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農業DX構想とは? 目的や課題、取り組み事例や補助金を解説

農業分野におけるDX推進は、他の分野に比べ後れをとっています。政府が発表した農業DX構想では、DXの意義や目的に加え、農業DX推進に必要となるプロジェクトがまとめられており、推進にあたっての羅針盤として活用することが可能です。本記事では農業DX構想の概要や農業DXにおける目的・現状・課題を解説するとともに、農業DXへの取り組み事例や補助金を紹介しています。

農業DX構想とは? 目的や課題、取り組み事例や補助金を解説

農業DX構想とは

「農業DX構想」は、農業および食の関係者が農業DXを推進する際の指針とできるよう、農林水産省によって農業DXの意義や目的、基本方針、取り組むべきプロジェクトなどがまとめられたものです。

そもそも農業におけるDXとは、農業および食関連分野にAIやIoT、ロボットなどのデジタル技術を取り入れ、持続可能な食の供給や新たな価値の創造を実現することです。政府は2020年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」において、FaaS(Farming as a Service)の実現に必要な施策をまとめることを示し、有識者による検討会を経て農業DX構想がまとめられました。

関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは? 意味や事例を紹介

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農業DXの目的

農業DX構想の目的は、FaaSへの変革の実現です。FaaSとは、Farming as a Serviceの略語であり、サービスとしての農業を指します。具体的には、データ主導で消費者ニーズを的確に捉え、消費者が価値を実感できるような農作物・食品の提供を行うことです。

そもそも消費者ニーズとは、時代とともに変化するものだけでなく、緊急時でも手元に食糧が届くといったことも含まれます。一方で、日本の深刻な社会問題である少子高齢化により、農業分野でも就農者の高齢化および後継者不足が進んでいるのが現状です。この状況では、消費者ニーズに対応できず、緊急時の食糧供給にも不足が出る可能性があります。

こうした問題を解決するには、デジタル技術を駆使した省力化、および生産性の向上が求められます。少人数による大規模農場の運営、新規就農者の生産する作物の品質向上などもデジタル技術の導入で実現が期待されます。

このようにデジタルの力で農業分野における問題を解決し、消費者が求める価値を安定して提供することが農業DX の目的です。

農業DXの現状

ここでは、農業DXの現状を「生産現場」「農村地域」「流通・消費」の分野に分けて解説します。

生産現場

ドローンによるセンシングや自動走行トラクターの無人運転など、新技術の現場実装に向けた取り組みが進められています。しかし、まだ実証段階であるものも多く、実装の加速化が急務とされているのが現状です。また、水田作や施設園芸などではデジタル技術を駆使したサービスが広がりつつある一方、農業者はどのサービスが自分の農業に適しているかの見極めが困難であるという側面があります。

そのほか、センサーやスマート農機から収集されるデータを分析し、栽培・経営の支援ができるサービスの提供が始まっています。しかし、紙ベースでの処理が依然として多く、サービス内容の把握も困難な状況です。

農村地域

複数の集落が連携することで、高齢化による人材不足問題などの地域課題に取り組む事例が見られます。また、インターネットやSNSを活用した、都市と農村地域を繋ぐプラットフォームも生まれつつありますが、限定的なものにとどまっているのが現状です。

加えて、近年多発する自然災害により、農地および農業用設備の被害も拡大するなか、ドローンやスマホを利用した被害状況の把握や迅速な復旧のための技術研究が進められています。

流通・消費

近年拡大しているネット販売などにより、トラックドライバー不足が深刻化しており、その影響は農業分野の物流にまで及んでいます。こうした中、複数の農業者・事業者における共同輸送や拠点の共同利用といった物流の効率化が進んでいますが、まだまだひっ迫傾向にあるのが現状です。

一方で、パレット輸送および梱包資材の標準化に向けた検討が始まるなど、物流におけるデジタル技術を用いた効率化・自動化は今後さらなる進展が期待されています。

参照元: 農林水産省「農業DXをめぐる現状と課題」

農業DXの課題

農業分野は他業種と比べてデジタル技術の活用が遅れています。その要因として、DX人材が不足していることやDXの必要性を農業従事者が感じていないこと、さらには、デジタル技術の認知度が低いことが挙げられます。

DX人材の不足

農業は、基本的に個人事業主である農家が主体となっている産業であり、デジタル人材を各農家が個別に確保することは非現実的です。近年は企業が経営する大規模農業も増えていますが、個人事業主の農家がデジタル人材を確保するのは、費用対効果からみても難しいと言わざるを得ません。

DXの必要性を農業従事者が感じていない

農業従事者の多くは高齢者が占めており、これまでの自身の経験から、デジタル化の必要性をそもそも感じていないという人が多数存在します。従事者の高齢化によって、新たなことに挑戦してみる文化が生まれにくい環境であることも、農業DXの推進を阻む要因のひとつです。

デジタル技術への認知度が低い

農業分野で活用できるデジタル技術は、他業種と比べても専門性が高く、認知度が低いという特徴があります。
「どの作業にどのような技術が活用できるのかわからない」という農業従事者がほとんどであり、わからないから手が出せないといった状況です。

これらの課題を農業に関わる一人ひとりがしっかり考えることが重要です。

農業DXの目指すべき姿

農業DXが目指すべき姿とは、農業および食の関連産業に携わっている人々が、それぞれの立場から「消費者ニーズを起点に、デジタル技術でさまざまな矛盾や困難を克服し、価値を届けられる農業」を実現することです。ここでいうさまざまな矛盾や困難には、以下の例が挙げられます。

  • 少人数でも効率的な大規模生産を実現すること
  • 消費者ニーズの多様化に柔軟に対応した食料の生産・供給ができること
  • 高齢者や経験の浅い新規就農者でも、高品質な農作物の安定生産を実現すること
  • 条件が不利な土地でも適地適作を行い、高付加価値な農作物を生産・販売すること

これらは、自動走行トラクターの導入やAIを活用した収穫予測、購買データの分析による需要の把握、土壌の分析による適地適作、需要と供給のマッチング支援などにより実現が期待されます。AIやIoT、ロボットなどのデジタル技術を活用することで、従来のやり方では不可能と思われていたことも実現可能です。

参照元:「農業DX構想」の概要

農業DXの取り組み事例

AIを活用した養殖魚に対する給餌自動化技術の開発【三重県】

三重県南部の重要な産業である魚類養殖業において、AIを活用した給餌自動化技術の開発の事例です。

三重県の魚類養殖における生産量は、生産者の経験に大きく依存します。その一方、少子高齢化による後継者不足で、新規就業者の確保が急務である状況でした。経験の有無が大きなハードルとなることで新規就業者の確保が困難であったことが、自動給餌機開発のきっかけです。三重県は、約3年かけてAI技術を活用した自動給餌機を開発。飼育技術の一般化および効率化を図る「養殖業のスマート化」に取り組みました。

県内の専門学校および地域の製造メーカーと協力し、養殖魚の給餌・遊泳行動パターンを解析することで、AIが魚の状態に応じて給餌できるシステムの開発に着手。最初の2年は県の研究機関においてAI給餌機を用いた小規模飼育試験を行い、3年目には養殖業者の協力を仰いで、実際の生産現場で実証実験を行いました。この実証実験において、AI給餌機により餌の費用が10%削減し、なおかつ給餌業務における省力化が実現しています。今後はシステム改良を行い、さらなる普及を図ることが目標です。この取り組みにより、養殖業の効率化・生産性向上が期待されています。

参照元: 「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」

リモートセンシング技術等を活用した米の安定生産によるブランド化【青森県】

ブランド米の安定生産およびブランディングを図るため、リモートセンシング技術などを活用したシステム開発の事例です。

青森県では、米のブランド化推進において、「栽培管理の見極め」や「労働力不足」が課題となっていました。これらの課題を解決するための施策のひとつとして、衛星画像を活用した栽培支援システムの開発に着手。米の収穫量や玄米タンパク質含有量といったデータを集計して分析する技術に加え、衛星画像解析による収穫に適した時期のマッピングを行えるシステムが誕生しました。このシステムにより、生産者へのデータに基づいた指導や米の品質管理が実現し、安定生産およびブランディングにつながっています。さらに生産者がこのシステムを活用することで、自分の水田についてのデータを知ることが可能です。

システムが分析した情報を基に、生産者やその水田に合わせた丁寧な指導を行うことで、安定生産や収穫量の増加に加え、食味ランキングの特A評価を7年連続で獲得するなど、品質の向上も実現しています。青森県では、今後も米作りにおけるリモートセンシング技術を活用した支援をさらに広げていく方針です。

参照元: 「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」

ICT技術を活用した獣害対策を実施 【福島県大玉村】

福島県大玉村における、イノシシ対策にICT技術を活用した事例です。

大玉村では頻繁にイノシシ被害が発生しており、その対策は鳥獣被害対策隊による有害捕獲活動を主軸として行われています。しかし隊員の高齢化による人材不足が課題となっており、その一方で今後もイノシシ対策は継続していかなければならないという状況です。そのため、捕獲効率の向上や作業の省力化を目的とする、ICT技術の導入・実証を行うことになりました。

イノシシ被害を防ぐには、「捕獲」「生育環境管理」「被害防除」の対策が重要です。大玉村では、この中の被害防除にあたりセンサー付きの罠を導入しました。この罠は、4m四方の囲い罠にリアルタイムの映像が配信できる機器を組み合わせたものです。リアルタイムの映像が見られることで、タイミングを調整しながら1度に複数頭のイノシシを捕獲できます。ICT技術の導入により、見回り隊員の負担軽減に加え錯誤捕獲の回避にも役立っています。今後は、高齢の隊員のさらなる負担軽減のため、設置から移動、撤去までが簡単な罠にICTを活用することが目標です。

参照元: 「地域社会のデジタル化に係る参考事例集【第2.0版】」

ドローンを活用した作付け確認の取り組み【佐賀県白石町】

佐賀県白石町における、ドローンを用いた空撮による作付け確認の事例です。

これまで白石町では、麦の作付けに対して農家に交付金を支払う業務において、担当職員が現地に赴き、提出された申請書類と作付けが合っているかを確認していました。ところが、制度改正により交付金の対象が拡大したことから、確認作業に多くの時間を割いてしまうため、支給手続きの遅延が懸念されていました。

そこで、確認作業にドローンを用いることにより、現地に赴くことなくPC上で確認できるようになりました。ドローンが撮影した写真データと農地データを比較しながら作付け状況が確認できるため、これまで2、3人で行う現地確認とデータ整理で1か月以上要していた作業が、概ね1週間程度に短縮。省力化と効率化が実現し、交付金の早期支払いなどの効果を上げています。

参照元: 「デジタル田園都市構想メニューブック」 

関連記事:農業用ドローンとは? 主な活用例や導入メリット、補助金を解説

農業DX導入時に利用できる補助金

ここでは、農業DXの導入に利用できる3つの補助金について解説します。

補助金の申請期限や、新たな制度については情報が更新されている可能性があるため、公式サイトで確認することをおすすめします。なお、ここで解説する補助金は一例であることをご了承ください。

スマート農業の全国展開に向けた導入支援事業(農業支援サービス導入タイプ)

「スマート農業の全国展開に向けた導入支援事業」は、農業支援サービスの事業者が行う技術の導入や、農業従事者によるスマート機械の共同購入および共同利用、さらに機械のカスタマイズに対しての支援を目的としています。

補助の上限は1,500万円であり、補助率は1/2以内とされ、補助の対象となる機械は、農業支援サービスの提供に必要なスマート機械です。また、複数の都道府県でサービスの提供を行っている場合や、重要施策を推進するための機械を導入する場合などには加算されることもあります。

公募が終了している場合もありますが、同じ要件で次の公募が始まることもあるので、次回の公募時期などを管轄の自治体に確認することがおすすめです。

強い農業づくり総合支援交付金

「強い農業づくり総合支援交付金」は、強い農業づくりに必要となる産地基幹施設および卸売市場施設の整備等についての支援が目的の交付金です。
「産地基幹施設等支援タイプ」や「卸売市場等支援タイプ」、「農業支援サービス事業支援タイプ」などがあります。産地基幹施設等支援タイプの対象となるのは、都道府県や市町村、農業協同組合および農事組合法人などの農業者が組織する団体です。

設備の整備等を支援する産地基幹施設等支援タイプの交付金の上限額は20億円とされており、補助率は1/2以内です。また、農業支援サービス事業支援タイプでは、助成の対象が農業用機械の導入とされており、上限額は1,500万円、補助率は1/2以内となっています。

こちらの補助金も公募が終了している可能性もあり、申請が可能かどうかを直接問い合わせることがおすすめです。

ものづくり補助金

「ものづくり補助金」は、中小企業を主体とした補助金であり、働き方改革および被保険者保険の適用拡大などへの対応を支援することが目的の補助金です。農業の分野でも活用事例があり、ドローンなどの設備投資や生産管理の一元化システム導入にかかる補助が受けられます。

対象となる農家は、資本金3億円以下であり、常勤従業員数300人以下の法人もしくは個人事業主に限られます。補助金の種類は7種類あり、事業規模などによって上限額や補助率が異なります。公募はこまめに行われているため、公式サイトで確認できる採択結果の事例を参考にしながら検討することがおすすめです。

まとめ

農林水産省によって発表された農業DX構想には、農業DXの意義や目的、基本方針、取り組むべきプロジェクトなどがまとめられています。農業DXは、多様化する消費者ニーズをデータ主導で捉え、消費者が価値を実感できる農作物の提供を目指すことが目的です。一方で、農業分野ではデジタル技術の活用が他業種に比べて遅れており、高齢化などの地域課題解決のためにも、DX推進を加速させることが求められています。あらゆる地域の取り組み事例を参考にし、補助金を活用しながら農業DXを進めましょう。
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