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スマートビルディングとは? 必要な技術や導入事例、課題を紹介

近年、スマートビルディングが注目されるようになっています。この記事では、スマートビルディングが求められる背景や、スマートビルディングの構造と仕組みについて解説します。
スマートビルディングの実現を支える技術や導入事例、導入における課題を押さえ、今後自社での活用を検討してみてはいかがでしょうか。

スマートビルディングとは

明確な定義はありませんが、日本におけるスマートビルディングは、一般にIoTやAIを活用して効率化を図った建物を指します。さまざまな技術やサービスによってシステムを一元管理することで、省エネや利便性、快適性の向上が可能です。例えば、利用状況に応じて空調や照明を調節して省エネを実現したり、建物の利用者のデータを分析して利便性を改善したりできます。
スマートビルディングは、AIなどによる効率化を目指すスマートオフィスを建物全体に拡大したものであり、スマートシティ(デジタル技術を駆使してインフラなどを効率化し、利便性や満足度向上を目指す都市)を構成する要素のひとつです。民間企業をはじめ、政府や自治体もスマートビルディングに注目して日々研究しています。

スマートビルディングの市場規模

株式会社グローバルインフォメーションが2022年に発表したレポート「スマートビルディングの世界市場」によると、スマートビルディングの市場規模は2021年で726億米ドルでした。2026年までに1,216億米ドルに到達すると予測されています。効率的なシステムへのニーズの高まりなど多くの要因により、スマートビルディングの導入が進んでいくと考えられています。

参照元:スマートビルディングの世界市場:コンポーネント(ソリューション(安全・セキュリティ管理、ビルインフラ管理、ネットワーク管理、IWMS)、サービス)、ビルタイプ(住宅、商業、産業)、地域別 - 2026年までの予測

スマートビルディングが求められる背景

スマートビルディングが求められる理由として、以下の背景が挙げられます。

  • 高度な省エネの推進
  • 新型コロナウイルス感染症対策
  • IoT、AIなどの発展
  • 快適性や利便性向上

東日本大震災や気候変動の影響を受け、環境に優しく災害などの影響を受けにくい建物のニーズが高まりました。最近では新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、働き方の変化やDX化、IoTなどの導入が加速しました。
IoTやAIなどの技術も近年大きく発展しました。それらの技術を駆使して、省エネや脱炭素化など環境への取り組みが進んでいます。また、あらゆるデバイスから情報やデータを収集することで、コストカットやセキュリティ強化も可能です。
スマートビルディングの普及によりスマートシティも推進され、利用する人々の意識改革や利便性、満足度の大幅な向上が見込めます。

スマートビルディングの構造と仕組み

スマートビルディング_スマートビルディングの構造と仕組み

参照元:スマートビル 総合ガイドライン

スマートビルディングの構造は、以下の3層です。

  • フィールド層(データを収集するビルの躯体や設備)
  • データ連携層(フィールド層からのデータを管理・保存を行う)
  • アプリケーション層(データを利用してサービスを提供する)

あらゆるデバイスから収集したデータの共有・連携や制御を行い、データを探索して利活用できる基盤を整える必要があります。

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スマートビルディングを実現する技術

IoT

IoT(Internet of Things)は、日本語では「モノのインターネット」という意味であり、建物や家電などをインターネットとつなげて活用する技術です。IoTにより遠隔操作や監視、デバイス間の連携が可能になります。
IoTはスマートビルディングにおいて不可欠な技術であり、IoTセンサーはビルの防犯カメラや各種デバイス、壁や扉などあらゆるモノや場所に取り付けられます。デバイスの状態や利用環境、利用者のさまざまなデータがリアルタイムで管理者に届くため、建物を効率的に一元管理できます。

関連記事:IoTでできることを身近な例と共に解説! 社会課題の解決事例からAI連携まで

AI

AI(人工知能)は、学習や問題解決などの人間の知覚や能力の一部を人工的に再現する技術です。IoTデバイスから収集された膨大なデータの分析は人の手には負えないため、AIの活用が欠かせません。

スマートビルディングにおけるAIの利用例として、設備や空調の制御が挙げられます。IoTデバイスで収集したデータをAIが分析し、通常使用のパターンを把握しておくことで、異常を検知した際即座に管理者へ通知することが可能になります。このようにして、人による点検や見回りなどの手間を抑えつつ、トラブルを早期解決して被害の低減を図れます。

5G

5G(5th Generation)は、第5世代目の移動通信システムです。従来の4Gに比べて5Gは超高速かつ低遅延であり、多数同時接続や大容量の通信ができるという特徴があります。
スマートビルディングではさまざまなIoTデバイスを設置するため、通信環境を整備しなければなりません。大量の情報を超高速で伝達できる5Gは、高水準の利便性や快適性を保つために不可欠です。

5Gの対応がまだ十分進んでいない地域でも、個別の施設や敷地内で利用できるローカル5Gシステムの導入を検討できます。総務省が推進していて、すでに免許を取得している企業や自治体も多数あります。ローカル5Gは個別最適化したネットワークを構築でき、他地域で起きた通信障害などの影響も被りにくいのがメリットです。

参照元:ローカル5Gの普及展開に向けて

デジタルツイン

デジタルツイン(Digital Twin)とは、現実空間から得たデータをコンピュータ上の仮想空間で双子のように再現する技術です。スマートビルディングのデータ連携基盤(ビルOS)には、建物内の電子的資産などを抽象化したデジタルツインが構成されています。IoTなどを通して建物や空間、利用者などから収集したデータのシミュレーションや、設備制御が可能です。

具体的には、災害のシミュレーションをしたり、故障などの問題を予測したり、室温や照明の設定を最適化したりして、ビルの利便性や快適性の向上を図れます。

BIM

BIM(Building Information Modeling)は、コンピュータ上に建物の立体モデルを作成する技術であり、建築業界におけるデジタルツインです。

BIMには、3次元の形状情報に加えて空間の名称や面積、空間内のセンサー数や制御方法、部材の仕様や性能などさまざまな情報が内蔵されています。BIMによって現実空間と仮想空間をつないで制御するシステムを構築でき、建物の設計・施工から管理までのすべてのプロセスでデータの利活用が可能になります。

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スマートビルディングの導入事例

東京ポートシティ竹芝

「東京ポートシティ竹芝」がある竹芝エリアは、スマートシティの国家戦略特区です。ソフトバンク株式会社と東急不動産株式会社が、スマートシティの先駆けともいえる最先端スマートビルの実現を目指しています。至る所にデバイスが設置されており、収集したデータを企業やテナントに向けてリアルタイムで提供可能です。

テナント、ワーカー、ビル管理者に向けて行われている取り組みは、以下の通りです。

・テナント向け:店舗ごとに来店者の属性分析レポート提供、クーポンの自動配信データを統計化することで、各店舗に施設利用者の人数や属性(年齢、性別など)を提供し、テナントは集客や在庫管理に役立てられます。建物内には店舗ごとの満席・空席状況がリアルタイム表示されており、空席状況などに応じてクーポンが配信されます。

・ワーカー向け:エレベーターホールや飲食店の混雑状況を配信、入館時の顔認証ゲート
店舗や共用エリアなどに設置されたセンサーやAIカメラによって状況がリアルタイム配信されるため、混雑回避が可能です。入館ゲートではAI顔認証により発熱疑いがある人のスクリーニングや、エレベーターと連携し目的の階への効率的な誘導ができます。

・ビル管理者向け: 防犯カメラの映像をAIがリアルタイムで解析し異常を通知、清掃の効率化など
防犯カメラ映像のAIリアルタイム解析によって禁止区域への侵入などを検知し、専用アプリと連動して警備スタッフに通知します。さらに、ゴミ箱に搭載された超音波センサーが容量を検知してゴミ回収を効率化し、自走ロボットによる床清掃も行うなど清掃にかかる人的コストも削減できます。

オランダ: The Edge

オランダのアムステルダムにあるThe Edgeは、ソーラーパネルや雨水の活用によりサステナビリティに優れていると世界的に評価されているスマートビルディングです。

スマートフォンアプリによるスケジュール管理が行われている点が特徴です。出勤時、従業員が建物に近づくと車が検知され、駐車場の空きスペースまで誘導されます。
また、従業員に専用のデスクはありません。必要な時に応じて各従業員がデスクを選ぶことで、スペースの効率化が可能です。すべてのデスクにワイヤレス充電器が内蔵されているため、スマートフォンの充電がなくなることもありません。アプリには、各従業員の好みの照度や温度に合わせ室内の環境を微調整する機能も搭載されています。

スマートビルディング導入における課題

高額なコストがかかること

スマートビルディングの導入・構築には多額の初期費用が必要です。新築の場合だけでなく、既存のビルをスマートビルディングにする場合も同様です。

スマートビルディングの導入には、各種デバイスやセンサー、システムの購入やネットワークの構築が求められます。データの利活用のためのアプリやサービスも大抵は必要です。効率化や利便性を目指して高度なシステムやサービスを導入するほど、費用は高額になります。

スマートビルディング化によってビル管理が効率化し、省エネも実現できるため、運用コストは下がります。そのため長期的に見れば初期費用を回収することは可能ですが、確実ではありません。日々のメンテナンス費用や、導入したシステムに不具合や故障が生じた場合の費用も必要です。コスト回収できない可能性を考えて、高額な費用が必要なスマートビルディング化に踏み切るのは難しいと判断する企業もあるでしょう。

トラブル対策が不完全であること

スマートビルディングではさまざまな機器やシステムがインターネットに接続されており、管理の効率化を実現しています。しかし、オンラインであるがゆえにセキュリティリスクと切り離せません。サイバー攻撃や不正アクセスの攻撃を受ければ被害は建物全体に及ぶため、高度なセキュリティ対策が求められます。

電力によってコントロールされているため、停電時や災害時の対策や不具合発生時の対応も重要です。トラブル発生時にシステムが停止しても速やかに復旧できるような仕組みを構築し、セキュリティ対策やトラブル時の対応ができる従業員の教育を行う必要もあります。

まとめ

スマートビルディングはIoTやAI、デジタルツインなどの技術を利用した建物であり、効率的かつ満足度の高い利用が可能です。高度な省エネや感染症対策の推進を背景に現在導入が進んでいますが、初期費用が高いことや高度なトラブル対策が求められることが課題となっています。

導入事例も参考にしつつ自社での活用の是非を検討し、実際導入する際は課題を意識して計画を進めるようおすすめします。

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