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地域が抱える課題とは? 地方活性化の重要性とデジタル化による解決事例を解説

少子高齢化や都市部への人口流出などにより、多くの地方自治体は衰退の危機にさらされています。こうした社会的課題を解決するために昨今注目されているのが、デジタル技術を活用した取り組みです。この記事ではデジタル技術が地域課題の解決のためにどのように役立つのか、実際の解決事例なども紹介しながら解説します。

地域が抱える課題とは

人口減少・流出への対策

多くの地方自治体が直面している課題といえば、人口の減少・流出問題です。地方では高齢化と若年層の都市部への流出が同時に進行しており、人口は年々減少傾向にあります。その結果、地域経済の縮小や地域社会の活力の喪失という問題が生じ、それがさらに若者の流出を招くという悪循環になっています。

この人口減少問題に対応するためには、都市から地方への人流を促進するとともに、地方から都市部への人口流出に歯止めをかける対策が求められます。この後で紹介するほかの課題を解決するためにも、人口減少問題へ対処し、地域社会の担い手を確保することは欠かせません。 

仕事の創出

地域における仕事の創出も非常に重要な課題です。多くの地方では、産業構造が伝統的な農林水産業や製造業に偏っていたり、成長産業が少なかったりして、雇用機会が限定的であるという問題があります。

いくらその地域に愛着があっても、生活の糧がなければ暮らしていけません。したがって、地域における仕事の創出は、人々が安定した生活を送り、地域を活性化するために不可欠な取り組みです。新しい産業を創出するにせよ、企業を誘致するにせよ、国からの補助金などに依存することなく自らの力で稼げる地域づくりが求められます。

結婚・出産・子育ての支援

人口減少とリンクした問題として、結婚・出産・子育てへの支援を充実させることも大きな課題です。「病院や保育園が近くにない」「質の高い教育が難しい」といった不便な状況では、その地域で家庭を持とうとはなかなか思えません。

また、過疎化が進んでいる地方では、そもそも若者同士の出会いが乏しいといった問題も出てきます。地域の活性化のためには、こうした問題に対策を講じて、結婚・出産・子育てがしやすい環境を作り出すための政策が必要です。

さらに、仕事と子育ての両立を図れる環境をつくるために、企業も仕事に対する価値観や働き方をアップデートすることが求められます。

誰もが安心して暮らせる環境づくり

ここまで述べてきた全ての課題と関係することとして、重要なのは誰もが安心して暮らせる環境づくりをすることです。都市から人や企業を呼び込んだり、逆に都市部への人口流出を抑制したりするためには、子ども・若者・高齢者・障がい者の有無・性別・国籍にかかわらず、誰もが暮らしやすい魅力的な地域づくりが欠かせません。

これを達成するには、インフラ・雇用・教育・医療・福祉の充実などとともに、行政も含めた地域住民が変化を柔軟に受け入れるオープンなマインドを持つことが大切です。また、場当たり的な施策では一時的に人を呼び込めたとしても定着が難しいため、長期的なビジョンを持つことも必要です。
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いま地方活性化が求められている背景

上記のように、地方・地域には現在さまざまな課題があり、デジタル田園都市国家構想ではこれらを集約して「不便・不安・不利」から成る「3つの不」と表現しています。

人口減少や地域経済の衰退は、その地域のコミュニティやインフラの維持を困難にし、最終的には自治体の消滅へとつながる恐れがあります。これに対して、都市部、特に東京への一極集中は自然な現象であり、地方の衰退は仕方ないとする意見もあるかもしれません。

しかし、東京への一極集中は地方だけでなく、東京ひいては日本全体の問題にもなりえます。たとえば、東京への一極集中が続けば、都内はますます人口過密状態になり、不動産価格の上昇、企業間競争の激化などに伴い、健全な市民生活や企業活動が困難になりかねません。さらに、東京へリソースが極度に集中した状態は、大地震をはじめとする災害へのリスクマネジメントとしても問題があります。

そのため、「3つの不」を解消させる糸口として注目されているのが「デジタル技術」です。問題・課題ごとに合ったデジタル技術を活用することは、当の地方問題が解決できるだけでなく、日本の景気底上げも期待できるため、政府も地域活性化を重要視しています。

関連記事:デジタル田園都市国家構想とは? わかりやすく基本方針を解説

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【分野別】デジタル化で解決できる地域課題

では、地方の「3つの不」の解消に対して、デジタル技術はどのように貢献できるのでしょうか。以下では、分野別に地方の課題におけるデジタル技術の活用法を紹介します。

医療・介護

都市部と地方の間ではさまざまな地域格差が問題視されていますが、それは医療・介護の分野でも同様です。過疎化が進む地方では、必要な医療・介護サービスへのアクセスが難しく、子育て世帯や高齢者を中心に大きな不便と不安を強いられています。

デジタル技術を用いることで、これらの医療・介護サービスの負担軽減ができます。たとえば、母子健康相談をオンラインで行えるようにすれば、通院の負担が減ります。また、自治体が配布する母子手帳をデジタル化した「母子手帳アプリ」を活用すれば、予防接種などの必要な情報をユーザーに配信し、母子の健康のサポートが可能です。

さらに、アプリやIoT技術などを活用して、高齢者の安否確認ができるようになれば、独居老人などの見守りケアもしやすくなります。ほかにも社会教育施設をオンライン講座の拠点として活用する施策なども、地域コミュニティ機能の維持や補完のために有用です。

関連記事:日本の医療における課題とは? 解決に役立つDXと取り組み事例  

連記事:介護DXとは? メリットと課題・対策、導入事例を紹介

教育・子育て

都市部との教育格差の是正は、子育て世帯を地域に呼び込むための重要な施策になります。その点において、文部科学省を中心に推進されている教育DXやGIGAスクール構想などは、地方活性化にも資する取り組みです。たとえば、オンラインによる遠隔教育を整備することで、地域にかかわらず学びやすい環境を整備できます。

また、テレワークの推進などを通して、仕事と子育てが両立できる環境を整備することも効果的です。テレワークという働き方は、企業のサテライトオフィスなどを地方に招致するための一助にもなります。さらに、教育・子育て支援との延長線上で重要になるのが、地方の高校や大学の振興です。これらを実現することで、教育・学習機会の不足を理由に、進学などを契機に都心部へ人口が流出するリスクを減らせます。

関連記事:教育の課題やその背景とは? 解決に向けたデジタル活用の事例も紹介

交通・物流・インフラ

市民生活を成立させるには、交通・物流・インフラの整備も必要です。地方では人手不足によってこれらのインフラの維持が困難になってきていますが、デジタル技術はそうした状況を打破する力を持っています。

たとえば、自動運転技術を活用すれば、バスの自動運行などを通して人手を要さずに地域の交通インフラを維持できます。また、ドローンは山間部の物流インフラを改善する手段として、昨今注目を集めています。
さらに、テレワークやサテライトオフィスの整備は、そもそも交通機関を使う必要をなくすという意味で有効です。

関連記事:物流業界の現状と課題とは?

農林水産

デジタル化は、農林作業を中心とした地域固有の産業を守るとともに、生産性や効率性を向上させることにも役立ちます。たとえば、ロボット技術やICTなどを活用すれば、農作業の一部を自動化し、農作業の労力を大きく減らすことが可能です。実際、農林水産省は「スマート農業」の支援事業を推進しており、データ活用などの農業DXを進める事業者も着実に増えつつあります。

ただし、人手不足に悩まされがちな地方のニーズとしては、現状の人員でいかに労力を削減できるかという効率化が特に重視されているのが現状です。行政のできる取り組みとしては、スタートアップへの投資の拡充・強化、産学連携の推進、中小/中堅企業のDX支援などが挙げられます。また、地方大学を中心としたイノベーション創出や女性起業支援などの取り組みも重要です。

参照元:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」

関連記事:農業DX構想とは? 目的や課題、取り組み事例や補助金を解説

観光・文化・娯楽

人を引きつける魅力ある地域づくりには、観光・文化・娯楽の整備も重要です。デジタル化によって地域の持つ魅力や文化を発信すれば、観光拠点としての魅力を高められます。これにより観光客を増やし、地域振興を推進させることが可能です。

実現させる具体的な施策としては、観光アプリの開発やデジタルマーケティングの支援をはじめ、スタートアップへの投資の拡充・強化や産学連携の推進などがあります。先述の交通インフラの整備なども、地域を観光地として機能させるために必要な取り組みです。

関連記事:観光dxとは?国内外の取り組み事例から見える観光業界の問題点

防災・減災・防犯

デジタル化は防災・減災・防犯分野でも有効です。たとえば、各地域の災害情報をシステム上でリアルタイムに収集・一元管理できれば、災害発生時の迅速な対応が可能になります。センサーやカメラで河川の増水状況の把握に努めるなども、現場の危険を抑えつつ洪水対策をするために効果的です。

また、過去の犯罪データや人口密度などを基にデータ分析を行い、犯罪が発生しやすい地域を特定できれば、パトロールの強化などによって防犯効果が高まります。もちろん、防犯カメラなどの活用も役に立ちます。このように、デジタルを防災・減災・防犯分野に役立てることで、安心して暮らしやすい地域づくりを促進できます。

関連記事:防災DXとは? 求められる理由や課題、取り組み事例を紹介

【事例】デジタル化を導入した地域と効果

上記のように、デジタル化は地方のさまざまな課題解決のために役立ちます。以下では、実際に自治体がどのようにデジタル技術を活用しているか具体的な事例を解説します。

自動運転バスの導入:茨城県境町

茨城県境町には、鉄道駅がないことから高齢者などの交通弱者にとって自動車やバス、タクシーは移動手段として欠かせませんでした。しかし、住民の高齢化に伴う免許返納者の増加、地元交通事業者の事業継続が厳しいという状況から、持続可能な公共交通網の整備が急務になっていました。

そこで同町では自動運転バスを導入し、運行ルートを設定する際には人流データを解析して、自動運転バスを地域の生活の中に定着させることに成功しました。

また、地域の中はもちろんのこと、高速バスの乗り場や観光施設にも簡単にアクセスができるため、観光客の呼び込みにも貢献しています。

参照元:デジタル田園都市国家構想

自動運転車両:愛知県春日井市

自動運転車両を使った取り組みは、愛知県春日井市でも進んでいます。路線バスの運行本数が減っている中、同市は高齢者の外出支援を目的に、名古屋大学と合同で、最寄りのスーパーマーケットやバス停といった近距離までの移動を支援する自動運転カートの実証実験を始めました。

また、タクシーの利便性はそのままに通常より安く利用できるオンデマンド乗合サービス(乗合タクシー)の実証実験や、市内のタクシー事業者5社が参画して共通の予約・配車システムを開発するなど、高齢化社会を支える新たな移動手段・インフラの整備を積極的に進めています。これにより高齢者などの交通弱者でも外出しやすい環境を実現しました。

参照元:デジタル田園都市国家構想

ドローン配送:山梨県小菅村

山梨県小菅村は、ドローンを地域の物流改善のために導入しています。山あいに位置する同村は過疎化や高齢化が非常に進行しており、村民は最寄りのスーパーマーケットまで行くのに車で片道40分も走らなければならない状況でした。

そこで同村は、住民からの注文に基づいて食料や日用品をドローンが配送してくれる仕組みを導入しました。ドローンは悪天候時の運行が難しいという弱点がありますが、そこは自動車による買い物代行サービスで補うという仕方で、村民の買い物支援をしています。

参照元:デジタル田園都市国家構想

関連記事:ドローン物流とは? 導入のメリットや事例、課題を解説

サテライトオフィス:徳島県神山町

徳島県神山町では、サテライトオフィスの導入により地域活性化を図っています。昨今ではテレワークにより、都市部だけでなく地方でも仕事をすることが可能です。こうした中、一部の企業の間で地方にサテライトオフィスを設置する動きが出ており、徳島県および神山町はそこにいち早く目をつけた形です。

オフィスの開設・運営費用などの支援体制を充実させることで、同町は東京や大阪など都市部のICTベンチャー企業のサテライトオフィス誘致に成功しました。徳島県が総務省からの支援を活用し、県全域へ高速ブロードバンド環境を前もって実現していたこともプラスに働いた要素です。これにより同町は、地域経済の活性化や雇用の創出、人口増加などにも成功しました。

参照元:地方創生 事例集  

クラウド活用:岡山県真庭市

岡山県真庭市では、森林資源の情報共有を効率化するために、近隣の複数の自治体が設立した一般社団法人と自治体、森林組合が連携してクラウドシステムを活用した取り組みを実施しました。具体的には、土地所有者情報や、ロボットセンサー(ラジコンヘリ)で確認した樹木の分布情報、生育情報を整理・共有できる仕組みを構築しました。

この情報は、空中から撮影した写真と照合してマップ上で可視化できるので、森林管理や林業に必要な情報を正確かつ迅速に確認できるようになり、大幅な業務効率化に成功しました。

参照元:地方創生 事例集  

デジタルを活用した地域活性化で注意すべきポイント

地域活性化にデジタル技術を取り入れる際に心掛けるべきなのは「誰一人取り残さない」ということです。以下では、この基本理念を達成するために必要な3つのポイントを解説します。

利用者視点でのサービスづくり

地域の人々が実際に利用するデジタルサービスは、その利用者の視点で設計すべきです。利用者目線を欠いてしまうと、市民のニーズとはズレた施策を講じてしまい、せっかく行政サービスをデジタル化したのに、誰にも使われないなどの失敗につながります。そういう点でも、地方活性化には官民の意思疎通や連携が欠かせません。

高齢者がデジタル機器・サービスを学べる体制づくり

地域の高齢者もデジタル技術を活用できるような環境を整備することが大切です。高齢者の中には、デジタルへのなじみが薄く、新しいサービスに適応できない人も少なくありません。そのため、デジタル化を導入する際には、デジタル機器やサービスを学ぶ機会や場所を提供し、それらの使い方や利便性などを丁寧に説明し、相談にのることが大切です。

経済的事情に配慮した施策づくり

デジタルサービスの導入に際しては、経済的な事情によるデジタルデバイド(情報格差)への対策も重要な課題です。経済的に困窮している人々はデジタル機器の購入やICT環境整備などが困難になりがちなので、自治体がデジタルで情報やサービスを提供してもそこにアクセスできない場合があります。したがって、デジタルを活用した施策づくりをする際にはそうした経済的事情にも配慮することが求められます。

まとめ

地方・地域の活性化は当の自治体だけでなく、日本社会全体の課題です。地方活性化にはデジタル技術がさまざまな面で大きな効果を発揮します。本記事で紹介した事例なども参考に、ぜひデジタル技術を活用した地域課題の解決に取り組んでみてください。

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