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校務支援システムとは? 導入の現状やクラウド化に向けた課題、国の方針を解説

近年、教育現場における校務支援システムの導入が加速化しています。システムを導入すれば、教員側だけでなく生徒も恩恵を受けられ、教育DXの推進にもつながる見通しです。この記事では、校務支援システムの概要や利用できる機能、求められる背景、クラウド化に向けた課題などについて解説します。

校務支援システムとは? 導入の現状やクラウド化に向けた課題、国の方針を解説

校務支援システムとは

校務支援システムとは、教育機関で扱うデータを電子化して集約するツールです。教員が担うあらゆる業務を効率化し、負担を軽減することに寄与します。また、生徒個々の学習状況や理解度などを可視化したり、アンケート機能によって授業改善につなげたりといった教育支援にも活用できます。

校務支援システムはICTシステムの一種であり、生徒の基本情報や出欠情報、成績、年間指導計画など、教育現場で扱うさまざまなデータの管理が可能です。中でも、ひとつのシステムであらゆる情報の一元管理を行える「統合型校務支援システム」を導入する教育現場が増えています。

校務支援システムと統合型校務支援システムの違い

従来型の校務支援システムは、管理するデータごとに異なるシステムを用いる必要がありました。例としては、テストの点数や評価などの成績管理、健康診断結果の記録や分析に用いる保健管理などのシステムが挙げられます。従来は、個々のシステムにそれぞれの情報を入力しなくてはならず、教員の業務負担増加につながる問題がありました。

そこで、近年注目を集めているのが統合型の校務支援システムです。生徒の成績や出欠、健康診断結果、指導記録などあらゆる情報を一元管理できるシステムであり、政府もシステムの導入を後押ししています。

文部科学省が策定する「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」が2021年5月に改訂されました。そこでは、クラウド活用を第一候補とする基本方針(クラウド・バイ・デフォルト)に基づき、クラウド化を前提とした統合型校務支援システム導入の推進が掲げられています。

参照元:文部科学省|教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和4年3月)

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校務支援システムの導入が求められている背景

統合型校務支援システムの導入が進められている背景として、文部科学省が2019年に打ち出した「GIGAスクール構想」が挙げられます。

デジタル社会「Society5.0」への移行に伴い、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化していくと考えられています。AIを始めとするテクノロジーの発達により、今ある仕事が将来なくなる可能性もあるため、子どもたちには教育段階で先端技術に触れる機会が必要です。子どもたちを誰一人として取り残さず、個々に最適化した教育を実現しようとする取り組みがGIGAスクール構想です。

また、文部科学省はデジタル技術の活用による教育プロセスや組織の刷新を目指す「教育DX」の普及にも力を入れています。教育DXは単なる教育現場のデジタル化にとどまらず、新たな教育の姿への変革を目指す取り組みであり、GIGAスクール構想の次の一手として推進されています。

GIGAスクール構想や教育DXは、決して子どもたちのみが恩恵を受ける取り組みではありません。教育に携わる教員や関係者にとっても、業務効率化や長時間勤務の軽減といったメリットが期待できます。

関連記事:Society5.0 (ソサエティ5.0) とは? 技術や取り組みをわかりやすく解説
関連記事:教育DXとは? 推進が求められる理由やメリット・課題・事例を紹介
参照元:文部科学省|統合型校務支援システムの共同調達・共同利用ガイドブック(P.9)

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校務支援システムの主な機能

統合型校務支援システムには、学校事務や教員事務、教育支援に関する機能が統合的に実装されています。以下にそれぞれの機能について詳しく解説します。

1. 学校事務に関する機能

学校に勤務する教員をはじめとした職員の事務作業を効率化する機能が実装されています。教員同士のコミュニケーションを円滑にし、迅速な情報共有を実現できる機能のほか、勤怠管理や給食管理などが可能です。代表的な機能は以下のとおりです。

  1. グループウェア
  2. 勤怠管理
  3. 学校徴収金管理
  4. 給食管理
  5. 入試管理

グループウェアは、スケジュールや掲示板などを利用でき、教員同士の迅速な情報共有や各種申請などをオンライン上で行えます。勤怠管理は教職員の勤怠情報を正確に記録する機能であり、長時間労働の是正にも役立ちます。

学校徴収金管理は、学校が徴収するお金を管理する機能です。入金の処理から請求、帳票の作成も行えます。給食管理機能では、給食の献立や栄養摂取量などを管理できます。入試管理機能は願書の受け付けや結果の通知などが可能です。

2. 教員事務・教育支援に関する機能

教員事務機能は、担任や強化担当教員の業務効率化や負担軽減に役立つ機能です。また、教育支援に関する機能は、生徒の学習状況や理解度などを可視化し、授業の改善や個々にパーソナライズした指導の提供につなげられます。

学籍系の機能

学籍系の機能は以下の3つが挙げられます。

  1. 学籍管理
  2. 年度処理
  3. 指導要録

学籍管理は、生徒の氏名・住所などの基本情報や、進級・進学といったステータスなどを管理する機能です。年度処理は、次年度を見据えた進級やクラス分けなどの処理を行う機能であり、年間学校行事の予定表も作成できます。指導要録は、生徒への指導に関する履歴や結果を記録する指導要録を電子化し、一元的に管理・作成できる機能です。

教務系の機能

教務系の機能として挙げられるのは以下の5つです。

  1. 成績管理
  2. 生徒カルテ
  3. 時間割管理
  4. 進路管理
  5. 出欠管理

成績管理は、生徒の成績処理に活用できる機能です。テスト結果を入力することで評価が自動的に算出され、成績表をはじめとした各種帳票の作成を簡素化できます。

生徒カルテは、教員から見た生徒の日常における学習記録や注意点などを管理・共有できる機能です。複数の視点から記録するため、生徒の異変などにも気づきやすく、個々に即した指導ができます。

時間割管理は授業の時間割を作成・管理できる機能です。進路管理機能では生徒個々の進路情報や進学結果などを記録・集計できます。出欠管理は生徒の出欠情報を管理する機能です。

保健系の機能

保健系の主な機能は以下の3つです。

  1. 保健管理
  2. 体力テスト
  3. インフルエンザなどの発生情報管理

保健管理は、生徒の健康診断結果や保健室への来室記録などを管理でき、健康維持に役立つ機能です。体力テストの機能では結果を管理し、分析した結果を基に報告資料を作成できます。インフルエンザなどの発生情報管理機能は、感染症の発生状況を管理し、適切な対策を行うために用います。

教育支援系の機能

教育支援系の機能は主に以下の3つです。

  1. 授業アンケート
  2. 小テスト
  3. ポートフォリオ

授業アンケートは、生徒に対して授業に関するアンケートを実施し、取得したデータ管理を行う機能です。アンケートの実施によって、生徒が授業をどの程度理解しているのか把握でき、授業の見直しにつなげられます。

小テストは、小テストの作成や実施をするための機能です。小テストの実施を通じて生徒の学力を把握でき、反復学習によって単元の理解度を高められます。

ポートフォリオは、生徒の学習傾向や勉学に対するモチベーションなどを図表で可視化できる機能です。

校務支援システム導入の現状

全国的に校務支援システムの導入が進んでいますが、多くはオンプレミス型です。その現状について詳しく解説します。

システムを導入している自治体は80%

文部科学省が2021年に公表した「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果」において、公立学校を設置する自治体等のうち80.4%が校務支援システムを導入していることが明らかになっています。そのうち、統合型校務支援システムを導入済みと答えた自治体等は68.9%にのぼりました。

参照元:文部科学省|GIGAスクール構想に関する各種調査の結果(p.23)

クラウド型の導入は4%

上記のとおり、校務支援システム全体の導入は順調に増加しています。ただし、これはオンプレミス型が中心であり、クラウド型普及はほとんど進んでいません。

クラウド型の導入が遅れている理由として、従来型の校務支援システムに搭載されている機能をクラウド型で提供しているソフトウェアメーカーが少ないことが挙げられます。校務支援システムに求められる機能がSaaSとして包括的に提供されていないため、クラウドへの移行が現実的に進んでいない状況です。

また、SaaSへアクセスするための教員用端末を準備する場合、ある程度のコストが発生する点も要因として挙げられます。プライベート端末ではセキュリティ上のリスクが発生するため、学校側は教員用端末を準備する必要があります。しかし、多くの自治体等ではその予算を確保できないケースが少なくありません。このような状況からクラウドへの移行が進まず、教員は職員室の専用端末で校務に従事しなくてはならない状況が続いています。

参照元:文部科学省|校務の情報化に関する調査結果(令和4年9月時点)

校務支援システムのクラウド化に向けた課題

校務支援システムをクラウド化するにあたって、いくつかの課題がみられます。

関連記事:教育の課題やその背景とは? 解決に向けたデジタル活用の事例も紹介

校務のデジタル化が進んでいない

教育現場では、いまだに紙の書類を業務に用いているシーンが多々あります。テスト用紙や会議での資料などではいまだに紙が根強く使われており、ペーパーレス化が進んでいません。このような状況では、校務支援システムをクラウド化しても、結局は実務を紙ベースで進めることになり、根本的な業務効率化や負担軽減は見込めません。

また、学習系と校務系データの連携が困難であることも、クラウド化が進まない理由のひとつとして挙げられます。それぞれのネットワークが独立していたり、一方のシステムがオンプレミス環境だったりすると連携は困難になり、データを生かした教育を阻害する要因になってしまいます。

帳票類の標準化が必要

全国地域情報化推進協会の取り組みによって、健康診断票や指導要録といった一部のデータは標準化が進み、システムを横断した連携が可能となりました。そのため、たとえば生徒が転校した場合でも、元の学校のデータを転校先のシステムへと引き継ぐことが可能です。

一方で、通知表や出席簿などの帳票に関しては、いまだに標準化が進んでいません。そのため、データの互換性がなく別のシステムで使用できない問題が発生します。

帳票の標準化が進められている一方で、現場での帳票の取り扱いによってデータの引き継ぎが難しくなるケースも発生しています。たとえば、学校や教育委員会などが帳票を独自にカスタマイズしてしまうケースです。これもデータの互換性を失う行為であり、スムーズな引き継ぎを阻害してしまいます。

校務処理が職員室に限定されている

現状、校務支援システムを導入している自治体の多くがオンプレミス環境で利用しています。教員は職員室の専用端末から校務に携わっており、働く場所が職員室に限定されている状況です。

校務を行うには校内に留まる必要があるため、教職員は常に場所の制約を受けます。柔軟に校務へ取り組めず、教職員の業務効率を低下させる一因となっています。

現在、政府は働き方改革を推進し、個々の労働者が柔軟に働ける社会を構築するべく取り組みを進めているものの、教育現場ではむしろ逆行している状況です。

参照元:文部科学省|GIGAスクール構想の下での校務DXについて ~教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して~

教育情報セキュリティポリシーの改訂で変化する、校務支援システムをめぐる動向

前述の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」は2022年3月にも一部改訂されています。主な改訂箇所は以下のとおりです。

  1. 「1.4.4. 教職員等の利用する端末や電磁的記録媒体等の管理」に振る舞い検知等の記述を追加
  2. 「1.5.1. 教職員等の遵守事項」に校務端末の持ち出しに関する記述を適正化
  3. 「1.6.1. コンピュータ及びネットワークの管理」に校務端末の使い分けについて対策毎に記述を適正化

引用元:文部科学省|教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和4年3月)(p.3)

①は物理的セキュリティに言及した改訂です。マルウェア感染の脅威への対策として、従来のセキュリティソフト等による対策に加え、異常または不審な挙動を検知する「振る舞い検知」の活用が加えられました。②には、端末等の持ち出し・持ち込みについて、アクセス制御によって対策を講じているシステム構成の場合は運用実態や教職員の負担を考慮することが盛り込まれています。③には、アクセス制御によって対策を講じられたシステム構成において、各システムのアクセス権管理を徹底する旨が記載されています。

これまでと大きく異なる点は、アクセス制御での対策に関する内容が大幅に追記されたことです。従来のネットワーク分離による対策とは異なり、クラウド化を前提としたアクセス制御を推奨することで、クラウドへ移行しやすい地ならしをしていることが読み取れます。

現在、あらゆる業界においてサービスや業務のクラウド化が進んでいるように、今後校務支援システムのクラウド化も加速化すると考えられます。

参照元:文部科学省|教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和4年3月)

クラウドの統合型校務支援システムを導入した場合の効果

クラウド統合型校務支援システムの導入によって得られる効果について、統合型校務支援システム「BLEND」の導入事例を基に解説します。

BLENDは、二段階認証やIPアドレス制限などの堅牢なセキュリティ機能を有しているほか、多様な端末での操作を可能としたクラウドシステムです。デスクワークに追われる教員の負担を軽減するために開発され、導入した教育現場ではこれまで出席簿登録に要していた時間を80.7%削減することに成功しました。年間で86.5時間かかっていた業務が、システム導入によって16.7時間まで大幅に短縮しています。

また、システム経費の削減にも大きな効果が得られています。7年間の初期導入費と年間保守費、カスタマイズ費、入試費用の合計システム費用を83%削減し、年あたり350万円のコストダウンを実現しました。

参照元:AWS|フルクラウド統合型校務支援システム BLEND

まとめ

校務支援システムは教育機関にまつわる業務を効率化するツールであり、すでに多くの教育現場で採用されています。しかし、クラウド型の統合型校務支援システムの導入は現状では進んでいません。今後、導入が進むことで教育DXがさらに加速化することが期待されています。政府も積極的にクラウド化を後押しする体制を整えており、校務支援システムのクラウド化はさらに加速すると予想されます。

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