近年、さまざまな分野で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現が喫緊の経営課題となっています。そこで本記事では、DXの概要や重要性について解説するとともに、具体的な導入ステップをご紹介します。併せてDX推進に役立つソリューションについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
DXに取り組む重要性
DXとは「Digital Transformation」の略称であり、「デジタル技術の活用による変革」を意味する概念です。DXという概念が提唱されたのは2000年代の前半にまで遡りますが、国内で注目を集めるようになったのは、経済産業省が「DXレポート」を発表した2018年頃とされています。経済産業省は「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」のなかで、DXを以下のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
引用元:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(p.2)|経済産業省
経済産業省が発表したDXレポートでは、企業がレガシーシステムを抱え続けることで生じるリスクについて触れられており、老朽化・ブラックボックス化したシステムを運用し続けた場合、2025年以降に年間12兆円規模の経済的損失が発生する可能性があると予測されています。経済産業省はこれを「2025年の崖」として警鐘を鳴らしており、国内市場でDXという概念が大きな注目を集めるようになったのです。
また、DXの実現がさまざまな分野で重要課題となっている背景には、人口減少や高齢化率の進展といった社会問題が関連しています。現在、国内の人口は2008年をピークに下降し続けており、総人口に占める高齢者の割合も世界で最も高い水準となっています。このような社会的背景から多くの企業で人材不足が深刻化しており、より効率的な生産体制を構築するべく、デジタル技術の活用による経営改革、つまりDXの実現が喫緊の経営課題となっているのです。
DXを導入するにあたってのステップ
DXは、いわゆるデジタル技術の導入による「IT化」の領域に留まるのではなく、その一歩先にある組織体制そのものの変革が本質的な目的です。そのため、単にデジタルソリューションを導入するだけでなく、DXを実現するために必要なプロセスを段階的に踏破していく必要があります。もちろん、企業の組織体制や事業形態によって必要なプロセスは異なりますが、一般的には以下のようなステップに基づいてDXの実現を目指します。
- ビジョンの策定
- 社内の理解
- 体制の構築
- 現状の把握
- デジタル化の推進
- 評価の実施
ビジョンの策定
DXを推進する上で最も重要な課題といっても過言ではないのがビジョンの策定です。DXの本質的な目的は、デジタル技術の活用によって経営体制そのものに変革をもたらすことにあります。「何のためにDXを推進するのか」という経営ビジョンや企業理念を明確化しなくては、IT化やデジタル活用の領域を脱することはできません。経営層がDXの実現によって到達する明確なビジョンと理念を示し、組織全体で共有する必要があります。
社内の理解
DXは一人で実現し得るものではなく、組織全体が経営改革を推進していく結束力が必要です。しかし、人間は本能的に変化を拒む生き物であり、未知なるものを遠ざける現状維持バイアスという心理作用をもつため、経営層がビジョンを示してもすべての従業員が理解を示すとは限りません。反対に経営層が変革に伴うリスクを忌避してDXの推進を拒む可能性もあるでしょう。DXを実現するためには、経営層と従業員が同じ方向を目指して舵をとる必要があります。
体制の構築
DXの本質的な目的を実現するためには、優れたデジタルソリューションを導入するのはもちろん、その技術を最大限に活用して経営体制の変革を推進する人材が必要です。たとえば、最新のテクノロジーやデジタル技術に精通するだけではなく、マネジメントやマーケティングの領域に関して深い知見をもつ人材が求められるでしょう。そして、全社的な情報共有を実現する仕組みや、部門を横断した業務連携を可能にする体制を構築しなくてはなりません。
現状の把握
DX推進への準備が整ったなら、具体的な施策の立案と導入するソリューションの選定が必要です。この2つの要素を明確化するためには、まず自社の経営状況を俯瞰的に分析して現状を把握しなくてはなりません。経営状況を分析することで現状と理想のギャップを可視化できるため、ゴールに到達するために必要な施策やソリューションを把握できます。さらに重要度と緊急度のマトリクスを用いてスコープに優先順位を設定できれば、効率的にDXの推進に取り組めるでしょう。
デジタル化の推進
ここまでのステップを段階的に踏破したなら、DXの実現を支援するソリューションの導入に進みます。デジタル化は業務プロセスの効率化を目指す部分最適と、ビジネスモデルそのものの生産性向上を目的とする全体最適という2つの選択肢があります。全体最適を目指すデジタル化は相応のリスクを孕んでいるため、まずは業務プロセスの効率化を目的とし、スモールステップでソリューションの導入を推進するのが望ましいといえます。
評価の実施
DXとは、デジタル技術の活用によって経営体制そのものに変革をもたらし、市場における競争優位性の確立を目指す取り組みです。DXは一朝一夕で実現できるものではなく、「計画(Plan)」→「実行(Do)」→「評価(Check)」→「改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続ける継続的な改善が求められます。施策の実行によって得た知見を多角的に分析し、仮説と検証を繰り返すことで一歩ずつ確実に変革の実現へと近づいていくはずです。
DXの業務プロセス見直しに役立つツールの種類
ここからは、DXの実現に寄与するソリューションについてみていきましょう。業務プロセスの効率化を目指すソリューションとしておすすめしたいのが、以下の3つです。
BPM
BPMとは「Business Process Management」の略称で、業務プロセスの改善によって本来あるべき姿へと継続的に近づけていく業務管理手法です。この業務管理手法を支援するソリューションがBPMツールであり、モデリング機能やモニタリング機能によってDXの実現に寄与します。消費者ニーズの高度化と多様化に伴って業務プロセスの効率化が求められる現代市場において、非常に重要度の高いソリューションといえるでしょう。
RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の頭文字をとった略称で、ルーチンワークに分類されるPC業務を自動化するソリューションです。たとえば、請求書の作成や伝票の記帳、原材料の受注や発注の処理など、主にバックオフィスの領域における定型業務を設定されたルールに則って自動化します。RPAを活用することでノンコア業務の省人化に寄与し、業績向上に直結するコア業務に投入するリソースを拡大できます。
AI-OCR
AI-OCRとは、OCR技術とAI技術を組み合わせることで、文字認識を自動化するソリューションです。OCRは「Optical Character Reader」の略称で、紙文書をスキャナーで読み込むことでテキスト化する技術を指します。AI-OCRは機械学習やディープラーニングが文字の補正結果を学習することで、文字認識率を高められる点が大きな特徴です。組織のペーパーレス化に寄与し、古い経営体制からの脱却を支援するソリューションです。
まとめ
DXとは、デジタル技術の活用によって経営体制に変革をもたらし、市場における競争優位性の確立を目指す取り組みです。DXを実現するためには、優れたデジタルソリューションの活用が必須といえます。