように、デジタル技術はエンターテイメントにも活用可能です。

事例6. 地域内のPMS連携によるレベニューマネジメントの強化

ある地域では、人口減少が予測され、経済を維持発展するためには宿泊単価や現地消費額、宿泊者数の増加が必要というのが課題でした。それを背景として、宿泊施設のPMSを連携させて需要予測するとともに、データを共有するシステムの開発に取り組みました。PMSとはホテルや旅館が、予約管理に用いるためのシステムです。

具体的には、各宿泊施設が取り入れているPMSとレベニューマネジメントシステム(需要予測を基に最適な宿泊価格を提示するシステム)を連携。その上で、データの集約とエリア内の宿泊動向の可視化、そして最適な宿泊価格の自動提示をできるようにしました。このようにデジタル技術を活用すれば、他の業者との連携も容易になり、より充実したデータを基に、地域ぐるみで施策を講じることも可能になります。

まとめ

社会がアフターコロナへと向かい、インバウンド需要が回復しつつある中で、ホテルなどの宿泊業がDXに取り組む必要性は増しています。ホテルのDXで行える施策は多種多様であるため、人手不足への対応、従業員の業務負担の軽減、顧客満足度の向上など、さまざまな課題が解決可能です。自社の課題や目標にあわせて、ぜひDXを推進してみてください。

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