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シビックテックとは? 市民が社会課題を解決する事例を詳しく解説!

新型コロナウイルスを筆頭に、近年さまざまな社会的課題が生じている中で「シビックテック」という活動が注目を集めています。これはデジタル技術やオープンデータの活用を通じて、市民参加型の社会課題解決を目指す取り組みです。

本記事では、シビックテックの概要や重要性、具体的な事例などを解説します。民間の力を社会的課題の解決へどのように活かせるのか模索している方はぜひ参考にしてください。

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シビックテックとは? 市民が社会課題を解決する事例を詳しく解説!

シビックテックとは?

シビックテックとは、「civic(市民)」と「technology(技術)」を組み合わせた造語で、市民が行政と連携しながら、さまざまな社会的課題をデジタル技術や後述のオープンデータを活用して解決する取り組みを指します。ここでの市民は、有志のボランティアの場合もあれば、民間企業やNPOなどの場合もあります。

シビックテックは、行政と市民が協力して地域の課題に取り組むオープンガバナンスにもつながっています。オープンガバナンスとは、行政が何かを判断・実行する際のプロセスに市民を関与させ、施策に市民の知見を反映できるようにする体制のことです。

シビックテックやオープンガバナンスによって民間の視点や知識、技術を取り入れることで、政府や行政だけでは対応が困難な社会的課題の解決が進むと期待されています。

オープンデータとは?

オープンデータとは、誰もが参照したり利用したりできるように広く一般公開されたデータのことです。代表例としては、政府や自治体が公開する人口統計情報や公共データなどが挙げられます。オープンデータを活用することで、自力では入手の難しい情報にアクセスして、ビジネスや研究・教育などさまざまな用途に役立てることが可能です。

また、オープンデータと類似したものとして、オープンソースという概念もあります。オープンソースとは、システムやアプリなどを構築する一般公開されたプログラムコードのことです。参照すれば、指定のシステムがどのように構築されているかを理解できるので、類似のシステムを簡単に作ったり改変したりできます。

このように、シビックテックではオープンデータやオープンソースを積極的に利用・発信することで、自分達の持つスキルや情報、成果などを社会全体の財産にし、社会的課題の解決のために広く活用されることが重視されています。

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シビックテックが推進されている背景

現在、デジタル庁をはじめとする行政機関はシビックテックを積極的に推進しています。深刻化する少子高齢化問題、激甚化する自然災害、そして新型コロナウイルスのパンデミックなど、行政だけでは対処しきれない社会的課題がますます増えているからです。

こうした課題の中には、年々進歩するデジタル技術やテクノロジーへの対応も含まれます。近年、市民の生活はますますデジタルに依存するようになりました。実際にさまざまな社会問題の解決に際して、テクノロジーの有効性は広く認められています。

一方で、デジタル技術などに対する行政の知識やノウハウ、対応は民間と比較して遅れがちで、市民の求めるレベルとの乖離が生じているのが現状です。ここにシビックテックの出番があります。

民間の豊富な知識やスキルを活用することにより、行政に不足しがちなリソースを埋めようというのが、行政側がシビックテックを現在推進している大きな理由です。民間側でも、近年は社会貢献について高い意識を持ち、ボランティア活動などに従事する人が増えており、シビックテックの推進を後押しする一因になっています。
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シビックテックのメリット

シビックテックの最大のメリットは、上記で触れたように民間のリソースを社会問題の解決のために積極的に利用できることです。行政だけで対処する場合と比べて、市民サービスやシステムの問題などに関する解決スピードを大きく高められます。

シビックテックは公共サービスの利便性向上などにもつながるので、市民にとってもメリットのあることです。また、民間企業にとっては新たな事業・サービスの創出につながるビジネスチャンスにもなりえます。

さらに、オープンデータやオープンソースを積極活用するシビックテックには、他の地域へ横展開しやすいという利点もあります。これにより、同様の課題を持つ地域がその解決策を迅速に導入し、社会全体の改善を促進することが可能です。

また、市民が社会的課題に対して問題意識を持ち、積極的に関与することは健全な民主主義社会を形成する上で、非常に重要であると捉えられます。

新型コロナウイルス関連のシビックテックの事例

上記のように、シビックテックが活発に推進されるようになった背景の1つには、新型コロナウイルスのパンデミックの影響があります。そこで以下では、コロナ禍という大きな社会的課題に対して、シビックテックがどのように活用されたのか具体的事例を紹介します。

新型コロナウイルス感染症対策サービスまとめサイトの公開

コロナ禍の渦中においては、未知の感染症に直面して世間では玉石混交さまざまな情報が飛び交っていました。また、外出自粛要請が政府から発令される中、在宅勤務やオンライン学習など、新しい生活様式に順応することに多くの人が苦慮していました。そんな錯綜した状況にあって、適切な情報を人々へ効果的に届けるために官民共同で立ち上げられたのが「#民間支援情報ナビ」プロジェクトです。

プロジェクトでは「教育」「ワークスタイル」「生活関連サービス」「医療・福祉」など、分野別にコロナ対策での活動を支援するサービスの情報が無償提供されました。提供されたデータは、国が集約してオープンデータとして順次公開し、広く社会で活用されるように整備しました。このように情報を一元的に集約することで、国民が効率的に必要な情報やサービスへアクセスできるようにし、社会全体がコロナ禍での生活様式にスムーズに順応しやすくなりました。

大阪府の新型コロナウイルス追跡システム開発

新型コロナウイルスの感染対策では、大規模なクラスター感染(集団感染)を如何に予防するかや、クラスター感染が発生してしまった場合、二次感染・三次感染を防止するために、感染の恐れがある人へ如何に早く的確にその事実を知らせられるかが大きな課題になりました。この課題に対処するために大阪府が開発したのが、「大阪コロナ追跡システム」です。

コロナ感染者を追跡するため、飲食店や公共施設、イベント会場など不特定の人が集まる場所に設置された二次元バーコードからユーザーがアクセスして登録するシステムになっています。もしもその場所から感染者が出た場合、情報を登録者のメールアドレスに発信し、さらなる感染拡大を防ぐための注意喚起や行動変容を促すことが目的です。

同システムの開発は問題への対応が急務だったこともあり、フットワークの軽さを見込んで地元のスタートアップ企業へ委託されることになりました。同社は構築のスピード・セキュリティ・スケーラビリティなどの観点からAWS(Amazon Web Service)をシステム基盤に採用し、わずか2週間でリリースに成功。コロナ禍が長引く中で新たに見えてきたニーズにも柔軟に対応するなど、大阪におけるコロナ対策に大きく貢献しました。

東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトの開発

東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトの開発は、他地域に横展開されたシビックテックの好例です。このサイトは、一般社団法人Code For Japanの協力によって開発されました。同法人は、IT技術の活用によって社会問題の解決に寄与することを目指しており、まさにシビックテックを主活動としている非営利団体です。

Code For Japanの協力によって開発された東京都のサイトは、オープンソースで構築され、ソースコードも公開されました。つまり、ソースコードを参考にして、誰もが東京都と同じようなサイトを簡単に構築できるようにしたということです。

また、「新型コロナは東京都だけの問題じゃない」という方針に基づいており、公開するデータ形式に関しても分かりやすい形にすることが重視されました。これにより、北海道や神奈川など約30の他道府県が東京都の取り組みを参考にして、同様のウェブサイトを迅速に開発することが可能になりました。

台湾でのマスク購入制限に関する取り組み

国内だけでなく、海外でもシビックテックの取り組みは進んでいます。台湾では、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、健康保険カードを使い市民のマスク購入枚数を管理する取り組みが行われました。

健康保険カードには個人情報が紐づけられており、一定期間ごとに市民はカードを提示して既定の枚数のマスクを購入できます。その結果、感染対策に不可欠なマスクの買い占めやパニックを防ぎ、マスクの公平な配布と需要調整を実現することに成功しました。

さらに、台湾ではマスクの在庫データをCSV形式で一般公開しました。市民はリアルタイムで各店舗の在庫状況を把握し、感染のリスクを冒して無駄に歩き回ることなくマスクを購入できるようになりました。

新型コロナ対策の接触確認アプリの開発

コロナ禍で行われたシビックテックの中には、結果的に失敗してしまった事例もあります。たとえば、厚生労働省は市民の有志エンジニア「Covid-19 Radar Japan」と協力して、登録者が感染者と接触したことがあるかどうか確認できるアプリ「COCOA」を開発しました。しかし、当初期待されていた成果を上げることができませんでした。

COCOAは稼働直後から「感染者と接触したか否かが適切に判定されない」という深刻な不具合が発生し、しかも当時COCOAを管轄していた厚生労働省は4ヶ月もの間その問題を放置していました。また、そもそもアプリに登録する人自体が少なかったため、アプリ上の陽性者情報と実際の状況に著しく違いが発生し、感染予防につなげられませんでした。

COCOAの失敗の背景には、プロジェクトを管轄する厚生労働省に専門的な判断ができる人材がおらず、頻発する問題に対応できるリソースがなかったことが挙げられます。また、COCOAの管理を再委託された複数企業との意思疎通が不十分で、それぞれの役割や責任の所在が不明確だったことも問題です。いずれにしても、COCOAの失敗は、官民共同でシビックテックを推進していく際の反面教師とすべき事例として捉えられます。

そのほかのシビックテック事例

保育園の空き情報がわかるマップ

新型コロナウイルス関連以外にも、シビックテックの事例として、「さっぽろ保育園マップ」があります。
共働きが進む現代、子育て世帯にとって保育園探しは生活に関わる大問題です。しかし、自分の家庭の事情に適した保育園を探すのは簡単ではありません。そこで開発されたのが「さっぽろ保育園マップ」です。

さっぽろ保育園マップは、保護者の保育園選びを支援し、子ども達により良い環境を提供するために札幌の市民団体によって開発されました。マップでは、各保育園の所在はもちろん、認可情報や定員・空き情報などをマップ上に可視化することで、保育園選びをする保護者を大きく支援しています。

公共インフラの不具合を共有・可視化するアプリ

千葉市では、公共インフラの不具合などを市民-役所間で共有・可視化できるアプリ「ちばレポ(My City Report)」が開発されました。

道路の傷み、壁の落書き、公園の遊具の破損など、公共インフラにはさまざまな問題が発生します。しかし、市の職員などが街中をチェックして回るのは現実的に難しいですし、市民がその都度市役所に訴えにいくのも大変です。

そのような時にちばラボを使えば、スマホで撮影した画像などと共に困りごとをアプリ上で報告するだけで、行政へ対応を促し、効率的に問題を解決できます。ちばレボのこの仕組みは、オープンガバナンスの好例としても参考にすることが可能です。

シビックテックの今後の展望

新型コロナウイルスの脅威が過ぎ去りつつある昨今ですが、少子高齢化や地方の過疎化、行政サービスのデジタル化の遅れなど、日本を取り巻く社会的課題は数多く残されています。そのため、アフターコロナの時代にあっても、シビックテックの需要は今後ますます高まっていく見込みです。

実際、日本政府はオープンデータの活用推進を進めており、行政と民間企業との連携を深める方向に舵を切っています。オープンデータの普及や整備が進むことで、シビックテックはさらに行いやすくなっていくと期待されます。

まとめ

シビックテックへの参加は、市民が社会に変革を起こすための力を発揮する絶好の機会です。アフターコロナの時代において、公共サービスの改善や社会的課題の解決はますます重要となっています。社会の一員として自分や自社にできることはないか、前向きに検討してみてください。
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