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自治体DXの現状とは? 推進のポイントや取り組み事例5選

現在、さまざまな業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められており、自治体にとっても喫緊の課題となっています。この記事では、「自治体DX」が重視されるようになった背景から、スムーズに実行できない理由、成功させるために重要な視点について解説します。加えて、自治体DXの取り組み事例も紹介しますので、今後推し進めたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

自治体DXの現状とは? 推進のポイントや取り組み事例5選

自治体のDXとは?

近年、あらゆるビジネスシーンで「DX」という言葉が使われるようになりました。DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語です。デジタル技術を導入し活用することで、既存の価値観や概念を超えた社会生活やビジネスの変革を指しています。

民間企業のみならず、多くの地方自治体にとってもDXへの取り組みは必要不可欠であり、注目度が高まっています。このDXを地方自治体に導入することを「自治体DX」と呼び、デジタル化によって、よりよい自治体にしようと目指す動きが活発化しつつあります。

自治体DXが目指すところは、単なる業務効率化ではありません。住民など利用者の視点に立ち、いかに利便性を高めるか、満足度を高められるかを重要視しているのが大きな特徴です。たとえば、さまざまな行政手続きは昨今システムが標準化されるようになっています。わざわざ開所時間内に窓口へ足を運ばずとも、オンライン手続きで完結できるように整備することもよくある取り組みです。

関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 意味や事例を紹介

自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画

総務省は、将来を見据えて自治体がDXをスムーズに推進できるように主導しています。そのひとつが「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」です。2023年11月には、最新の第2.1版が発行されました。同計画書では、自治体DXの「重点取組事項」がいくつか挙げられています。それぞれの項目は以下の通りです。

  • 自治体フロントヤード改革の推進
    日本は少子高齢化や人口減少が進んでおり、行政に割けるリソースが制約されつつあります。一方、住民の多様化するニーズに応えることも重要です。そこで、行政手続きのオンライン化のみならず、住民と自治体との接点(フロントヤード)を改革していくことが求められています。
  • 自治体の情報システムの標準化・共通化
    これまで自治体で用いる情報システムは、独自に開発を進めてきたケースが多く、ひとたびトラブルが起きると個別対応が必要となっていました。しかし、それでは住民の満足度は得られません。自治体DXでは標準化基準に合致した、基幹業務システムの導入やクラウド移行を進めることが大切です。これにより、住民サービス向上への最適な取り組みを、全国へ迅速に普及させられるようになります。
  • マイナンバーカードの普及促進・利用の推進
    マイナンバーカードは、対面・オンラインいずれのシーンでも確実かつ安全に本人確認や認証できるツールです。今後、デジタル社会の基盤になるといっても過言ではありません。マイナンバーの利活用が進むことは、各種窓口事務の効率化にも寄与します。
  • セキュリティ対策の徹底
    地方公共団体における業務システム標準化・共通化の取り組み、またサイバーセキュリティの高度化・巧妙化を踏まえ、情報セキュリティ対策の徹底に取り組み続けることが求められています。
  • 自治体の AI・RPA の利用推進
    自治体は業務にAIやRPAを積極的に導入・活用して効率化を図っていくことも重要です。同時に、都道府県においては、市区町村のデジタル技術のニーズを鑑みて共同利用するなど適切な支援を展開していく必要があります。
  • テレワークの推進
    働き方改革の一環として、ICTを活用しテレワークを認める動きが加速しています。テレワークには自宅で仕事をする「在宅勤務」のほか「サテライトオフィス勤務」や「モバイルワーク」といった種類も含まれています。この取り組みは業務効率化を図り、職員のライフワークバランスを実現できるだけではなく、パンデミックや大規模災害発生時など非常事態において、自治体機能を維持するための有効な方法とも考えられています。

参照元:総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.1版】」
参照元:総務省|地方行政のデジタル化

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自治体にDXが求められる背景

なぜ今、自治体DXを推進すべきだと考えられているのかについて、主な理由を四つ挙げて解説します。

1. 少子高齢化による人手不足への対応

先に述べたように、日本は少子高齢化に歯止めがかからない状態です。内閣府が公表した「令和5年版高齢社会白書」によると、1995年をピークに、15歳から64歳までの生産年齢人口が減少し続けています。

自治体も例にもれず、職員を確保しにくくなっているのが現状です。ヒューマンリソースを確保できなければ、これまでの業務体制を維持できなくなる可能性があります。ひいては行政サービスの低下も回避できません。

参照元:内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」p.3

2. 多様化する住民ニーズへの対応

近年は住民のニーズが多様化しています。しかし、現状のシステムや人材では、十分な対応力を満たせないおそれがあります。とくに新型コロナウイルスの感染拡大時期には、このような問題が浮き彫りになりました。

3.「2025年の崖」問題への対策

DXの重要性を象徴するものとして「2025年の崖」があります。既存システムがレガシーシステムとなって老朽化が進んだ結果、保守する技術を持った人材が減少したり、保守費が増大したりすることが考えられます。

保守が間に合わなければ、システムダウンやサイバー攻撃によるセキュリティ問題の発生が考えられ、ひいては企業の競争力低下や社会全体における甚大な経済的損失を招きかねません。

参照元:経済産業省|DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~

4. デジタル田園都市国家構想の推進

「デジタル田園都市国家構想」を国が推進していることも、背景のひとつです。近年、大都市圏へ人口が集中し、地域産業は空洞化していると指摘されています。そこでデジタルの力を使い、地域が抱える社会問題を解決し、活性化を図るプロジェクトが始動しました。この構想を成功させるためにも、自治体は土台となるDX推進を図ることが求められます。

参照元:内閣官房|デジタル田園都市国家
関連記事:デジタル田園都市国家構想とは? わかりやすく基本方針を解説

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自治体DXを妨げる現状の課題

自治体DXの重要性は認識されながらも、民間企業と比較してなかなかスムーズに実行できていないのが現状です。足枷となっている課題は以下の通りです。

デジタル人材の不足

DX推進のためには、これまでアナログで行ってきた作業をデジタル化するだけでは不十分です。今直面している課題を的確に洗い出し、デジタルを使ってどう解決できるのか対策を考え実行していける人材が求められています。しかし実際には、そうしたプロジェクトを推進できるような人材が不足しています。

経済産業省が2019年4月に公表した「IT人材需給に関する調査」では、IT人材の需要と供給には大きなギャップがあると指摘しており、2030年には45万人ものギャップが生じると予測しています。

参照元:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」p.2

アナログ文化

デジタル化が進みつつあるとはいえ、自治体業務の全体像を見てみると、まだ浸透しているとはいえないのが実状です。住民が行う申請や手続きなどでは紙ベースが主流であり、アナログ文化からの脱却は進んでいません。長年続けてきた方法から新しい方法へ変えることは、心理的にもハードルを感じやすく、かえって一時的に業務量が増えてしまうケースも散見されます。

システムが個別にカスタマイズされている

各自治体では共通したシステムを使っているのではなく、個別にシステムをカスタマイズしているため、問題が生じやすくなっています。たとえばシステム同士の連携が図れず、制度改正などのたびに個別改修の必要が生じてしまいます。現在、課題解決に向けて総務省が手順書を作成し、自治体システムの標準化・共通化を推し進めています。

DXの理解不足

アナログ文化から脱却できていないのは、自治体職員のデジタル化に対する意識の低さも背景にあります。たとえDXの重要性を十分に理解していても、既存業務への対応に追われてなかなか着手に結びつかない状況も考えられます。

財源不足

DX推進に必要なコストや時間を捻出できない場合もあります。プロジェクトを立ち上げたとしても、毎年使える予算は決められており、十分な予算が割り当てられず計画通りに進まないといったケースも存在します。

参照元:総務省| 公的分野におけるデジタル化の現状と課題 第3節

自治体DXを進めるための3つのポイント

では、自治体DXを成功させるにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは三つのポイントについて紹介します。

1. デジタル人材の確保

先述のように、DX推進にはまずもって人材を確保することが重要です。そのためには組織内でITリテラシー向上を図るとともに、デジタル化に明るい人材の採用や育成を行う必要があります。

しかし、自治体だけでこれらを行うのは簡単なことではありません。そこで、DX推進で成功をおさめている民間企業との連携を視野に入れて知識と人材を確保するといった手段も有効です。

2. 長期的な計画策定

DXは人材の育成・確保に時間がかかることはもちろんのこと、たとえば紙ベースの申請を電子申請に切り替えるなど、アナログだった組織文化の変容も必要となります。さらに、DX推進の効果は一朝一夕で現れるものではありません。長期的な視点や計画を持って、取り組んでいくことが成功の鍵となります。

3. 産学官金連携

地方創生などをふくめ、自治体DXを進めていくうえでは、大手企業が地方自治体や地方の地場産業へ支援することが重要です。さらに、大学などの教育機関や地元金融機関も支援の輪に加わり、一丸となって連携することで、成功しやすくなります。

経済産業省は地方DXを推進させるべく、「産学官金連携による中核拠点」を形成する地域の公募を開始しています。選定地域には認定マークの使用が認められ、各分野の専門家を派遣し、地域が抱える課題解決を支援する仕組みを確立しています。

【インタビュー】自治体DXの取り組み事例5選

実際に自治体DXに取り組んでいる事例を五つピックアップします。

香川県の事例

香川県は、人口減少に加えて県内総生産がコロナ禍で10年前水準に戻るなど、地域産業の衰退に頭を悩ませていました。

そこで、2021年12月に「かがわデジタル化推進戦略」を策定し、翌年4月には官民共創コミュニティ「かがわDX Lab」を立ち上げました。自治体・民間事業者・地域が一丸となって地域課題を明確化し、デジタルでの解決策を探し、実証実験を繰り返しています。

今後は、地域課題解決につながる革新的なサービスの創出につなげることを目標に、民間事業者が自走することで社会に変革が起き、より暮らしやすくなることを期待しています。

関連記事:香川県内を一つの生活圏として、官民共創による地域課題解決を通じたまちづくりに取り組み、「デジタル社会・かがわの形成」を目指す

新潟県の事例

新潟県は首都圏への人口流出が多く、人口減少や県内総生産の低さが課題です。また、全国的に見ても開業率が低く、起業しやすい土壌づくりが急務でした。

そこで「県内産業のDXやデジタル化の推進」と「起業・スタートアップ支援」の2本柱で取り組みを開始しました。県内産業を中心となって支えている製造業に対し、デジタルツールを用いて課題解決を図ってもらえるよう支援しています。加えて、成長が見込めるビジネスプランを持っている、あるいは地域の課題解決に新しい知見などを持っている人が起業しやすいよう、集中的な支援を展開しています。

関連記事:変革と挑戦、選ばれるために~新潟県の起業・スタートアップ支援、DX推進の取り組み~

浜松市の事例

静岡県浜松市は、市域面積の半分以上がみなし過疎地域となっています。人口減少や少子高齢化が重要課題で、持続可能な自治体運営が大きなテーマです。

徹底的なデジタル活用を進めるべく、2019年10月に「デジタルファースト宣言」を掲げました。2023年からは「DX推進計画」を推進しています。また、2020年に設立した「浜松市デジタル・スマートシティ官民連携プラットフォーム」も注目を集めました。浜松市にあるグローバル企業とスタートアップ企業が連携することも可能なため、拠点や支店を置く企業も増えています。

関連記事:浜松市のビジネスが世界につながっていく。豊かな生活との新しいベストミックスへ

横浜市の事例

神奈川県横浜市は2021年をピークに人口減少へ転じました。高齢化が進むと、今後財政状況が一層苦しくなることが危惧されています。

そこで2022年に「横浜DX戦略」を策定しました。本戦略は、「行政のDX」「地域のDX」「都市のDX」の3つの柱を総合的に推進しながら、「戦略推進のエンジン」や「創発・共創のスキーム」、「データ連携のインフラ」といったプラットフォームを整備し相互連携することを重視しています。さらにこれらの戦略を効果的なものとするため、職員が当事者意識を持てる雰囲気づくりにも力を入れているところです。

関連記事:横浜DX戦略を推進。デジタルを活用して市民を幸せにし、魅力あふれる都市を作る

神戸市の事例

兵庫県神戸市でも、人口減少が課題となっています。また、同市においては阪神淡路大震災による地盤沈下や経済的影響が長引いたこと、復興優先の財政改革を行ったことで新たな投資ができていませんでした。

そこで2022年3月、企業・行政・研究機関などの共創による推進体制を進める組織「KOBEスマートシティ推進コンソーシアム」を発足させました。行政だけでなく民間企業やアカデミア、市民も巻き込み、「行政DX」「防災安全」「医療健康分野」「地域団体、NPOが抱えている地域課題」「地域経済」「交通分野」「広報・PR」など、さまざまな分野でスマートシティ化に取り組んでいます。

関連記事:神戸市がデジタル分野の最先端となり、世界をリードする

まとめ

これまで長く続いてきたアナログ文化から脱却しきれない、デジタル人材のリソースが不足しているといった原因により、自治体DXをスムーズに進められていないケースは少なくありません。
ただ、自治体DXを進めることで、人手不足解消や多様化する住民ニーズへの対応、さらに「2025年の崖」の回避も期待できます。
自治体DXに成功している事例では、民間企業とのコラボレーションも多く見られます。参考にしながら、どのような取り組みができるのかを、ぜひ検討してみてください。

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