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社会課題とは? 日本や世界における社会課題一覧や取り組み事例を解説

社会課題とは、社会において未だ解決に至っていない問題のことです。世界・国といった広範囲の社会に限らず、地域・組織単位の営みも社会とみなされます。
社会課題に対しては、社会に属する一人ひとりが「自分ごと化」として、解決に向けて取り組んでいく必要があります。この記事では、世界と日本が解決すべき課題や具体的な取り組みについて解説します。

社会課題とは? 日本や世界における社会課題一覧や取り組み事例を解説

社会課題とは

社会課題には、環境問題や経済格差、食糧危機やエネルギー供給など、さまざまなテーマがあります。これらの社会課題を解決する上では、国際的な協力や多様な視点が必要です。そのため、国連では2015年にSDGs(持続可能な開発目標)を採択しました。SDGsは、2030年までに持続可能でより良い世界の実現を目指す国際的な目標であり、17のゴールと169のターゲットから構成されています。

(参照:外務省「SDGsとは?」

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社会課題が注目されるようになった背景(SDGsとの関係性)

SDGsは、社会課題解決の指標であり、社会課題が国際的に注目を集める大きなきっかけとなりました。
SDGsの概要や目標、内容を踏まえてみると、それらと日本が抱えている社会課題は密接に関係しているとわかります。下記は、その一例です。

  • ゴール1「貧困をなくそう」…相対的貧困率の高さや子どもの貧困は、日本でも問題となっています。
  • ゴール3「すべての人に健康と福祉を」…日本でも高齢者や障がい者の医療・介護サービスの充実や自殺対策が必要です。
  • ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」…女性の政治参画や経済活動への支援、男女間の賃金格差や暴力問題もまた日本の課題のひとつです。

以上のように、SDGsは日本における社会課題への理解や解決策を考える上で有用な指針です。

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社会課題への関心度の推移

社会課題への関心度は時代や世代によって変化しています。電通グループは2018年から毎年、「SDGs意識・行動度調査」を実施しており、SDGsという言葉やその内容の認知度を調査しています。

第5回目(2022年)の調査結果では、「SDGs」という言葉自体について知っている人は86.0%と出ており、第1回目(2018年)から約6倍まで上がりました。さらに、「内容まで理解している」と答えた人の割合は3.6%から34.2%と、約10倍になっています。このようにSDGsの認知率が上がった要因として挙げられるのは、マスメディアによる一般への理解促進や、企業・自治体などでの取り組みの増加です。

また、世代別に見るとZ世代(1997年以降生まれ)の内容理解度が高く、これは学校教育でもSDGsについて触れる機会が増えたことに起因するものと考えられます。社会課題に対するZ世代の関心度向上には、諸々の課題解決へ向けたイノベーションをもたらす可能性が期待されます。

(参照:第5回「SDGsに関する生活者調査」

代表的な社会課題一覧

ここからは、現在日本や世界が直面している代表的な社会課題について、テーマ別に紹介します。

環境に関する社会課題

環境に関する社会課題とは、「自然破壊」や「異常気象」「生物の絶滅」など、地球の生命活動に影響を及ぼす問題のことです。気候変動や生物多様性の低下といった環境問題は、人間の経済活動や生活様式が原因で発生します。

自然破壊については、森林伐採や開発による森林面積の減少、地球温暖化による北極・南極の氷床融解、マイクロプラスチックによる海洋汚染が深刻な問題です。土壌流失や洪水などの災害を引き起こすだけでなく、二酸化炭素の吸収源である植物が減ることで温室効果ガスの排出量が増加し、気候を変動させます。

異常気象には、記録的な大雨や大雪、日照不足や干ばつなどがあります。大雨による土砂災害や浸水被害、大雪による交通事故や雪崩、日照不足による農作物の不作やビタミンD不足など、人命や健康にも直結する問題です。

生物の絶滅については、地球上の生命活動を支える生物多様性が失われ、食料・水・医薬品など人間社会に欠かせない恩恵が損なわれる懸念があります。国際自然保護連合(IUCN)が作成したレッドリスト(絶滅危惧種リスト)では、42,100種以上もの生物が絶滅の危機に瀕しているとされ、これは評価済みの生物全体に対して28%にのぼります。
未知の種も含めれば、より多くの絶滅危惧種がいると考えられます。

(参照:THE IUCN RED LIST OF THREATENED SPECIES

人口に関する社会課題

人口に関する社会課題には、「少子高齢化」や「未婚・晩婚」「人口減少」などが挙げられます。人口は社会や経済に大きな影響を与えますが、その変化に対応できない場合、さまざまな問題が生じます。

少子高齢化については、結婚・出産・育児に対する価値観の変化や支援の不備、経済的な不安や負担感、医療技術や生活環境の向上による寿命の延長などが主な原因です。少子高齢化が進行すると、生産年齢人口の減少による労働力不足や経済成長率の低下、高齢者人口(65歳以上)の増加による社会保障費の増大、世代間格差や地域間格差の拡大といった影響があります。

未婚・晩婚については、少子化と密接に関係しており、日本では2021年の婚姻率は4.1%と、過去最低を記録しています。
主な原因として挙げられるのは、結婚相手への希望や条件の高まり、結婚市場(出会いや交際)の縮小・多様化、結婚意欲の低下などです。未婚・晩婚化が進むと、出生率の低下だけでなく、高齢出産に伴うリスクや負担の増加、一人暮らしや非核家族化に伴う孤立感の発生や支援体制の不足といった影響があります。

(参照:令和3年(2021)  人口動態統計月報年計(概数)の概況 )

人口減少は少子高齢化に起因する現象で、日本では2007年から自然増減(死亡数と出生数の差)がマイナスに転じています。人口が減ると、生産年齢人口(15~64歳)減少による経済停滞や社会保障負担率の増加、地方都市や農村部での過疎化、空き家問題の発生が危惧されます。

(参照:人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐

医療・福祉に関する社会課題

医療・福祉に関する社会課題には、「看護師・介護士の不足」「社会保険費の増大」が挙げられます。

看護師・介護士の不足では、高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大による、医療・介護のニーズ増大に対応できる人材が足りていないのが問題です。看護師・介護士の不足は、質の高いサービスの提供や労働環境の改善を阻害し、要介護者やその家族の不安や負担を増やすことから、国家的な課題ともなっています。

社会保障費の増大については、高齢者の増加に伴い、医療費や介護費などの社会保障費が年々増加していく点が問題です。社会保障費は国民の税金や保険料で賄われており、その負担は若い世代や現役世代にかかっています。社会保障費の増大は、国家財政や経済成長にも影響し、次世代への公平性や持続可能性にも支障を生みます。

関連記事:日本の医療における課題とは? 解決に役立つDXと取り組み事例

労働に関する社会課題

労働に関する社会課題には、「貧困」「児童労働」「ジェンダー不平等」が挙げられます。

貧困には、国・地域の生活レベルとは無関係に必要最低限の生活水準未満である「絶対的貧困」と、国や地域の平均的な所得水準に比べて低い所得で暮らす「相対的貧困」があります。2019(令和元)年の国民生活基礎調査によれば、日本では2018年時点で15.4%の人が相対的貧困に該当し、教育や健康、雇用などの機会が奪われたり、経済成長や社会的包摂の障害になっていたりします。

(参照:厚生労働省「Ⅱ各種世帯の所得等の状況」)

児童労働は、世界で約1億6,000万人、そのうち危険で有害な労働には7,900万人の子どもが2020年時点で従事しています。こうした労働は、子どもの権利や将来の可能性を奪うだけでなく、貧困や不平等のサイクルを維持する原因となります。

(参照:ユニセフの主な活動分野|子どもの保護

ジェンダー不平等は、性別によって社会的・経済的・政治的・法的・文化的な機会や扱いに格差がある状態が問題です。男女間だけでなく、LGBTQ+(性的少数者)やインターセックス(生殖器や染色体が男女どちらでもない)などの多様な性別や性自認に対しても発生し、人間の尊厳や権利を侵害するだけでなく、社会全体の発展やイノベーションも阻害しかねません。現在日本は、世界経済フォーラムが発表した世界ジェンダー平等度ランキングで146か国中116位(2022年時点)と低い順位にあり、大きな課題となっています。

(参照:男女共同参画局「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2022年」)

防災・防犯に関する社会問題

防災・防犯に関する社会問題には、「自然災害」や「インターネット犯罪」が挙げられます。

自然災害は、気候変動や人口増加などの影響で、その頻度も被害規模も年々大きくなっています。日本は、世界でも有数の自然災害多発国であり、特に地震による被害を警戒しなければなりません。2011年に発生した東日本大震災では多大な被害が発生しており、今後も南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模な地震が発生する可能性が高いため、予防・減災・復興への総合的な取り組みが必要です。

インターネット犯罪は、インターネットを利用して行われる詐欺や脅迫、児童ポルノや個人情報の不正取得などが近年増えています。インターネット犯罪に対抗するためには、警察や行政などの取り組みだけでなく、個人が基本的なセキュリティ対策や偽情報を見分ける能力を培い、インターネットリテラシー(インターネットを安全に利用するための知識やスキル)を身に付けることが重要です。

関連記事:日本の防災での課題|防災DXの概要・自治体での活用事例について

食糧に関する社会課題

食糧に関する社会問題には、「食糧不足」や「フードロス」などが挙げられます。

食糧不足については、2022年の飢餓人口が最大8億2,800万人にのぼり、WFP国連世界食糧計画(国連WFP)及び国連食糧農業機関(FAO)が世界的な食糧不安を警告しています。

食糧不足は、人々の健康や生産性、教育や経済発展などを損なうだけでなく、社会的不安や暴力の温床にもなりかねません。食糧不足を解消するためには、持続可能な農業や漁業の発展、食料供給システムの強化、貿易や援助の促進、教育や衛生の改善などが必要です。

(参照:記録的飢餓が拡大: 世界の食料安全保障と栄養の現状

フードロスは、まだ食べられるのに廃棄される食品のことで、日本では1年間に約612万トンの食品ロスが出ています。
フードロスの原因には、消費者の過度な鮮度志向や賞味期限への固執、外食時の食べ残しや持ち帰りの抵抗感、小売業者や製造業者の在庫管理・需要予測の誤差などがあります。フードロスを減らすためには、消費者は期限表示を正しく理解して必要な量だけ購入すること、事業者は高機能な容器包装やロングライフ製法を導入したり、余剰食品をリサイクルしたりすることが必要です。

(参照:食品ロスの現状を知る

世界的に乗り越えるべき社会課題

現代の社会には、デジタル技術の発展によって、さまざまな変化や可能性がもたらされています。しかし、同時に、新型コロナウイルス感染症のような未曽有の危機、あるいは気候変動や貧困などの長期的な課題にも直面しています。これらの社会課題を解決するためには、国境を越えての多様な分野やステークホルダーの協力が必要です。ここからは、世界的に乗り越えるべき社会課題として、以下の5つを取り上げます。

新型コロナウイルス感染症

2020年に世界中でパンデミックを起こした新型コロナウイルス感染症は、人々の命や健康、経済や社会活動に甚大な影響をもたらしました。また、感染拡大防止のために行われたロックダウンや外出自粛も、人々の生活や働き方に大きな変化を与えました。オンラインでのコミュニケーションやテレワーク、オンライン教育などが一般化しましたが、同時にデジタル格差やメンタルヘルスの問題も浮上しています。

日本では、新型コロナウイルス感染症対策として、デジタル技術も活用されています。例えば、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) は、Bluetoothを用いて近くにいた人との接触履歴を記録し、感染者と接触した可能性がある場合に通知する仕組みです。このアプリは、感染者と接触した人の早期発見・検査・治療に役立ちますが、プライバシー保護や利用者数の確保などの課題もあります。また、政府はデジタル庁を設置し、行政手続きやサービスのオンライン化を推進していますが、まだまだ改善すべき点は多くあります。

デジタル技術の有効活用は、感染症対策だけでなく、社会全体のレジリエンス(回復力)やイノベーション(革新)を高めるため、今後も注力すべき取り組みです。

持続可能な社会の構築

これまでの人間の活動によって、地球上では貧困・飢餓、気候変動、差別、環境破壊など、さまざまな問題が発生しています。これらの問題を解決するためにSDGsが採択され、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを理念に、多くの国や民間企業、市民が取り組んでいます。

持続可能な社会を構築するためには、「経済」「社会」「環境」の3つの側面からバランスよく考えることが必要です。また、「国内」「国際」「現在」「未来」という4つの視点からも視野を広げることが重要です。デジタル技術はSDGs達成に貢献できるツールであり、「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」と「SDGsトランスフォーメーション(SX)」を同時並行で進めることで相乗効果が期待できます。

日本では、「SDGs推進本部」を設置し、「SDGs実施指針」を策定してSDGs達成に向けた取り組みを推進しています。また、「SDGs未来都市」や「SDGsフロンティア企業」といった制度も創設されており、「地方創生」や「産業競争力強化」などの活動と連携しながらSDGs推進が図られています。

災害の激化

気候変動によって、地球の温度や水の循環が変化し、異常気象や自然災害が激甚化・頻発化しています。近年、日本では平成30年7月豪雨や令和元年東日本台風など、記録的な大雨による洪水や土砂災害が相次ぎ、多くの人命や財産が失われました。また、世界各地でも、熱波や干ばつ、山火事などの災害が発生し、人々の暮らしに深刻な影響を及ぼしています。

気候変動の影響は今後も続き、気象災害のリスクはさらに高まると予測されています。このような状況に対応するためには、気候変動リスクを踏まえた抜本的な防災・減災対策が必要です。国家単位で観測や資源管理、情報伝達などを徹底すると同時に、地域・個人レベルでの防災意識を向上させる必要があります。

情報過多・情報独占

デジタル化の進展によって、インターネットやスマートフォン、SNSなどを通じて世界中の情報にアクセスできるようになりました。しかし、この情報の豊富さは、情報過多や情報独占という新たな問題を引き起こしています。

情報過多とは、人間が処理できる以上の量や種類の情報が入ってくる状態のことです。情報過多に陥ると、情報の優先順位や重要度を判断できなくなり、集中力や判断力が低下します。さらに、情報に振り回されてストレスや不安を感じたり、自分の意見や判断基準を持てなくなったりすることもあります。

一方、情報独占は特定の個人や組織が大量の情報を独占的に保有・管理・操作することです。情報独占は、市場や社会における競争や公平性を損なうだけでなく、個人のプライバシーや自由を侵害する恐れもあります。
これらの問題は、フェイクニュースやヘイトスピーチなどの拡散・増殖につながり、社会的混乱や対立を引き起こして、人々の信頼や安全感を損ねることもあります。情報に振り回されないためには、個人レベルでは情報リテラシー(情報を扱う能力)を向上させ、社会レベルではデジタル技術の透明性や公正性を確保するための規制や監視体制を整備することが求められます。

嗜好の多様化

デジタル化の進展は、市場の細粒化も引き起こしました。少子高齢化や単身世帯の増加、ライフスタイルの多様化などによって、人々の嗜好は変化し、消費行動や市場動向にも大きな影響を与えています。

例えば、食に関する嗜好は、健康志向やエシカル志向、地産地消などのトレンドによって変化しています。また、コロナ禍で外食や外出が制限されたことで、自宅で料理を楽しむ人が増えたり、インターネットで食材や食品を購入する人が増えたりしました。一方で、外出自粛が緩和されると、レストランやカフェなどでプレミアムな食体験を求める人も増えています。

趣味やレジャーに関する嗜好も、デジタル化やコロナ禍の影響で変化しています。インターネットやスマートフォンを利用して、動画や音楽を楽しんだり、ゲームやSNSを楽しんだりする「デジタルレジャー」を嗜む人が増加しています。また、自宅で手芸や絵画などのクリエイティブな趣味を楽しむ人も増えています。一方で、自然や文化に触れる旅行やアウトドアなどの「街レジャー」も需要が高まっています。

多様化した消費者のニーズに応えるべく柔軟な対応力を発揮できるかどうかが、企業やサービス提供者の課題となっています。企業やサービス提供者は、消費者の嗜好を的確に把握し、厳しい市場競争に身を投じることが求められます。

日本が注視するべき社会課題

日本は、世界に先駆けて高度な経済発展を遂げた国であり、多くの技術や文化を生み出してきました。しかし、同時に少子高齢化や経済の低迷、都市部への人口集中など、深刻な社会課題にも直面しています。

人口減少・高齢化社会

日本の少子高齢化は世界でも類を見ないほど深刻化しています。国立社会保障・人口問題研究所が2023年に発表した「日本の将来推計人口」では、2020年に1億2,615万人だった日本の総人口が、2070年には8,024万人~9,549万人程度まで減少すると推計しています。

少子高齢化は、労働力不足や市場の縮小、社会保障費の増大といった問題に発展し、日本にとっては最も大きな課題のひとつです。生産性向上や、結婚・子育てのしやすい制度作りが必要なほか、移民政策についても検討が求められています。

(参照:日本の将来推計人口(令和5年推計) 結果の概要 )

経済の低迷

日本経済はバブル崩壊の1990年代から長期の低迷期が続いており、名目GDP成長率及び実質GDP成長率はプラスとマイナスを行ったり来たりしています。

経済の低迷は少子高齢化社会による労働者の人口減少も一因とされ、生産性の向上に向けた取り組みが必要です。例えば、新興国や新興市場への対応、デジタル化・グリーン化・ウェルネス化など新たな需要創出を目指した産業構造の転換、女性や若者・高齢者・外国人など多様な人材の育成・活用が挙げられます。また、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)など先端技術によるビジネスプロセスの効率化・最適化も、今後の日本に求められる課題です。

(参照:総務省「我が国のポジションの低下」

都市部への人口集中

日本では、三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)に人口が集中しており、2050年には総人口の56.7%を占めると推測されます。一方で、無居住地域は国土の60%以上にまで広がると考えられています。

都市部への人口集中が生むのは、都市部では不動産価格の高騰とそれに伴う生活水準の低下、交通渋滞や大気汚染などの環境問題、災害時の被害拡大といったリスクです。一方、地方部では人口減少や高齢化による産業・インフラの衰退、人材流出による地域の活力や創造性の低下といった問題が危惧されます。
都市部への人口集中は、日本全体のバランスや持続可能性を損なう社会課題です。都市部と地方部の連携や協力を強化し、地域ごとの特色や魅力を活かした分散型社会の実現を目指す必要があります。

(参照:我が国における総人口の長期的推移

関連記事:地域が抱える課題とは? 地方活性化の重要性とデジタル化による解決事例を解説

社会課題に対する政府の取り組み事例

ここまで紹介した社会課題に対して、政府はどのような取り組みを行っているのか、消費者庁、経済産業省、内閣府地方創生推進事務局が実施している事例を紹介します。

消費者庁|食品ロス削減推進法

2019年に施行された「食品ロス削減推進法(食品ロスの削減の推進に関する法律)」は、食品ロスの削減に関して国や地方公共団体などの責務を明らかにするとともに、基本方針や施策の基本事項を定めることで、食品ロスの削減を総合的に推進しています。例えば、次に挙げるような取り組みを行っています。

  • 消費者への普及啓発:食品ロスの現状や削減方法をリーフレットやウェブサイトで紹介し、レシピ投稿サイトで食品ロス削減レシピを発信するなどして、消費者の意識改革や行動変容を促す。
  • 商習慣の見直し:製造業や卸売業、小売業にまたがる過剰在庫や返品などの課題について、関係省庁と連携して「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を設置し、納品期限の緩和や賞味期限の年月表示化などを呼びかける。
  • 食品ロス削減につながる容器包装の工夫:醤油など液体系の商品については、容器を2重構造にしての鮮度保持や一人前ずつの個包装化により、賞味期限の延長や食べ残し防止に効果的な容器包装への切り替えを促す。

(参照:消費者庁「食品ロスの削減の推進に関する法律」

経済産業省|SDGs経営ガイド

経済産業省は、社会課題に積極的に取り組みたいと考えている企業に向けて、2019年に「SDGs経営ガイド」を発行しました。このガイドは、「SDGs経営/ESG投資研究会」が取りまとめた報告書であり、SDGs(持続可能な開発目標)に関する現状認識や方法論を整理したものです。具体的には、次の内容が含まれています。

  • SDGsとは企業と世界の間における「共通言語」であり、「未来志向」のツールであること。
  • SDGsは企業経営における「リスク」と「機会」であり、日本企業の理念とも一致すること。
  • SDGsの推進にはマルチステークホルダー(従業員・消費者・大学・国際機関等)の視点や資源が必要であり、一企業だけではなく行政あるいは他業界との連携が重要であること。
  • SDGs経営の実践においては、社会課題解決と経済合理性を両立させることや、重要課題(マテリアリティ)の特定、イノベーションの創発、科学的・論理的な検証、長期視点を担保する経営システム、価値創造ストーリーとしての発信が必要であること。

また、経済産業省は、「健康経営」も推進しており、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人認定制度」などを通じて、従業員等の健康管理を戦略的に実践する企業を表彰しています。

(参照:経済産業省「SDGs経営ガイド」

内閣府地方創生推進事務局|地方創生SDGs

内閣府地方創生推進事務局は、「地方創生SDGs」という取り組みで、少子高齢化と地域の人口減少・地域経済の縮小を抑える活動をしています。具体的には、下記の取り組みです。

  • 「SDGs未来都市」や「⾃治体SDGsモデル事業」により、各自治体の選定や成功事例の普及展開で地方創生の深化につなげる。
  • 「地⽅創⽣SDGs官⺠連携プラットフォーム」を設置し、官民連携のマッチング⽀援や分科会開催、普及促進活動によって官民連携の場を提供する。
  • 地⽅創⽣に向けたSDGs⾦融を実現するフレームワークを示し、地⽅創⽣SDGsに取り組む事業者等を「見える化」する「地⽅公共団体のための地⽅創⽣SDGs登録・認証等制度ガイドライン」を取りまとめる。

また、⾃治体レベルでのSDGsの指標を示す、「地⽅創⽣SDGsローカル指標リスト」の発表や、SDGs未来都市の国際的発信など、さまざまな取り組みを行っています。

参照:内閣府地方創生推進事務局「地方創生SDGs」

社会課題の解決にはデジタル社会の実現が必要

以上に紹介した社会課題に対する政府の取り組みをより効果的にするためには、デジタル社会の実現が必要です。デジタル社会の実現によって、どのようなメリットが得られるのか、「労働参加率の向上」と「労働生産性の向上」という2つの観点から解説します。

労働参加率の向上につながる

日本の女性就業率(15~64歳)は2020年時点で70.6%であり、OECD諸国の38か国中13位となっています。欧州各国と比べると改善の余地があり、特に子育て世代の女性は出産・育児や介護の家庭的負担、職場環境や雇用形態といった制約などにより、就業できない状況にあります。

このような状況を改善するためには、テレワークの導入が有効です。ICTを利用して自宅やカフェなど自由な場所で仕事をする働き方を採用すれば、時間的・経済的負担の軽減やキャリアチャンスの増加、健康面や精神面でのストレス減少といったメリットがあります。

また、テレワークは女性だけでなく、従来型の雇用環境で働き続けることが難しい人々にとっても有益です。例えば、障がい者や高齢者、地方在住者などは、テレワークによって就業機会が拡大し、社会参加や自立生活が促進されます。

(参照:男女共同参画局「OECD諸国の女性(15~64歳)の就業率(令和2(2020)年)」

労働生産性の向上につながる

現在の日本は、世界的にみても労働時間の多さに比べて労働生産性が著しく低いことが問題視されています。時間当たり労働生産性(購買力平価ベース)は49.9ドルであり、2021年時点でOECDの加盟38か国中27位です。

このような状況を改善するためには、AI活用や情報システムの導入による業務効率化を図ることが必要です。AI活用や情報システムを導入すれば、ルーチンワークや単純作業、判断・分析作業などを自動化できるため、付加価値の高い作業に集中できるようになります。また、情報共有やコミュニケーションが円滑化されるため、チームワークやイノベーションが促進される効果もあります。

以上のように、デジタル社会の実現は、社会課題の解決に不可欠です。しかし、デジタル社会への移行には、ICTインフラ整備やデジタルリテラシー教育、セキュリティ対策、デジタル格差解消などさまざまな課題も伴います。これらを克服するためには、政府だけでなく、企業や市民団体、個人など多様な立場が協力して取り組む必要があります。

(参照:労働生産性の国際比較

まとめ

社会課題を解決するには、国・自治体・企業などがしっかり連携し、積極的にアクションを起こすことが重要です。特に日本で課題となる少子高齢化や経済の低迷は、デジタル技術の推進・イノベーションが鍵となります。
個人から団体まで、それぞれの立場や視点で社会的な課題を見つけ、SDGsの実現を目指すことが大切です。
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